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山口クン、出て来いよ

 都市伝説研究部前。

 私としても是非とも出会ってみたかった部員たちと会える。

 シュカさんが扉を開くと、四人はそこに居た。


「おや? 客人のようですわよ部長さん」

「はっはー! よく来た異世界のツワモノよ!」

「部長、机の上に立たないでください」

「けほっ、けほっ」


 都市伝説研究部部長の卜伝が机の上に仁王立ち。便太がそれを嗜め、埃で透が咳き込んでいた。

 ソファに座り、透がお茶を差し出してくる。


「それで? 我が部へ来たということは七不思議についてお困りだろ?」

「ああ、一つだけわからないのがあってな」

「二宮金次郎に変わる都市伝説だ。何か知らぬか?」


「それですか。残念ながら……」と金蟻が謝る。

「それは僕たちもすっ飛ばしましたからね。それっぽい都市伝説は検証してみましたが成果は得られずです」と、便太が肩をすくめた。


「他に有名なのでいうと……なにがある?」


 タイタンが私の方を向いてきた。

 

「他の有名どころで言えば……そうですね。魔の13階段、合わせ鏡とかですね」

「それもやった。けど違った……」

「悪い、力になれねーみてえでよー。でも、ヒントはどっかにあると思うんだよなー。顧問のやつなら知ってねえかな。職員室の安楽んとこの机に何かねーか探してみてもいいだろうぜ」

「わかった! いこう!」


 三人は立ち上がった。

 私はため息を吐く。


「では私は正解の部屋でお待ちしていますね」

「え、いかないの?」

「私は場所わかってますから」


 これ以上いると私の反応でヒントを与えてしまいそうだ。

 私は三人を見送り、私は正解の教室である2年1組の教室の席に座る。背後の隅にあるロッカーが問題のロッカーだ。

 少し凹んでいるロッカー。その中から呻き声が聞こえてくる。近くに寄らねば聞こえないので走っていてもまず気づかないだろう。


 さて、ここに辿り着くためには謎解きをする必要がある。私はどう出現させるかまで知っているし、ここを探し当てたとしても私はどう出現させるかまでは教えない。


「のんびり、待っているとしましょうかね」


 刻々と時間が過ぎていく。

 10分くらい経過したとき、走ってくる音が廊下から聞こえてくる。三人と卜伝先輩がやってきたのだった。


「透が推理した場所はここだぜ!」

「正解っぽい!」

「い、いるな……。2の1ってのは正解……だな」

「あとは出現方法だ。ユメミよ、もし出現させられたら貴様は戦うのだろう?」

「もちろんです。このバトルは私も初見ですから。どういった攻撃が来るかまでは知りません」

「そうか。その言葉を聞けただけでもいい。ではやるぞ」


 しろんちゅが壁を蹴った。

 なんの反応もない。


「なっ……」

「なんも起きねえな」

「間違ってる? でもここにユメミいるし……」

「なら出現させる方法が違うってことだろう。ふむ……。どこまでが正解かはわからぬな。ユメミに頼るか?」

「教えてくれると思う?」

「ないな。解かせたいだろ」


 よくお分かりですね。

 三人は悩んでいた。そして、シュカさんが私に近づいてくる。私はとりあえず名前を確認するために卜伝先輩から髪を受け取った。

 「山口、け」とまで書かれている。ああ、ロッカーまでは行ってなかったのか。ロッカーのヒントがどこかに……と思うと、私が座っていた席を確認する。山口という名前だった。中に紙が入っているのが確認できた。なるほどな。


「ユメミ、さん。お願い。なんでもするから!」

「……わかりましたよ。あとで全員分のサインくださいね」

「俺もか?」

「はい」

「わかった。いいぜ」

「許可しよう。では、答えを教えるがいい」


 私は思い切りロッカーを蹴る。


「山口クン、出て来いよ」


 私がそう唱えると、ロッカーが勝手に開く。

 中からは、箒を手にした幽霊が出てきたのだった。












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