暴の思想
拳を構え、グーで狼の頬を殴る。
あ、なんだろう、すごく気持ちがいい。何かを殴るのってこんなにも心地がよいものなのか……。
「快感……!」
クセになる……!
大きな狼はこちらへ向かってくる。私は狼を蹴り飛ばした。
ダガーを使ってない分威力は出ないが……。それ以上の言葉にできない快感が私に襲いかかる。
「暴力というのは案外良いものなのかも……」
「世界平和とかけ離れた思考、悪役の思考である」
「たしかに!」
危ない危ない。暴の思想が……。
危うく闇堕ちしかけたところで、私はMPを回復させる。
頭を殴ったことで影狼が気絶した隙に。
「ふはははは! 喰らえ! 我が一撃をッ! 岩穿龍閃!」
「それ漫画の技ですよね?」
大きく振り下ろした一撃が闇の大結晶にヒビを入れた。
影狼は目を覚ます。ギョロリとしろんちゅさんの方を向く。
「ガルルァ!」
「やはりあれを壊されるのが一番ダメなんですね」
私は狼を殴り、地面に叩きつける。
影狼は倒れ、そしてさらにデカくなり復活。倒せば倒すほど大きくなるというのは厄介だ。
狼はしろんちゅさん目掛けて走り出した。
「とおっ」
背に飛び乗る。
そして、一発ぶん殴ってみるが止まらない。一撃じゃ止まらなくなってきたか。
しょうがない。
「無駄無駄無駄無駄ァッ!」
何発もぶん殴る。
ゲームだからこそできるラッシュ。何発もぶん殴ってようやく狼は足を止めた。
そして。
「トドメだ喰らえッ! フルパワーバースト!」
力強くしろんちゅさんがピッケルを振り下ろした瞬間、闇の大結晶にヒビが入った。
入ったヒビは徐々に大きくなっていく。ピシッピシッと。
影狼は足を止め、苦しそうに叫んだ。
その瞬間、影狼は霧散して消え、闇の大結晶が割れたのだった。
「っしゃあ!」
「っし」
私としろんちゅさんはハイタッチを交わしたのだった。
私としろんちゅさんは闇の大結晶の素材を拾っていく。結構落ちたが……。
「うーむ、固有素材が二つしか出なかったな……」
「足りないんですか?」
「ピッケルを作る分にはこれで事足りる。だが」
「あーー……。もう一回やります?」
「ふっ。いいだろう。アンコールと洒落込むか……」
もう一回か。
足止め、楽じゃないんだがなぁ……。私の武器のためだ。
私たちはもう一度闇の大結晶を探して彷徨い、そして無事ゲット出来たのだった。
しばらくはやりたくないかな……。




