ロッカーの幽霊
私は吹っ飛ばされていた。
窓ガラスを突き破り、落下していく。今起きたのはロッカーでぶん殴られた。
私は面倒なので壁をよじ登って復帰する。
「ドイツモコイツモ俺ヲいじめやがッテ!」
錯乱している幽霊がロッカーをぶん投げた。
しろんちゅが躱しきれずに被弾する。
「この恨み、晴らさずおくべきカ!」
「逆恨みだろテメェ!」
「逆恨み? 俺の恨みが逆恨ミ?」
卜伝先輩が突然出現したロッカーに閉じ込められたのだった。
嫌な予感がする。私はロッカーの扉をこじ開けようとするが開かない。その時だった。べこっ、べこっ、と嫌な音がロッカーから聞こえてくる。
ロッカーがつぶれてきている……。なるほど。これはやばいな。
「うぐぉおおおおおおおお!」
「卜伝!」
「あたしのことはいい! てめえらはあいつをぶっ倒せ!」
「……タイタン、しろんちゅ、そのロッカーをもって全力で離れてください」
「了解」
タイタンとしろんちゅがロッカーを持ち上げ逃げていく。
追いかけようとする幽霊。私は足払いをして転ばせた。
「いかせませんよ」
「邪魔するナァ!」
箒を振り回して抵抗。
だがしかし、二人は階段を駆け下りていったのだった。距離を取るとロッカーが解除されるのかもしれない。そして、ロッカーは一つしか出せないっぽいな。そういうのいいな。
シュカさんが幽霊を蹴り飛ばす。
「お前の恨みなんざ知ったこっちゃねえんだよー! おとなしく成仏しやがれってんだ!」
「卜伝先輩移ってませんか?」
「かも? いいんだよんなこたァ。早いとこ片付けちまおう!」
シュカさんに卜伝先輩が乗り移っていた。
訳が乗り移るというのはこういうことを言うのだろうか。
シュカさんが黒板に打ち付けられた幽霊に追撃に向かう。飛び膝蹴りをくらわせようとしているが、失敗。黒板を砕き、隣の教室へ。
躱した先に私は攻撃を置いておく。
「ウザいんだヨ!」
「それはどうも」
幽霊は私のほうに手を向けてくる。
すると、私を包むかのようにロッカーが出現した。私はロッカーに閉じ込められる。
「ユメミ!」
「押しつぶされロ! 俺のようにナ!」
べこっ、べこっ、とロッカーがつぶれてくる。
私は全力で暴れた。目の前のロッカーの扉を何度も小突く。すると、ロッカーの扉が壊れ、私は外に出される。
やっぱり壊れるんだ。壊れないロッカーっていうわけではなさそうで一安心といったところか。
「チッ」
「仕留めるよ! ”強制成仏正拳”!」
シュカさんの拳に光が集まる。
スキルという奴か。シュカさんは拳を振り下ろすが、失敗。
「アンデッド特攻スキルっていうところですか?」
「そう。どうせアンデッドでしょこいつ」
「でしょうね」
「ユメミは持ってないのそういうの?」
「私は無職なので」
「職業ついてないの!? じゃあ今までの動き補正なしで動いてるんだ……。初心者だったら無職の厳しさなんて知ってそうなもんだけど……。じゃ、じゃあパラメータ配分がいいとか?」
「……なんですかそれ?」
「……パラメータ知らない?」
「はい」
「……ステータスでパラメータを振るって見てない?」
「ステータス基本開きませんので」
シュカさんが頭を抱えていた。
私は開いてみると、ステータス画面の下にパラメータを振るという文字が表示されていた。開くと、ステータスに上乗せできるパラメータというのがあり、好きなようにステータスを上昇できるようだ。
攻撃、防御、魔法攻撃、魔法防御、素早さと五項目あり、どれに振るかによっていろいろ変わりそう。私はとりあえず素早さと攻撃に二等分し振っておいた。
すると、私の動きが変わる。ものすごく速くなっていた。
「うおっ」
「今まで何で知らなかったのそれ……」
「いいですねぇ」
いつもより俊敏に動けるようになった。
私は素早く距離を詰め、ダガーで幽霊ののど元を突き刺した。
「俊敏に動けるようになった今なら、あなたは雑魚同然ですね!」




