暗殺者
シュカさんがメンバーを勧誘に行ったので、帰ってくるまでは各々依頼をこなそうということになった。
私は依頼リストを眺め、ここから目的地が近いものからこなしていくことにした。
ダガーを構え、モンスターの頭に突き刺す。
まず最初の依頼はビッグマウスの大歯が欲しいという依頼。ビッグマウスは最初の街の平原に生息している。
大歯はレアドロップらしく、落ちない。
「次」
振り返った瞬間、人が背後に立っていたことに気がついた。
私は思わず飛び退き、ダガーを構える。と思ったが、目の前の相手はプレイヤーではなく、NPCのようだ。
「お見事です。そのダガーの使い方。洗練されていますね」
「…………」
NPCの名前はシャドーというようだ。
シャドーは拍手しながら私に一歩近づいてくる。
「そう警戒しないでください。私は何もしませんよ」
「と言われましてもあなたはとても怪しいので無理ですね」
「はは、ですね。まぁ、いいです。あなた、暗殺者には興味ありませんか?」
「暗殺者?」
「そういう職業です。暗殺者といっても、それは昔の呼び方の名残で今は暗殺とは呼べない代物になっていますが」
「…………」
「暗殺者はダガーを得意とする職業です。普通の職業よりとても強いんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。職業があるというのは知っているでしょう。職業にもランクというものがありまして、例えば採掘師を職業として選んだ場合、条件を満たすと採掘親方となったりします。そういうのを上位職業と呼んでいます。暗殺者は上位職業の一つなのです」
「そうなんですね」
上位職業……というのが存在するのか。
暗殺者は上位職業らしい。となると、この人が言った通り暗殺者になるのにもそれなりの条件があるはずで、私は偶然その条件を満たしたんだろう。
そろそろ職業に就きたいなと考えていたところではあったので、この提案は願ってもない幸運だ。
「なりたいです」
「ありがとうございます。では……」
シャドーさんは懐から一枚の紙を取り出した。
私に手渡してくる。
「これを職業ギルドに持っていけばあなたも晴れて暗殺者の仲間入りです。ただしなくさないでくださいね。紛失した場合、私をまた探しにきてください」
「わかりました」
私はアイテム"暗殺者の証"を受け取りしまう。
気をつけるのは帰る道中で死ぬことぐらいか。死ぬとアイテムをランダムでロストする仕組みだとシュカさんが言っていた。それでロストしてしまったら目も当てられないだろう。
シャドーさんがどこかへ消えた。
私は始まりの街の職業ギルドに向かうことにした。
始まりの街の職業ギルドに暗殺者の証を手渡す。
「はい、承りました。少々お待ちください」
職員さんが何か準備を始めて、一枚のカードを目の前に差し出してくる。
「職業ライセンスとなります。これをステータスに嵌めれば暗殺者となります」
「ありがとうございます」
「上位職業に就いた皆さんには職業装備がプレゼントされます。どうぞお受け取りください」
《装備:暗殺者の服 を取得しました》
暗殺者の服を試しに装備してみた。
忍者の衣装を参考にしているのか、闇夜に溶け込めるようなほど黒い。
私の膝くらいまであるマフラー。マフラーで口元が隠れている。
「いいんじゃないですか? 少年心が刺激される装備ですね」
ニンジャ、暗殺者。少年にとってはかっこいい響きで、黒装束というのもこれまた心がくすぐられる。
そして、この装備には特殊な効果も付与されており、素早さが+20、攻撃力が+20されるようだ。
私はステータス画面を開き、カードをはめるところにライセンスカードを嵌め込む。
すると、職業の欄が書き換えられ、職業:暗殺者と書かれた。
《暗殺者スキル:看破 を取得しました》
《暗殺者スキル:急襲を取得しました》
というアナウンスが。
効果はというと。
・看破:敵の弱点を見破る。見破った弱点に攻撃するとクリティカルが確実に発動する。また隠された弱点を見つけることができる
・急襲:ダガーに力を込め一撃を強くする。使用した後は一定期間パワーが大幅に減る。また、この技でクリティカルを出した場合、クリティカル倍率が3倍となる。
らしい。相性はよさそうだ。
それに、ダガーに補正が入ったのでダガー装備時にはダガーの威力も上がってる。暗殺者、素晴らしい。
ユメミのステータス
PN:ユメミ 職業:暗殺者
Lv29
HP:95/95
MP:70/70
攻撃力:105
防御:51
魔法攻撃力:54
魔法防御力:42
素早さ:115
装備
武器:アイアンダガー
頭:暗殺者のマフラー
胴体:暗殺者の装束
腕:暗殺者の手袋
足:暗殺者の装束
靴:暗殺者の足袋
スキル
看破 急襲




