第10話 商人への道
馬車が町の入口まで近づくと、門番が近寄ってきた。
「止まれ!」
「商人のイムル・アガッサだ」
「あっ! イムル様、これは失礼しました。どうぞお通り下さい」
門番の態度から、この商人が一角の人物だということが推し量れた。
「アレス様、盗賊を守衛所へ突きだしましょう」
門の近くの守衛所でイムルと衛兵が何やら話をしている。その後、盗賊は引き取られていった。
「それでは我が家まで進みますが、しばらくは町の様子などをお楽しみ下さい」
馬車はどんどん町の中心部に向かっていく。それにつれて建物の外観も上品になっていく。
「まだまだかかりますので、どうぞごゆっくりして下さい」
結構、中心部に来たが、まだ到着しない。もう馬車に乗り始めて、数時間は経過している。後方の二人を見ると町の様子に目を見開いていた。二人もこういう賑やかな場所は不慣れなようだ。
しばらくすると、また門をくぐり、より一層、街並みは華やかになった。まだ続くのかな。
「そろそろ着きます」
すると一際大きな建物が見えてきた。
「……(これは凄い)……」
この人は相当な大商人なのだろう。建物に入ると多くの召使いが出迎えをする。三人とも呆気にとられる。そして広間に通された。
「どうぞ、おかけ下さい」
「ありがとうございます」
僕を真ん中に三人で横並びに腰掛けると、高級そうなお茶とお菓子がふるまわれた。
「先ずはこちらをお納め下さい。盗賊の報奨金です」
袋の上から金貨が見えたが、間違いなく大金だろう。事前に読んだ本によると、この世界では金貨が十万円、銀貨千円、銅貨が百円ぐらいの価値だそうで、今回は金貨百枚で合計一千万円の価値ということだ。
「盗賊の中に賞金首が何人かいたようです。それとこちらが私からのお礼です」
また金貨の入った袋で、同じく金貨百枚だった。合わせると二千万円か……
「……確かに頂きました」
前世の自分だったら、多少は遠慮しただろうが、ここは自分の身は自分で守らなければならない世界だ。平和が当たり前ではないだろう。それに生きていくのにお金は必要だ。現実的に考えよう。
「これだけではまったく足りないと思っています。あなたは命の恩人です。何か希望するものはありますか?」
「……それではこの国で商売できるようになりたいです」
「分かりました。ご助力致しましょう。それと私の部下を二人預けましょう」
すると二人の人物が通された。
「先ほど馬車で命を救って頂いた者です。姉のメラルと弟のバーモになります。二人とも若いですが、飲み込みが早いですし、正直です。必ず役に立つでしょう」
「助かります。ありがとうございます」
これは助かる。非常に有難い。
その後、イムルの口添えもあり、トントン拍子に話が進んだ。商人ギルドへの登録、店舗の開設、従業員の準備……。
イムル・アガッサのいる中心部(王都)は高級エリアで、さすがに手が届かなかったが、途中経路の一般住民や騎士や冒険者も行き交う賑やかな場所に店を持つことができた。それと運搬用に荷馬車も購入した。転移魔法があるから、本当は不要なのだが、人前で見せるのはやめた方がいいだろう。馬車はあくまで人里用だ。人がいなくなったら転移しよう。それと収納魔法も大量の場合は人前を避けた方が良さそうだ。二人にも口裏合わせしておこう。
「よし、いったん家に帰ろう。商人に向けてスタートだ」
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、評価やブックマークをして頂けると大変有難いです。




