兄
前回の更新がほぼ2か月前……!? うせやろ……!?
お待たせしました。モチベがちょっと回復したので不定期で書いていきたいと思います。
襲い掛かってくる矢の弾幕。
その隙を縫うように入れ込んでくる攻撃。連携という連携が取れている。おかげで私は防戦一方だった。矢の弾幕を避けつつ、攻撃を躱す。
こういう弾幕ゲーは正直苦手なのだ。一発ならまだしも、集中力を持続的に削られてしまっては疲れが来てしまう。
それが狙いか?
私の弱点を知っているかのように狙ってやってきている。私は基本的に短時間で戦闘を終わらせることのほうが多い。配信ではこういう姿を見せていないはずだが……。
私のクランメンバーの誰かが情報提供を? いや、メリットがない。他人にみすみすポイントを与えるような真似なんて普通はしない。というか、クランメンバーであるシュカさんたちにも私の弱点というか、私の短所のことはなにも言ってないので知らない可能性のほうが高い。
「あーーーーーーー」
となると、可能性は一つ。
「もしかして私の兄を名乗る人物に私のことを聞いたんですか?」
「…………ノーコメント」
「図星ですか」
私には兄が二人いる。
私と兄たちの関係性は極めて良好である。ただ、二番目の兄とはよくケンカしていた仲だ。兄妹仲は悪くないのだが、二番目の兄は私に勝ちたいという一心で今も勝負を仕掛けてくることがある。
私の身内なら、私の弱点を知っていても不思議じゃない。というか、身内以外ありえないだろう。
「となると、あの兄さんは最後の最後、おいしいところを奪う気満々ですね」
「えっ?」
「私もケンカで負けたくないですし、ここは被弾覚悟でやるしかありませんか」
私は闇精霊魔法で目の前の女性を引き寄せる。
不意に引き寄せられて反応が遅れている。私は顔面に体重を乗せた拳を叩きこむ。鋭い一撃は相手の体力を削り切ることは分けなかった。
この弾幕戦、私も体力を使うが、あっちだって多少の疲弊は出る。疲れのせいで反応が遅れたのだろう。
「厄介なのを先につぶしましょうか」
飛んでくる矢の本数からして複数人、弓を扱うプレイヤーがいる。
最大人数は5人。1人撃破、1人が兄と仮定すると兄以外のプレイヤーは残り3人か。どっちから攻めるか悩みどころだが、悩んでいてはいずれやられる。
「右のやつからいきましょう」
私は全力で右に走り出す。
照準を定まらせないように蛇行しながら全力で走る。後ろを確認している暇はないので、被弾は割と覚悟の上、運が良ければ当たらないだろう。
結構遠くの距離から狙撃している。
そういうスキルがあるというのはすでに経験している。3人がそのイベント用の特殊スキルを取得しているとみて間違いない。
射程距離がどれほどまでかはわからないが、そういうプレイヤーはいきなり距離を詰められることを果たして想定しているだろうか。
答えは否である。
長距離で狙撃しているからすぐに距離を詰められるはずがないという過信があるのだ。たぶん。
「ひぃいいい!?」
「逃がしませんよ!」
スライディングで転ばせる。
そして、足をつかみぶん回す。木にぶつけ、体力が徐々に削れていくプレイヤー。トドメとして私は思い切り矢が飛んでくる方向にプレイヤーをぶん投げる。
ハンマー投げみたいなもの。もちろん現実世界の私にはこんな力はないのでゲームだからできる芸当ではあるのだが。
「残り2人」
精霊飛行で空を飛ぶ。
あっという間にもう一人との距離を詰めることができた。闇精霊魔法で手繰り寄せぶん殴る。
「あと1人……」
その瞬間、背後からものすごい気配。
私は間一髪でその攻撃を回避する。
「やっぱお前バケモンだよな……」
「ウツツ兄さん」
私の兄である、芥屋 現が杖を構えて私を見据えていた。




