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仕事とオフ会 ②

 シュカさんとしろんちゅさんは既に出来上がってしまった。

 頬を赤らめ、仕事での苦労話とか愚痴を垂れ流すシュカさん、気分良くなったのか歌を歌うしろんちゅさん。

 シラフである私とタイタンさんはツマミを食べていた。


「枕営業とかふざけんじゃねーよって話よねー! 年若い私にそんなことさせんなっての!」

「ラ〜ララ〜」


 隣の部屋では曼荼羅先生が言っていた通りものすごく騒がしい。

 曼荼羅先生と伊藤さんが言い争っているような声も聞こえてくる。このマンション、割と防音は良かった気もするがそれでも聞こえるあたりものすごく大きな声なのだろう。


「隣もこっちも騒がしいな」

「ですね。あぁ、そういえばなんですが、私今日オフ会だってこと忘れててつい先ほど原稿今日できると編集に送ってしまったんですよ。編集の方が来たら少し席を外しても……」

「かまわねえさ。というか、ここでやればいいだろ。俺が酔っ払い共見とくから」

「すいません」


 私はウーロン茶を口に運んだ時、何か違和感に気づいた。

 ウーロン茶の味ではないような気がする。なんかアルコール臭いような……。

 それに、飲んでるとなんか身体がポカポカしてきた。それによりなんだか気持ちも……。





 私は目を覚ます。

 目を覚ますと、なんだか部屋が終わり散らかしていた。


「……ナニコレ?」

「はぁ……はぁ……」


 地面にはへたりと座り込んでいる曼荼羅先生、タイタンさん、喜谷さん、伊藤さんの姿があった。

 隣ではシュカさんとしろんちゅさんが正座させられている。


「……?」

「正気を取り戻したようだな……」

「……あれ、私がやったんですかこれもしかして。お酒飲んだ記憶ないのですが」

「コイツらがお前のウーロン茶に酒混ぜたんだよ……」


 タイタンさんが二人を指差した。

 ダラダラと汗を垂れ流すシュカさんたち。


「……っ!」


 頭が痛い。

 酒を飲んで酔っ払った時の記憶がない。


「……芥屋先生、お酒に弱かったんですね! 今週分休めるようになりました! ありがとうございます!」

「ありがとうじゃないわ馬鹿者! はぁ〜……。編集長に怒られる……」

「な、なんだか曼荼羅先生たちに迷惑かけてしまったようですね?」

「なにがあったか説明してやるよ……」


 タイタンさんが説明を始めた。

 まず酒に酔った私は立ち上がると、椅子に乗り遊び出したらしい。すいーとキャスター付きの椅子で滑り回って、何かが気に食わなかったのか椅子をぶっ壊したようだ。

 そして、隣の騒音に気付きうるせーと怒鳴り込みにいき、私が曼荼羅先生の原稿をぐちゃぐちゃに……。


 その瞬間、私はものすごくヤバいことをしたのだと理解して血の気が引いていった。

 暴れる私を取り押さえようと到着した喜谷さんともども押さえつけてようやく眠ったらしい。ここは伊藤先生の家である。


「…………すいませんでした」


 私はなんとか声を絞り出した。

 ごめんで済んだら警察などいらないのである。


「いやはや、いいんです! ゲームできる時間が増えるので!」

「まだ言うかこの野郎!」

「うるせー! おめーに一時間制限くらってるから満足に出来ないんじゃー!」

「……伊藤さん、すいませんでした」

「気にするな。酒の失敗は誰にだってあることだ。こちらも芥屋先生にはたくさんご迷惑をかけている。これでチャラってことにしてくれないか」

「それじゃ私が申し訳ないです」

「いい。気にするな。怒られるのは仕方がない。こいつもこんな性格だし気にしてないだろ。なぁ?」

「こいつって! まぁいいですよ。むしろネタが一つできた気がします! 伊藤さん、メモするので手を離していただいても?」

「あぁ」


 それでいいのか。この二人……。


「喜谷さんも本当に申し訳ありません」

「いや、いい。前回もあったなこういうこと。あまり女性を押さえつけるような真似はしたくないから今度は気をつけてくれ」

「はい……」


 私はぺこりと頭を下げた。

 タイタンさんの方を向く。


「……あの、ごめんなさい。気が大きくなっちゃって」

「……反省している」

「酒でリミッター外れるとああなるんだなお前……」


 シュカさんとしろんちゅさんは反省しているようだった。

 私はホッと一息つこうとしたが、もう一つの心配事が脳裏に過ぎる。


「あ、私が描いた原稿は!?」

「それなんだが、原稿は無事だ。コピーしておいて良かったな。これだけは死守した」

「……これだけ?」

「君の部屋に行けばわかる」


 と、私の部屋を見に行くと、コピー機、パソコン、タブレット全て諸々ぶっ壊していた。

 私は地面に膝をつく。これ、全部私がやったのか……? 壁には傷付いてはいないが、割れたモニターの破片とかが散らばり世紀末である。


「……………………」


 被害はいくらになるだろう。

 さらに血の気が引いてくる。


「……しろんちゅさん」

「……なんだ?」

「……しばらくあなたの部屋を借りて作業してもいいですか?」

「構わぬ……。提供しようではないか」

「ありがとうございます」


 しろんちゅさんも負い目があるのか、拒否すらせずに了承してくれたのだった。

 酒は飲んでも飲まれるな。である。


「……とりあえず、原稿はもっていくな」

「さて、ここで伊藤さんと喧嘩してないで伊藤さんの部屋片付けましょうね。伊藤さんが怒られる相手が増えちゃう」

「……だな。うちの家内はおっかないからな」

「シャレですか?」

「体験してみるか?」

「遠慮しておきます……」


 曼荼羅先生たちは戻っていった。

 沈黙が流れ、そしてシュカさんは綺麗な土下座を決める。


「ごめんなさい!!!」

「いいんですよ……。とりあえず片付けましょうか。家電も大体私がぶっ壊したみたいですし……それと……タイタンさん、大丈夫ですか?」

「……大丈夫だって言いたいところだがまずいかもなこれは。無理しすぎた。わり、病院行ってくる」

「……付き添いは?」

「いらねえよ。変なスキャンダルになりそうだしなお前ら連れてくと」

「あーーー」


 男性と女性二人で行くとそうなりますよね。シュカさんはもっとダメでしょうし。

 タイタンさんが病院に向かっていった。怪我をして休養を余儀なくされているタイタンさんにとって私を止めるのはとても嫌だったでしょうに。


 タイタンさんが行ったあと沈黙が流れる。


「さて、せっかくオフ会で集まってこんな暗いのは嫌でしょう。片付けは後にしてゲームでもしますか?」

「……怒ってない?」

「私、滅多なことじゃ怒りません。起きてしまったことですしね」

「そうか……。ならばよい。粛々と静かな宴を続けようか……」


 二人とも気分がものすごく落ちてますね。

 まぁ、無理もないですが……。










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