暗夜の荒れ地へ!
シュカさんの配信は大きな話題となっていた。
というのも、今まで人間以外の種族になった人なんていなかったらしい。このゲームは最初から種族が固定という昨今のVRMMOでは珍しいもので、皆人間のままやるのだと思っていた。そこに精霊となった私が登場である。
精霊となれるということが知れ渡り、忘却の森に出向く人が多くなっている。
「ほーん……。ずいぶんと運がいいこって」
「闇か……。我も飲まれていた時期があった。今も時折飲まれることもある。闇というのは恐ろしきものよ」
タイタンさんたちにも精霊となったことを説明するとそういう反応をしていた。
説明が終わり、私は依頼を眺めていると。
「ユメミよ、暇か?」
「暇ですよ。どうしたんですか?」
「実は行きたい場所があるのだ」
しろんちゅが行きたい場所があるのだという。
地図を開き、行きたい場所にマッピングしているようだった。はるか北のほうにある暗夜の荒れ地。少々遠い場所だった。
しろんちゅが行きたい理由。それは。
「そこに闇の大結晶となる鉱石が存在しているらしい。我のピッケルの材料にしたい」
「闇の力に呑まれるためですか?」
「あぁ。闇こそ我の生きる道……。闇の大結晶を採掘できれば貴様の武器も強化できるやもしれんぞ?」
「いいですね。闇の精霊ですし武器のコンセプトも揃えていたほうがかっこいいですね」
「あー、なら道中に黒曜石があるからそれも取って来いよ」
「了解だ。ゆくぞ、ユメミ」
「はい」
私はしろんちゅさんとアジトから飛び出る。
暗夜の荒れ地へいくには北へ北へと進んでいく。始まりの町であるここを拠点としているので、だいぶ遠い。
走っていっても2日はかかるんじゃないだろうか。ワープとかを使えればいいが……。それか飛行……。
「ユメミよ、貴様は空を飛べるんだったな?」
「え? あ、はい。飛べるようになりました」
「ふっ、奇遇だな。空を飛べるのは貴様だけではない!」
しろんちゅさんが何かを取り出した。
飛行機の翼に取っ手を付けたような代物。それの取っ手をつかんだ瞬間、噴射口から何かが噴射し、爆速で空を飛び始めたのだった。
「なにそれかっこいい!」
「ふはははは! 空を飛べるのは貴様だけの領分ではない! タイタンに制作してもらったのだ! 新s寝会のライト兄弟となろう!
「いいですねぇ! 私も後で乗ってみたいです!」
「いいだろう。まずは目的地へ行くことが先決だ!」
私も負けじと空を飛ぶ。
しろんちゅさんと併走。いいなぁ、フォルムも洗練されていて……。最低限の機能しかなさそうなのがとてもいい。機能美を追及すると自然とそうなる形っていう感じのフォルムが実にそそる。
「だが……飛んでいて分かったのだが空にも魔物がいる」
「任せてください」
私はダガーを構える。
飛んできた鳥の魔物。私は精霊魔法で引き寄せて、弱点に突き刺した。魔物の鳥は墜落して消えていく。
「さすがだな」
「この程度の魔物は弱いですからね。さ、暗夜の荒れ地に急ぎましょう!」
しろんちゅさんはさらに吹かす。
ジェットの威力が強まり、さらに加速したのだった。
「うわぁーーーーーっ! 速い!」
「ふはははは! この速度なら暗夜の荒れ地もすぐそこだァ!」




