火のない所に煙は立たぬ
チップ1枚1000G。
所持していたチップが合計で2500枚。250万の大勝ちだ。
「くそう……! 負けた……!」
「山勘で全部に乗っかるからだ……」
「…………」
「イカサマばれてレベルはく奪されたんですよね。どんまいです」
タイタンさんは手堅くやっていたのもあり収支はプラスだったが、ほかの二人は所持金が全部なくなっていた。
イカサマしてレベルはく奪というペナルティを受けたしろんちゅさんは悲しそうな顔をしている。シュカさんは次は勝てるとパチンコにはまった人のような言動。
「ギャンブルのコツってあるぅ……?」
「ギャンブルをしないことだな」
「私は負けない方法じゃなくて勝つ方法を聞いてるの!」
「常勝出来たらそれで普通に稼げますよね」
ギャンブルで勝てるという保証はない。
「で、ユメミはいくら儲けたんだ?」
「収支としては6万だった私の所持金が250万に……」
「がっつり勝ったな」
「イカサマしたので」
そういうと、しろんちゅが顔を上げる。
「ばれないイカサマがあるのか!?」
「たぶんなんですが、このカジノは魔法を検知するようなシステムになってると思うんです。ただ、私の闇精霊魔法はそれに引っかからないみたいで精霊魔法を使ったらなにも……」
「ずるいだろうそれは!」
「闇の精霊様様ですね」
だからこのカジノでは魔法の類は使っちゃダメだとみていいだろう。イカサマがなぜばれるかとか、そういう仕組みはまだ知らないので憶測でしかないが。
あと、換金する際に私がもらったものがある。
「あとこういうのをもらいました」
「なにそれ? 黒いカード?」
「VIPカードらしいです。合計で200万以上儲けた人に贈られるらしく、VIPルームでギャンブルが可能、と」
「俺の勝ち金が10万程度だからまだまだ先が長いな……」
この黒いカードには私の名前が刻まれており、譲渡は不可能らしい。私の名前で誰かがVIPルームでギャンブルを代わりにするというのは不可能。
VIPルームではさらに高倍率のギャンブルや、自分の強さでお金を賭けられるギャンブルというのがあり、腕に自信があるのならそちらに参戦するほうがいいとアドバイスも受けたのだった。
私は黒いカードをしまおうとすると、酔っぱらったNPCが私のほうを見て、駆け寄ってくる。
「あんたそりゃあVIPカードじゃねぇかぁ。儲けたんだなぁ」
「はい」
「あんたも噂を信じてきたクチかぁ?」
「噂?」
「そうよ。このカジノの奥の奥……。超VIPってやつがあってな。超VIPってやつになるとカジノの奥にあるとてつもなくすごいものが与えられるって話だぜ……。総支配人以外見たことがねえらしい……ひっく」
「超VIP……」
なんだそれ。すごく気になるじゃないか。
「あくまで噂だぜぇ」
「噂ですか」
本当かどうかは定かではないってことか。
だがしかし、火のない所に煙は立たぬ。噂だとしてもそういうのはもしかしたらあるんじゃないだろうか。
「お嬢ちゃんが手に入れたら俺にそのすごいもんを見せてくれーなぁー」
そういってNPCの人が去っていく。
「超すごいとてつもないもの……?」
「俄然気になる単語を言い残していったなあの爺さん……」
「では望み通り興じよう! 破滅か幸福か、どちらに神が微笑むのかを!」
「……まだやるつもりですがお金あるんです?」
「「貸してください」」
「はぁ……」




