後悔
『それじゃ、中間発表〜〜〜!!』
兄さんたちとの交戦も終わり、順位の変動は特にはなし。
見かけ次第プレイヤーを倒していると、突然動きが止まった。中間発表とのことだ。
『現在、現実時刻ではそろそろ午後0時を指すころなんですねぇ! イベントの中間、そして中断! 良いゲームプレイには、腹ごしらえが大事です。腹が減っては戦はできぬというからね。1時間程度、プレイヤーは動けなくなり、強制ログアウトさせます! ご飯食べて歯ァ磨けよっ!』
とのこと。
そろそろそんな時刻か。私は昼ごはんとか夢中になると食べなくなるので、こういう配慮はありがたい。運営もそういう配慮しなきゃいけないからな……。
私はヘッドギアを取り、キッチンへ向かう。ポットのお湯をカップ麺に注ぎ、3分。
「まず……」
誰が考えたか、カップラーメンしるこ。
その名の通りお汁粉+カップ麺。こういう変な味をよく買うのは私の悪い癖。
あんこの甘みが何にも活かされておらず、変に味が合わさってマズい。これをよく発売しようと思ったものだ。リピートはナシだな……。
食べていると、スマホの着信が鳴り響く。
ウツツ兄さんからの着信だった。
「はい」
『あー、今から帰ってこられるか?』
「なんかあったんですか?」
『母さんが倒れてよ』
「わかりました。今から向かいます」
私は立ち上がり、実家へ戻る荷物を……と、その時イベントの最中だったことを思い出す。
「あー……。あー……。まぁ、仕方ないですね。こういうこともありますか。最後までやりたかった気持ちが強いですがね……」
流石に実の親が倒れたと聞いてはそれどころじゃないだろう。
私は最低限の手荷物を抱え、鍵を閉める。
そして、実家のある北海道へ。北海道の旭川空港に到着し、ウツツ兄さんが出迎えてくれた。
「悪いな……」
「いいえ。それより母さんは?」
「……それなんだが」
神妙な面持ち。
私は最悪の想像をしてしまい、手荷物を落としてしまった。
「その……呼び出して悪かった」
「はい?」
「実は……いや、見てもらった方が早い」
と言って車に乗せられて私は病院へ向かわされる。
芥屋さんと書かれた病室の中に入ると、そこには元気よく話している母さんの姿があった。
めっちゃ元気にぺちゃくちゃと誰かと話している姿。私は扉を閉める。
「……元気ですよね」
「あぁ、めちゃくちゃ元気だ」
「知らない女の人と話してたくらい元気ですね」
「あの人は……」
「あの人は俺の婚約者」
と、デカい身長のゲン兄さんがやってきた。
「その、ゲン兄が結婚報告したらテンション上がって倒れたみたいで……。俺が勘違いして……」
「…………はぁーーーーーー」
じゃあイベント最後まで完走したかったなぁ。
「すまん」
「すまんじゃないですけどね? っはぁーーー……。せっかくイベント無視してやってきたっていうのに……。まぁ、何事もなくてよかったですけどね」
「悪かった」
「いや、母さんも歳だし仕方ないでしょう。謝りたいなら何か飲み物でも買ってください」
「分かった」
ウツツ兄さんが走って向かっていった。
私はゲン兄さんの隣に立ち、ゲン兄さんのお腹を突いてみる。
……昔から筋トレが趣味なだけあってカッチカチだな。
「なにしてんだ?」
「筋肉の研究」
「帰ったらポージングしてやるから」
「それは気持ち悪いのでいいです」
「遠慮するな」
と話していると。
「……浮気?」
「え、あ、ちが」
なんか知らない女の人が、さっき母さんとお話ししていた人がこちらを睨んでいた。




