精霊
精霊の里……。もしかしなくても特殊なイベントだろうな。なんて思いながらシルフの後ろをついていく。
このイベントが発生するための条件を私が満たしていたから私だけカラスに突き飛ばされてしまったのだろうか。
配信外でこんな美味しいイベントを一人でこなしていいものかと思い悩むが……。
「まぁ、いいか……」
起きてしまったものは仕方がないし、仲間も連れてきていいとか聞いてもダメって言いそうだし。
そう言い訳しながら私は歩いていると、光の玉が浮いている神秘的な光景が目に映る。
ほわほわとした優しい光があたりを照らしている。
「人間さんだ〜」
「人間さん〜」
精霊が私に興味を示しているようだ。
シルフについていくと、木の幹の穴の中に入っていった。
シルフみたいな小さい人が通れる程度の小さな穴。
私は穴の中を覗き込むが……。
「なにしてんのよ! さっさと来なさい!」
「と言われましても私は小さくなれません」
「あら、そうだったわね! じゃ、小さくしてあげる」
「え?」
私の身体が小さくなっていく。
穴を通り抜けられるような小さなサイズにまでなってしまった。
す、すごい。小さくすることが出来るんだ。精霊の力って不思議だ。小さくなって大冒険とか、そういう物語もあったなぁ。
不思議なことを体験してテンションが上がってきた。
私はシルフの後ろをついていく。
木の幹から上に登ると、出口があり、出口は滑り台になっていた。
「きゃほーーー!」
「どこへ向かっているんでしょうか。ここは既に里の中、ですよね」
「どこって決まってるじゃない! 精霊王様のところよ! 新人精霊は精霊王様のところにいくの!」
「新人精霊になったつもりはありませんが」
「小さくなったじゃない。その身体は精霊なのよ!」
「え」
私はステータスを確認してみるとたしかに精霊と種族が変更されていた。
あ、小さくさせるって魔法とか不思議な力ではなく精霊として体を無理やり作り変えられたってこと!?
「先に言ってくださいそんな大事なこと……。人間に戻れるんですよね?」
「え? あ、いやー……」
「えぇ……」
この小ささではダガーを振るっても大したダメージにならないな。
戦闘方法をまるっきり変えるしかなくなってしまったな。まあ、戦闘方法を変えても面白いだろうからいいが……。
「ま、精霊王様なら何とかしてくれるわ! この先にいるわよ!」
雰囲気が突然変わった。
幻想的な森の中にいたと思ったが、いきなり神聖な雰囲気を感じるようになった。
神域。それに等しいようなプレッシャーがのしかかる。ここまでオーラが違うとは。
「ま、物怖じしてても意味はありませんね。行きましょう」
「いこいこ!」
茂みのなかへ入っていく。
茂みの奥は泉と、その前にテディベアのようなずんぐりむっくりとした熊さんが座っていた。
頭には苔が生えており、悠久の時を生きているようにも思える。
「よく来たね。いらっしゃい、元人間の精霊よ」
「どうも」
「まずはお詫びをしよう。シルフが勝手に種族を変えたこと」
「いえ……」
優しい男性の声だ。
とても心地のいい声。聞いているだけで癒されるような気がする。
「種族は……すまないが作り変えてしまったものは無理だ。ただ……人間の大きさの精霊なら可能だ」
「出来るんですか?」
「ああ、このスキルを授けるよ」
《スキル:巨大化 を取得しました》
このスキルは特殊なスキルで任意でしか発動、解除が出来ないようだ。
「さて、精霊となったからにはこのスキルも授けないとね」
《スキル:精霊魔法(仮)を取得しました》
「属性はなにがいいかな? 火、水、風、雷、光、闇のどれがいい?」
「闇でお願いします」
「わかった」
《スキル:精霊魔法(仮)が進化します》
《スキル:闇精霊魔法 を取得しました》
闇精霊魔法というのが手に入った。
発動すると目の前に相手を引き寄せるブラックホールを作り出すらしい。射程距離は5mで、5m以内の敵を強制的に引っ張るようだ。
「シルフが君を気に入ったみたいでね。精霊にしてしまった。申し訳ない」
「い、いえ」
「とりあえずこれくらいにしよう。たくさん授けると負荷がかかっちゃうからね。鍛錬を積んだらまたおいで」
そういうと、精霊王様は指パッチンをした。
その瞬間、私は忘却の森の前に戻されていたのだった。
「ここまで戻すんですか」
まあ、いいか。帰ろう。
《種族スキル:精霊飛行 を取得しました》




