ざわーくらうど
シュカさんたちとの戦いの後もレイドバトルを挑まれる私。
私は思った以上に強いらしい。自分ではそんなつもりはないのだが、私自身の強さの認識とほかの人の強さの認識に齟齬が生じている。
まぁ、私が改めたということで、私は絶賛悪役ロールプレイ中。
「私をその程度で倒せると思っているんですか?」
殴り飛ばす快感。とっても心地がいい。
やはり私は暴の思想に染まってしまったらダメっぽい。武闘家が天職みたいなもので、人を殴って倒すという行為に愉悦を感じてしまっている。
編集に出した漫画、魔法使いじゃなくて武闘家にしたほうがよかったかなぁ。いや、武闘家も出そう。いてもいいはずだ。
「ふぅ、結構稼げましたね。今現在のポイントは93ポイント……」
4回くらいレイドバトルをやらされて全勝。いまだに負け知らず。
ただ、1位とはまだ差は縮まっていない。アジュラさんもレイドバトルを挑まれ過ぎているようで、私と同じポイント数ゲットしている。
3位のざわーくらうどさんも85ポイントとまだ勝利しているようだ。
「この上位から均衡が崩れませんね……。皆さんレイドバトルばっかしているのでしょうか」
いまだに上位の入れ替わりが起きていない。
そう考えながら歩いていると。
「あん?」
「おや」
3位のざわーくらうどさんが目の前にばったり現れた。
「あんた2位の……」
「ユメミです。初めまして」
「ざわーくらうど。よろしく」
「やります?」
「やらねえよ。旨みねえだろ。レイドバトルで稼いだほうがうまいし、強いだろお前」
「みたいですね」
「後半戦ならまだしもまだまだ前半戦だろ。ここで体力を使うのはナシ。疲れるわ」
ということだった。
私としてはやってもよかったのだが、アジュラさんとざわーくらうどさんは体力をなるべく温存しておきたいらしい。まぁ、理由はわかる。
「んで、なんであんたそんな強いの? 漫画家だろ。あまり身体動かさねえ職業なのに」
「漫画家だからこそですかね?」
「どういう意味だよ」
「私、バトル漫画を描いていたんです」
「知ってる。異能ホラーバトル漫画だろ。あたしも読んでた」
「バトル漫画を描くにあたって大事なのはやはりバトルでして。いっつも脳内でシミュレーションしてました」
「シミュレーションね……。でもそれだけでうまくなるわけじゃねえだろ」
「そうですかね? 私は割と感覚でプレイしているので、割とシミュレート通りにいってますが」
「普通はできねえよ」
そういわれてしまった。
私がおかしいのだろうか。
「ざわーくらうどさんはなぜ強いんですか?」
「現実でいろいろと武道やってっからだよ。その動きを応用して戦ってんの」
「なるほど」
「空手とか柔道とか……。合気道もやってた」
「結構やってますね」
……ということはざわーくらうどさんも武闘家か。上位全員武闘家ってすごいな。
「ユメミさんはなんかやってたのか?」
「ネタになると思って少々カポエイラとか齧っていたぐらいですね」
「カポエイラか。ずいぶんとまぁ……」
「体験したいならバトルしましょうよ」
「嫌だっつの。誰が強いってわかってるやつと戦うかよ」
その時だった。
私たちの周りには10人のプレイヤーが立っている。
「体力回復はさせてもらえないみたいですよ?」
「こんな時に来るのかよ。あー、まぁ、お互い生き残ろうぜ」
「そうですね」
私は重い腰をあげ、構える。
《レイドバトル:ユメミ を開始します》
「私の無敗伝説がいつまで続くか見物ですね」




