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プール底の悪意 ①

 プールの幽霊。

 揺蕩うプールの水面。桜木下高校には25mプールが存在している。うちの母校でもこのプールには幽霊が出るぞと噂になり、幽霊のうわさを信じたクラスメイトがプールの授業をストライキするなどのことも起きた。

 事の発端は創立してから2年目の事故である。プールの排水溝に足を取られて溺死した事故だ。プールの排水溝に足がぴったりと挟まって抜けなくなり、そのまま溺死したという痛ましい事故。


 その事故の話をそのままバックボーンにした。あまりよろしくはないために公表はしていないが気づく人は気づいているだろう。調べたらわかることだし。


「夜のプールってだけで不気味よね~……。出すために泳ぎますか」

「では」


 私たちはプールへと飛び込んだ。

 波打つプール。出現条件は25m泳ぐこと。せっかくだからと競争することになった。25m自由形。


「よーい、ドンッ!」


 装備を着たまま、プールを泳ぐ。先に手をついたのはシュカさんだった。


「私の勝ちぃ!」

「プールなんて長年やってま」


 と言いかけたとき、私の足首を誰かがつかみ、水中へと引きずり込む。

 やってきた、プールの怪異。道連れにしようとたくらむプール底の悪意。酸素ゲージが表示される。この酸素ゲージが尽きたらダメージを受け最終的には死ぬ。息継ぎは必須であり、どうにかしてこの手をまずは離させる必要がある。

 だがしかし、プール外に出てはならない。プール外に出てしまえばまた最初から。


「ゲームで助かりましたね。これが現実ならこの時点でパニックになり死んでいます」


 ダガーを装備し、私は手に突き刺した。

 痛がる手。ぱっと手を放す。プール底の幽霊はまず幽霊事態を引き上げてやる必要があったはずだ。私は幽霊の手をがっしり握り、そのまま上へ持ち上げる。


 幽霊が外へ飛び出した。巨大なウミウシの姿の怪異。無尽蔵の人間の手がウミウシに引っ付いており、その手が生者を手繰り寄せるのだ。

 これはプールの事故だけではない。他の水難事故で死んだ無念の霊の集合体である。


「うげぇえええ気持ち悪い……」

「はぁ……」


 プール外に出されるウミウシ。

 

「ドウシテボクヲ見捨テルノォ」

「助けて、助けてよォ」

「くるじい、くるじい」


 無念の声がウミウシから聞こえてくる。

 ウミウシから手が伸び、シュカさんが引っ張り寄せられる。ウミウシに口ができ、口から人間の顔が飛び出してきた。


「僕ヲ助ケテヨ」

「ぎぃやぁあああああああああ!?」


 響き渡るシュカさんの悲鳴。

 週刊少年ジャッツとは思えないほどホラーテイストにした。案の定トラウマになったって声もだいぶ多かった。七不思議で一番怖いところはここだという人が多い。


「お姉ちゃん、身体、ちょうだい」

「お姉ちゃん」

「お姉ちゃん」

「ユメミーーーーーっ! 助けてッ! ひぃいいいいい!?」

「了解です」


 私は弓矢でウミウシを貫いた。


「シュカさん、プールの水栓を引っこ抜いてください」

「…………」

「私がやりますね」


 私はプールの水栓を引っこ抜く。

 引っこ抜く理由は帰らせないため。地上に引っ張り出して戻られたらまた最初からになる。それを防ぐために、引っ張り上げたら最初に水栓を抜く必要があったのだ。

 シュカさんは恐怖で動けていない。私はシュカさんを守りつつ、ウミウシをプールへ戻さないように必死に妨害。


「ドウシテ、ソンナヒドイコトヲするの」

「ひどいこと、ひどいこと」


 私はダガーで着々とダメージを与えていく。

 怨念が強いほど、強い怪異になる。水難事故で死んだ無念の集合体であるこのウミウシは七不思議でも1、2を争うほどの強さを誇る。

 作中では卜伝先輩の攻撃もそこまで効いていない。


「そんなにビビってくれて作者としては狙い通りでうれしいですね」

「…………もう一人でトイレいけない。お風呂も」

「ですね。水回りには幽霊が集まりやすいという話もありますし」

「そんな情報追加しないでよ!」












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