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気に入らない奴はとりあえずぶん殴る

 フィールドを駆け巡る。

 魔物を見つけては討伐しているのだが。


「なんで、ついてきてるんです?」

「いやぁ、仲間として?」

「このイベント、あまり仲間と協力する意味ないですけど……」


 このイベントは徒党を組むというメリットが今のところない。

 近くにいたらポイントがもらえるとかそういうのはないし、経験値も入らないから一緒に行動するメリットは特にない。

 

「シュカさん、勝ちたくないんですか?」

「勝ちたいけど……」

「ならなぜ……。あぁ、獲物の横取りですか」

「…………てへっ」


 やはり。

 シュカさんを見逃してしまってるのがマズイか。

 

 私はパラメータを振り分ける。

 スピードを上げ、火力も上げた。防御は特に考えなくていいだろう。その方が緊張感がある。


 私は走る速度を上げた。


「横取りされるのは嫌ですからね。振り切ることにしましょうか」

「そんなっ……」


 シュカさんの影すら見えなくなり、私はとりあえず森を抜けた。

 森を抜けた先は荒野になっており、とても見晴らしがいい。どこかに隠れて奇襲というのはやりづらいフィールドだ。


「いいですねぇ。草木も生えてない荒野、決戦フィールドとしてはなかなか……」


 ラスボスとの決戦の地。

 二人の侍が決闘の場所として選んだのはここ……。なかなかありきたりのワンシーンは描けそうだ。

 私はとりあえず走るのをやめて歩いてみる。荒野を彷徨ってる感を出したくて。


 歩いていると、男の人の声が聞こえてきた。

 岩陰の向こうから聞こえてくる。私は耳を澄ます。


「よわ。え、こんな実力で俺に挑んできたの? ウケる。弱いのになんでこんなイベント参加してんの?」

「……いいだろう別に。我も参加したかっただけさ」

「我ってwww」


 声的にしろんちゅさんだ。

 しろんちゅさんが男の人に勝負を挑んで負けかけているらしい。

 勝負を仕掛けた男の人はお世辞にも良い性格とは特に言えなさそうだな。しろんちゅさんの声がどんどん弱くなっていっている。


 負けたとしても煽るのはダメだろう。

 私はとりあえず戦いを仕掛けることにした。


「油断大敵」


 カポエイラの要領で、顔面に回し蹴り。

 男は岩を破壊して吹っ飛んでいく。そのまま着地し、双剣を取り出していた。


「んだテメェ。横取りしようってのか?」

「そういうわけではないのですけど……。流石に負けた相手を煽るのはモラルとしてダメじゃないですか?」

「煽る? あぁ、弱い相手には煽りに聞こえるかもしれねえな」

「しろんちゅさん、あの相手もらいますよ。いいですか?」


 しろんちゅさんは頷いた。

 私は拳を構える。双剣は手数の武器だ。一撃の火力はそこまで高くない。

 だがしかし、それは防御が並以上であればである。私はこのイベントでは防具をまだ更新していない。またパラメータでも上げてないので一撃は相当痛いだろうな。


 相手とのレベル差は6。こっちが低い。

 

「面白くなってきましたね」

「ほら、こいよ」

「わかりました」


 私は瞬時に距離を詰める。

 双剣を振り下ろそうとしてくるのでギリギリで躱し、顔面に蹴りを叩き込む。

 

「チッ、運がいい奴め」

「あーあー、何て言いましたっけ」

「あん?」

「そうでしたそうでした。"弱い犬ほどよく吠える"あなたにピッタリの言葉ですね」

「殺す!!」


 双剣を構え、怒り心頭で突撃してくる男。

 私は攻撃を避け、顔面をぶん殴る。仰け反る男、私はそのまま馬乗りになり、手を動かせないように足で手を固定させる。


「テメェ! 死ねやァ!」

「先に煽ってきたのはそちらでしょう」

「テメェには煽ってねえだろうがよ……!」

「あの女性、私の友達なんですよ。友達が酷い目に遭ってたら助けますよね」


 私は一撃、顔面に拳を叩きつける。

 もう一撃加えようとすると、男は「悪かった」と叫ぶ。


「悪かった、謝る、謝るから許して……」

「許す? 私はもうすでに怒ってませんよ。これは殺し合いのゲームです。ポイントを得るためにはあなたを殺すしかないですよね」

「見逃……」


 思い切り顔面をぶん殴った。

 男は白目を剥き、そのまま消えていく。


 今の合計は15ポイント。まずまずの成果である。そしてこの男のポイントを加算して16。まぁ、まだ開始して間もないのだ。このペースでいけば上位は目指せるだろう。










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