第120話 山の館
<イレーネ目線>
「イレーネ、助けてお願い」
「……わかったわ。何とかする」
今日、王都の伯爵邸にいたら、旧友であるサレシャが突然訪ねてきた。エルフの里を出て以来だ。以前、ウラバダ王国にいた時に、亜人差別が酷く、国を追われ、数人の仲間と各地を転々としてたらしい。元々、エルフ色が強い仲間で人間の多い社会でうまく馴染めなかったのもあるようだ。亜人差別の少ないロナンダル王国の王都に到着したら、人づてに凄腕のエルフ女伯爵の存在を聞いて、もしやと思い、どうにかここまでたどり着けたとのこと。
今の自分の財力からすれば、彼らを養うのは簡単だ。しかし保護と同時に自立を促すことも手助けしたいと考える。
「いい方法はないかしら……そう言えば、大公様の山の館は、使ってなかったわね……」
エルフは元々、森の民だ。あそこなら人もいないし、自由に生活できるだろう。大公様に相談してみよう。
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大公城
「山の館をエルフの仲間に使わせたい?いいよ。あそこはまったく使わなくなったし、あの周辺の管理も君に一任するよ」
「大公様、ありがとうございます。仲間も喜びます!」
「ついでにあのあたりに魔物や狼が出たら、麓に行かないよう退治してほしい」
「わかりました」
大公様はあっさり、山の館の使用を認められた。本当にいい方だ。早速、サレシャと行こう。
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山の館
「サレシャ、ここが山の館よ」
「うわぁ、立派な建物だ。本当にここに住んでいいの?!」
「かまわないわ」
「あっ!あそこにユニコーンがいる!」
「あれは大公様が以前捕まえたユニコーンだけど、ここに住み着いているの。可愛がってあげてね」
「……実は、行き先に困っているエルフは私達だけじゃないの。もっと人数が増えるかもしれないけど、大丈夫?」
「かまわないわ。但し、人選はしっかりしてね。大公様は悪事をする人には厳しいから。それと、貴方がここの代表になって、定期的に報告だけは頂戴ね」
「うん、わかった。イレーネ、報告はどうしたら良い?」
「私が定期的に顔を出すわ」
しばらくエルフの仲間を援助していこう。
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<アレス目線>
先日、イレーネから、山の館をエルフの仲間に使わせたい旨の相談があったが、即答で承認した。あそこは現在、まったく使っておらず、むしろ渡りに船だ。森の麓に人、森の奥にエルフというのもいい組み合わせだと思う。もっと奥にいくとゴブリン、オーク等の発生エリアになるけど、この前、全滅させたし、しばらく大丈夫だろう。もし魔物が発生したら、僕ら三人が討伐に行けば済む話だし。
そう言えば、山の麓の人口が五百人を超えた。先に居住した人の評判が広がったようだね。ここの開発で、全領地の失業者対策、長期療養者への救済にもつながった。療養所と言っても新鮮な森の空気を吸って、山の幸を食べて静養するだけなんだけど、街中より回復が早いようだ。僕も定期的に療養所を回ってるけど、状況が悪い人には【ヒール】をかけてあげる。体調が回復したら、そのまま、ヨウス領を気に入って住む人も多いんだよ。
もともとこの地区は「ヨウス森林地区」と呼ばれていたんだけど、今は「ヨウス領」と呼ぶことにしてる。その「ヨウス領」のうち、人間の居住地区は森の麓が大部分だ。現時点で無理に奥は開発しない方針とした。なるべく自然環境は維持したいからね。昔、無人島に到着した時は、ここなら何でもできるという変なテンションで、生産系スキル全開で開発しまくったけど、後から考えたら、あれは本当に思い付きだったし、反省すべき点もあったように思う。領地運営や商会経営を通じて、僕もだいぶ成長したのかもね。そう言えば、この僕がそのうち父親になるんだもんな。嘘みたいだよ、まったく。
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