第109話 チルザーレ王国救助 ※各国位置概略付き
「最近、大型魔法をつかってないな……どこか撃てる場所はないかな」
「そう言えば、そうですね。たまには大きな魔法を使いたいですね」
大公城の執務室にいたら、横のソファに座っていたテネシアとイレーネがぼやいた。二人とも伯爵になったが、最近はお城での生活、親衛隊との訓練、ギースの巡回、夜の勉強会がメインで魔法を使う機会が減っていた。夜のメリッサとの勉強会は意欲的に取り組んでいたし、この規則正しい生活におおむね満足していたと思っていたが、たまにはどこかで発散させたいのだろう。
二人が攻撃魔法を使わないということは、領地運営が安定し、平和で過ごせてる証拠でもあるんだけど、元々、大型魔法を得意とし、かつ『魔力を増大させる水晶玉』も獲得したので、大きな魔法を使う機会が欲しくてウズウズしてるようだ。
二人との付き合いは長いから、そのあたりも薄々分かっていたんだけど、少し前に王国全土に結界を張って、呪いとレイス(死霊)から、多くの領主を救ったため、貴族達のお礼の謁見が続いてしまった。「救国の英雄」「さすが元帥様」「領民が助かりました」と称賛されるのは気分も悪くなかったが、そろそろ二人のフォローをしないといけないな……
そんな時、大公城にギースの冒険者ギルド長が来訪してきた。顔見知りなので、謁見せず、すぐ応接に通す。
「実はチルザーレ王国で大規模な魔物による被害が発生しており、救援要請が出ております。場所はウラバダ王国との国境付近の山で、たくさんの虫と爬虫類の魔物が居住地に近づいております。現在、A~Dランクの冒険者で対応していますが、魔物の侵攻を止められません。本日、国家災害級Sランク案件となりましたので、ぜひご対応をお願いします」
虫と爬虫類か……二人におあつらえ向きだな。しかし、またウラバダ王国がらみか……
「わかりました。三人ですぐ行きます」
その後、メリッサに事情を話し、貴族のお礼参りが来たら、一人で謁見の対応をお願いした。謁見は彼女の方が僕以上に慣れてるので、大丈夫だろう。内心では久しぶりに遠出できてウキウキなのは顔に出さないよう注意した。女性はこういうのは敏感に察知するからね。
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三人で、チルザーレ王国に【転移】して、地元のギルドに向かうと、たくさんの冒険者達が苦しんでいた。
「どうしたんですか?」
「虫にやられた。あいつら毒を持っている!」
あたりを見渡すと皆、顔色がどす黒く、息が荒くなっている。
このままだと、危険だな……
「もし良よければ、私がスキルで治しましょうか?」
「えっ、そんなことできるのか!」
「【解毒】!」
「えっ!? 嘘だろ!」
一瞬で回復し、男がびっくりしたが、一人一人じゃ追い付かないので。
「部屋中に【解毒】!」
「えっ!」
「なっ!」
「何が起きたの!」
「楽になった!」
全員が回復して、目を見開き驚愕の表情をする。そうしてると。
ギルド長が駆け込んできて。
「待ってくれ! 今、ヒーラーを呼ん……あれっ!? みんな、具合が良くなったのか!」
「ええ、この人のお陰です」
「あなたは……」
「ギルドから呼ばれましたギルフォードです」
「お待ちしておりました!」
ギルド長に話を聞くと、数日前に、突然、ウラバダ王国と国境沿いの山から、大量の虫と爬虫類の魔物が発生したという。どれも毒持ちで一回でも刺されると命の危険性もあるという。発生したのは、イビルタランチュラ(毒蜘蛛の魔物)、ダークスネーク(毒蛇の魔物)で、強烈な毒持ちらしい。
「とにかくウラバダ王国との国境沿い全域に広がっており、対応が追い付かないのです」
「まだ居住地までは来てないのですね」
「はい、魔物の侵攻速度が遅くて、そこは何とかなってますが、このままだと数日以内には……」
「居住地でなければ、火と風の魔法を思いきり使ってかまいませんか?」
「まだ郊外ですから大丈夫でしょうが、範囲が広大です」
「……それと山の方は燃やしても大丈夫でしょうか?」
「……緊急事態ですので、やむを得ません」
ギルド長から説明を受けて現地に行くと、横並びで冒険者や兵士、住民達が武器や道具で対応してたが、毒持ちなので、みんな及び腰だった。一部の魔法使いは火、氷等で防いでいたが、数が多すぎて侵攻を止めることはできていない。
念のため、二人に【解毒】スキルの指輪を渡してと。
「先ほど聞いた通り、範囲が広いので、素早く効率的にやるぞ!」
そして、三人で顔を見合わせ。
「行くぞ!」
他の人にあたらないよう、三人で【飛行】して。
「エアシュート!」「エアシュート!」「エアシュート!」
イレーネが空気の固まりを魔物にぶつけ、森方向に吹き飛ばしていく。先ほどまで近くにいた魔物が一気に視界から消える。魔物が人から離れたところで。
「ファイヤー!」「ファイヤー!」「ファイヤー!」
テネシアがどんどん魔物を灰に変えていく。そして横方向に移動しながら、どんどん進む。
「【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】!」
「【加工】【加工】【加工】【加工】【加工】!」
「【複写】【複写】【複写】【複写】【複写】!」
その間、僕は魔物が森から出るのは防ぐため、簡易の土壁をどんどん作っていく。風で押し返し、火で燃やし、土壁で侵攻を防ぐ。三人の魔法は完全に流れ作業だ。
「すげぇー!」
「嘘だろ!」
「何だ、あれ!」
「信じられない!」
後方からは驚きの声が聞こえる。後はこの作業を繰り返すだけだ。とにかく持久戦。三人ともこの時点では、いつもより省エネ魔法に心がけていた。一発で大物をドカンと倒すのは恰好がいいだろうが、小物でも大量の魔物に連射し続けて倒す持久戦も同じぐらい尊いと思う。
~数時間後~
広範囲で時間がかかったが、これで森の手前の土壁までは処理が終わった。ふ~長かった。しかし土壁の向こうを覗くと、壁に登ろうとイビルタランチュラ(毒蜘蛛の魔物)、ダークスネーク(毒蛇の魔物)がうごめいていた。
「よし、森の近くで人もいない。ここなら大きな魔法も大丈夫だ!」
土壁と森の間でうごめいている魔物の固まりを、効率的に処分する。
「エアカッター!」「エアカッター!」「エアカッター!」
イレーネの風の刃で魔物が大量に切り裂かれて動けなくする。そこへ。
「ファイヤーストーム!」「ファイヤーストーム!」「ファイヤーストーム!」
テネシアの火の嵐で魔物が燃え尽きる。
僕は別の場所で【収納】を繰り返し、魔物を片付けていった。
時間がかかったが、森から魔物が出てこなくなった。どうやら森を切り倒し、焼き払わなくて、済んだようだ。途中、『魔力増大の水晶玉』で魔力をチャージしたので、ばてずに済んだ。二人とも魔法をいっぱい使えて満足だろう。
その後、ギルド長に討伐報告すると、チルザーレ王国の国王がお礼をしたいとのこと。三人で王城に向かう。
「今回は我が国を災害から助けてくれて、感謝する」
「いえ、冒険者として、当然のことを遂行したまでです」
「国中の兵士、冒険者、そして住民まで戦っても難しかったのに、三人で解決されたのは、普通のことではない。ぜひお礼がしたい。それと今晩は感謝の宴を設けるので、ぜひ出席してくれ」
「わかりました」
この後、宴に参加し、王といろいろ話したが、今回のようなケースはまったく初めてとのこと。発生したイビルタランチュラ(毒蜘蛛の魔物)、ダークスネーク(毒蛇の魔物)も普段、森で見かけることはなく、不明な点が多すぎると言っていた。
「王様、そう言えば、冒険者が多かったですが、国内にダンジョンでもあるんですか?」
「郊外にダンジョンがあり、賑わっておるぞ」
ほう、ダンジョンがあるのか……少し気になるな。
「褒美は何がいいかの?」
「実は私はある島の領主をしておりまして、外国の通商を求めております。取引頂くと有難いです」
「何を扱っておるのじゃ?」
「回復薬が主力製品になります」
「回復薬か、冒険者からの需要も多いし、質の高いものならぜひ買いたいが」
「今、現物を持っておりますので、置いていきます。間違いなく質は高いです。許可を頂いたら定期船で港まで運びます」
「分かった。何という島じゃ」
「ギルフォード島という島ですが、ロナンダル王国から公国として、他国と通商、外交を一任されております。私はそこの公王になります」
「おお、貴殿は公王であったか! これは失礼した」
「いえいえ、今は一冒険者ですから、構いません」
「もしよろしければ、一週間後に、再度お伺いいたしますので、お返事を頂けましたら幸いです」
「わかった、それまでに返事をしよう。今回の褒賞金もその時に支払いたい」
これで一段落だ。一緒に来たテネシア、イレーネも楽しめたようで良かった。公国の取引先が増えるといいんだけどな。
※各国位置概略※
【北】
チルザーレ王国
ヒルロア王国 ウラバダ王国
【西】 ハロル王国 ロナンダル王国 ギルフォード公国 【東】
バナン王国
【南】
※補足※
大陸は六カ国(王国)、島は一カ国(公国)
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