メンバーを追加したい!
シュカさんが仰々しい顔でソファに座る。
私はその横で、クランに来ている依頼一覧を眺めていた。クランに入ってノルマはないとはいえど、さすがに所属している以上はやらないということは出来ないだろう。
「タイタンよ、腕はどうであったか?」
「んー、まぁ、少し悪化しただけで問題ねぇよ。心配かけたな」
「いや……謝るのはよせ。悪いのは我らだ」
(この依頼は簡単そうですね。この依頼をやりましょうか)
私が立ち上がった時だった。
「メンバーを増やしたい」
シュカさんがそう切り出していた。
「メンバーを? なんでまた急に」
「月が切り替わってクランランキングが発表されました。私らのランキングはぶっちぎりで下の方!」
「だな」
「原因は何か。それはメンバーの数だと思いました」
「まぁ、そうであろう。数の暴力には勝てるまい。大手のクランは上限の100人で毎日依頼を消化してモンスターの素材を交換しあったりして活気付いているという話は聞くな」
「こちらは4人、しかも私は今現在ノルマをこなせるほど暇ではないですからね」
「それはごめんなさい」
「あ、そういうことを言ってるわけではないのですが」
5週間とはいえ週刊連載を抱えたのだ。締切に追われる5週間である。決して仕事場が荒らされたから片付けで忙しいわけではない。
「多勢に無勢。数の暴力! 対抗するにはメンバーを増やすしかない!」
「は、いいがよ。定期的にオフ会はやるんだろ? 俺らは一応有名人だぜ? 顔を少し変えてるシュカ、あまりメディアに顔出ししていないしろんちゅ、ユメミはともかく、俺はリアルモジュールで作ったから顔は変えてねえし、見る人が見れば俺のことすぐバレるぜ」
「作り直せアバターを!」
「一からやり直せってか」
タイタンさんは不満げだった。
まぁ、メンバーを増やしたいという気持ちはなんとなくわかる。
というのも、役職が少ない。
「まぁ、多少なりとも入れたほうがいいのは確かですね。制作は今のところタイタンさん頼りですし、採取はしろんちゅさん、戦闘は私とシュカさんと一人にかかる負担が大きいですしね」
「そう! 採取系の依頼は全部しろんちゅ行き、何かを作って欲しい依頼はタイタン行きって負担が多い!」
「それはまぁ、たしかにな。1日で終わらねえこともままある」
「我も採掘のレベルは高いが、それ以外は平凡だ。たしかに人手はもっと欲しいか」
二人もメンバーの少なさに思うところがあるらしい。
だがしかし、二人はあまり乗り気ではないようだ。納得はしつつも、あまりいい顔をしていない。
「誘うつっても俺はあまり知らねえ奴とやるのは苦手なんだよ。シュカの頼みだから一緒にクラン作ったけどよ」
「我もシュカに誘われたから入ったまでだ。見知らぬ奴とプレイするのは少々不得手である」
「人見知りどもが……。ユメミは大丈夫だよね?」
「私は別に構いませんが……。この二人だから私はノルマなしでも受け入れられてる気がしますね。私だけ特別扱いというのは新人には受け入れられないのでは?」
「それはなんとか納得させる! じゃ、勧誘行ってくる!」
シュカさんはアジトを飛び出していった。
行動力の化身というべきか。思い立ったらすぐ行動に移すタイプのよう。
二人はすこし不安そうだ。
「まあ、人を見る目はありそうですし変な人は連れてこないと思いますよ」
「だといいけどな。お前なんて勧誘された?」
「有名人いますよと」
「それなんだよ。それを口実にしやがってるから……」
「あー……」
「それに、シュカはアバターを弄ってるとはいえど、見る人が見ればすぐに女優の朱歌だと分かるだろう。自己顕示欲が強すぎるのだ」
「まぁそうですね」
大胆に弄ればよいものを、気づいて欲しいという気持ちがあるのかそこまで変わってない。
女優の朱歌にそっくりではあるので、分かる人には朱歌だと分かる。
「止めてきますか?」
「いや、もういい。変なのを連れてこないことを祈る」
「あぁ。この選択が吉と出るか凶と出るかは神の機嫌次第だ……」




