こいつの倒し方
影狼は牙を剥く。
私はダガーで牙を受け止めた。
「ガルルル……」
「防戦一方ですね」
攻撃する暇がない。
牙を逸らすと、今度は爪で私を引っ掻いてこようとしてくる。
爪が私の胸を引っ掻いた。
「ユメミ!」
「大丈夫です」
私はすぐに体勢を立て直し、今度はこちらから攻めることにする。
防戦一方だったのは私が攻めることを考えていなかったせいだ。
臆せば死ぬ。
それは戦いの摂理である。戦いというのはいかに自分を押し付けるか、だと私は思っている。それが出来ていなかった。
「しろんちゅさん、私もしかしたら死ぬかもしれませんがその時は諦めてください」
「う、うむ」
私は影狼目掛けて走り出す。
ダガーを構え、獲物めがけて一直線。狼は私をみて待ち構えている。
カウンターでもするのだろうか。
「闇精霊魔法」
私は影狼を引っ張り寄せる。
カウンターをするに当たって一番大切なのはタイミングである。
まずはそれを狂わせる。
「看破、急襲」
狼の首をダガーが貫いた。
影の狼はそのまま動かなくなる。体力はそこまでなかったようだ。
ボス級……の魔物だよな。ここまで簡単に終わるものなのか……?
すると、狼は再び立ち上がる。
その瞬間、狼はどんどん大きくなっていった。周りの影の魔物たちを吸収している。
「そんなのアリですか?」
ずるい。
私は再びダガーを構える。そして、もう一度討伐したが……。
またデカくなって再登場。
こうなってくるとデカくなり続けるだけになる気がする。討伐方法が違うのだろう。
どうやって倒すんだこれ。
「うーーーーーん……」
看破スキルでは弱点の位置が把握できたとしても倒し方まで看破するわけじゃない。というか今までの敵は体力を全部削り切ることで倒せたので必要がなかったが……。
私が考えていると、物陰からしろんちゅさんがピッケルを持って飛び出してきたのだった。
「危ないですよ」
「わかったぞ、ソイツの倒し方が!」
「本当ですか?」
「ソイツはこの結晶を採掘しないときっと倒せん! これがコイツの核みたいなものだろう」
「……なるほど。じゃあ、採掘している邪魔をさせなければいいのですね」
それが本当に倒せる方法かは分からないがやってみる価値はある。
私は闇精霊魔法を使用して狼を手繰り寄せた。
「闇の引力は強いですね。MPが尽きるまではこれでいいとして……」
私はダガーを外した。
武器を構えていると倒しかねない。これ以上デカくしたくないから倒したくはない。
どの職業でも素手で戦うことが出来るのは助かった。シュカさんに倣い私も暴力で戦おう。
「しろんちゅさん、なる早でお願いしますね!」
「任せとくがいい! ふははははは!」




