仕事とオフ会 ①
時間が刻々と過ぎてくる。
ピンポーンとインターホンが鳴った。誰だと思うと、シュカさんたち。そういえばオフ会をわが家でやることになったんだったか。もうそんな日だったか。
私はドアを開く。
「こんちゃー!」
「よっす」
「ふむ……。インクのにおいはせんな」
「デジタルですからね」
三人を仕事場へ通す。
私は椅子に座り、再び描き始めた。
「……なにしてるの?」
「急に漫画を少し載せることになったので漫画を描いてます」
「……なぁ、寝てるか?」
「締め切りが明日なので寝てません」
「…………」
ショートスリーパーの私でも、二日間ずっと描きっぱなしというのは体力的にきつい。アシスタントを雇ってもいいのだが、アシスタントを雇わなくても速筆である私は間に合っていたので基本的に1人、2人程度しか雇わなかった。
今は手が空いてないらしく雇えなかったが……。
「すいません。くつろいでいってください」
「なんか悪いな……」
「急に決まったので言うこともできず。あ、今からお茶を……」
「いいって! 私やるよ! 台所こっち?」
三人の前にお茶が置かれる。
1時間後、私はようやく。
「終わった……。締め切り1日前になんとか……」
「お疲れ。大変だね」
「大変ですよ。しばらく私はログインできても二日間くらいです。5週載せてもらえることになったので」
「……週刊連載お疲れ。いつもこんなんなのか?」
「いえ、いつもは5日で描き終えるのですが、今回は時間が時間でしたからね。アシスタントもいませんし……。うん、導入としては文句なしですかね。明日、原稿を渡しましょう」
私は三人の前に座る。
「さ、改めて自己紹介からね! 私は女優の朱歌! よろしく!」
「作曲家、歌手の麦野 素人だ。よろしく頼むぞ」
「あー、えー、一応プロ野球選手の台田 寛二、だ。よろしく」
タイタンさんはプロスポーツ選手というだけあり、Tシャツ越しからでもわかるムキムキ加減。ゲームアバターのほうがナーフされている。
しろんちゅさんはゲームではボブで片目隠しのスタイルだったが、現実ではロングヘア。シュカさんはゲームと顔がやはり違う。面影は残しつつものすごくいじってる。本人ばれしたくないからだろう。
「漫画家の芥屋 夢見です。よろし」
と、再びインターホンが鳴る。
誰だと思うと今度は曼荼羅先生だった。
「曼荼羅先生? どうしたんですか?」
『あ、ここユメミ先生の家だったのですか!? 申し訳ありません! 隣の部屋で少々騒がしくなるかもということで断りに来たのですが! お、お困りじゃないでしょうか! あ、アシスタントとしてよければ僕が手伝いますよっ!』
「いえもう終わったので……」
『はやぁ!?』
「お気遣いありがとうございます。今少々手が離せないのでこの辺で失礼しますね」
会話をやめ、部屋に戻る。
「誰だったんだ?」
「曼荼羅先生です。隣の部屋で騒がしくなるかもと……」
「……曼荼羅?」
「ジャッツでBAKAHOを描いている漫画家さんです。以前会ったことありますよ」
「うーん……」
タイタンさんとしろんちゅさんは思い出せないようだ。
「ま、とりあえず飲むとしようか! コンビニで大量に買ってきたのだ!」
「三人でおつまみとか選んできましたー。みな成人越えてるからねぇ。あ、お酒大丈夫?」
「あー、私下戸なんです。すいません」
「意外だな」
「お酒飲めるように見えてましたか?」
「ああ」
私ってお酒飲めるように見えていたのか……。
「だったら俺とウーロン茶だな。コップあるか?」
「ありますよ。持ってきますね」
私は台所にあるコップを手に取り持ってくる。
お酒、成人になって飲んでみたことはあるけど、一口程度ならまだよかったが二口めでだいぶ酔っ払った記憶がある。お酒に弱いので、すぐに酔っぱらってしまうのだ。
そして酔っ払った際にいろいろと物を壊しまくっていた。物破壊上戸である。幸い、合併号があったおかげで1週間ほどの休みがあったからなんとかなったが、なかったら1週間だけ休載させてもらうことになっただろう。
お酒は飲んでも飲まれるな。これは常識である。




