御免
ゲームにログインし、私は依頼を眺める。
キングモンスターとの遭遇。そういう依頼もあるということは前回学んだことだ。となると、こういう依頼でもそういう報酬に見合わないモンスターが出現しているという依頼もあるということ。
あまりそういうのはやりたくないなと思いつつ、私は次にやる依頼を吟味する。
「これですね」
「依頼に行くのか?」
「はい。皆さん依頼に行ってるようですし」
私は一人で依頼に向かうことにした。
ちょうど昨日手に入れたスキルを試してみたいというのもあったが。
私は依頼の場所である場所へ向かおうと歩いていると。
「御免」
デカい男の人に声をかけられた。
振り返った際の圧倒的な威圧感を前に、私は思わず固まってしまう。ものすごく圧が強い。強面でガタイがいい男ってものすごく圧がある。
「なんでしょう」
「あなたは、ユメミ殿と見受けられる」
「はい、そうですが」
「出会った早々ではあるが、この私と、手合わせ願いたい」
「手合わせですか?」
スチルと表示されているこの男性。
手合わせ……。手合わせか。
「いいですよ。やりましょうか」
「感謝いたします」
PvPを申し込まれ、私は了承。
PvP空間が広がる。私はダガーを装備すると、相手はどでかいハンマーを装備していた。
「見るからにパワー系……」
「はい。私の一撃は重いですよ」
私は最初に仕掛けることにした。
素早く距離を詰める。看破で弱点を見つけた。弱点は人間であるから左胸部、そして首。私は弱点を狙いすまし、ダガーを振り下ろそうとした時だった。
ハンマーの一撃がやってくる。私は咄嗟にダガーで防ぐ。
「そう簡単に近づけさせませんよ」
「そう来ますか」
「次はこちらから」
スチルは大きく飛ぶと、地面めがけてハンマーを振り下ろした。
「大地砕き!」
その瞬間、私たちが立っている地面が大きくひび割れ隆起する。私は空中にかちあげられたのだった。
隆起した地面が私を押し上げた……? すごいパワーというべきか。そういう技なのだろう。砕けた大地ではあまりにも戦いづらい。
フィールドを変える。たしかに厄介なものだ。私の得意の素早さはあまり意味をなすことはないだろう。
「空中では、身動き不可!」
「ですね。音速太刀!」
斬撃を飛ばす。
予想外の攻撃だったのか、もろに食らっていた。
「遠距離攻撃を持っている……?」
「つい最近手に入れたスキルです」
「そうですか。でも連発は不可能ですね?」
「はい」
私は重力に従い落下していく。
着地点ではスチルがハンマーを構えて待っている。きっと大きくハンマーを振り、まるで野球化のように大きく飛ばすんだろう。
さて、どうするべきか。あのハンマーの一撃、受けるだけでも無理だ。パリィでもするか? いや……。タイミングを少しずらされたらまずいし、あの大きなハンマーの軌道を少し変えたところで被弾は免れないだろう。
これをどうにかするスキルは持っていない。
このままハンマーの一撃を受ける以外に道はないのだろうか。それは違う。
「ホーム……」
「集中……」
「ランッ!」
ハンマーをフルスイングした一撃。
私は急襲スキルを使用し、威力を少しでも相殺、一撃を受ける。体力が大きく削れたが、見事に生き残ることができた。
「なんと……!」
「あーあー、パワーじゃ敵いませんね」
立ち上がる。
まったく。大したパワーじゃないか。このままだと負けるな。私の攻撃も読まれている。どんだけプレイヤースキルが高いんだこの人は。
だがしかし、観察してみてわかったこともある。
それはスキルを使用する際少しラグがあること。どのスキルを使用するか、選択している時間がある。最適解を短い時間で探すのは見事だが、いちいち考えていたらミスにつながることもある。
もう一つのスキル、試してなかったな。
試してみるとしよう。
「猿舞踏」
「分身……だと?」
「いきますよ」
私は素早く距離を詰める。
呆気に取られているスチル。
「しまっ」
「隙だらけです」
私はダガーを突き刺した。
看破スキルの効果が残っており、クリティカルにより大ダメージ。一撃、当てていなかったからね
「分身にも攻撃判定が……?」
分身の一体は首筋を攻撃していた。
一気に三回分のダメージ、しかも同時攻撃だったのでクリティカルが3回連続入ったようなものだった。タフでも、三倍クリティカルは耐えられなかったらしい。
スチルは武器を地面に落とし、倒れて消えていく。
「勝ちですね」
なんとか、勝てた。




