vs人体模型
3階理科室。
薄暗い室内。電気のボタンを押すと光がぱっと灯る。理科室の奥の理科準備室に、問題の人体模型があるのだ。
理科準備室の鍵は解放されており、人体模型を引っ張ってくる。人体模型との戦いの仕方はというと。
「朝ですよー」
と呼びかけるだけ。
はっと人体模型はぱちくり目を覚ますと、起き上がる。
「っておい! 夜じゃねえか! さてはお前ら、俺と遊びたくて起こしたな?」
「…………」
「あ、違う? じゃあなんだ? 俺の浄化か? ははーん。人体模型が怖くて俺を浄化しようとやってきたわけだな? ならばいいだろう。ただし、勝負で俺に勝ってからだ!」
人体模型は廊下に出ろと告げる。
「俺が提案する勝負は、校内一周かけっこだ! ここに俺の肺を置いておく。これがスタート地点でゴール地点! 校内をグルンと一周して戻ってこい! 俺が負けたら俺は浄化されてやろう!」
「原作でもこうだったね」
「では位置につくがいい! 全員参加だ!」
私たちはスタート位置につく。
人体模型は早い。だからこそ、原作では妨害ありきでようやく勝てた。フィジカル最強の卜伝先輩を走らせ、残り三人は能力を使って人体模型の妨害。
だがしかし、もっと簡単な方法が一応設定としてはあるのだ。
「よーい……ドン!」
人体模型の合図の元、私たちは走り出す。
この設定は運営の人に伝えているから実装されているだろうと信じて。人体模型はびゅんっと俊足で会談を下っていく。
「はやっ!」
「妨害しないと勝てないなこれは」
「いや、そうでもないですよ。戻りましょう」
「え?」
私は三人に戻る提案をする。
私を信じて戻る三人。ゴールより少し手前に私たちは立ち、人体模型がやってくるのを待っていた。
そして、ドタドタと走ってくる音が聞こえる。人体模型が階段を駆け上がってきたのが上から視認できたので、私たちはそこから全力で走りだす。
人体模型が後ろから走ってくる。私は全力で走り、ゴールをまたいだのだった。
「負けたーーーーーーーーーッ!」
人体模型は滑り込む。
そう、人体模型はバカである。ずるをしたことに気づかない。だからこそ、見えない位置まで行ったら戻ってゴール手前で待つだけで普通に勝てるのだ。
これはマジで言われなきゃわからないずるである。
「え、いいの?」
「なんでだ」
「…………」
「人体模型はバカですからね。こういう設定にしてるんです。人体模型さん、私たちの勝ちです」
「あぁ……。約束通り、俺は浄化されてやる。だが、浄化されるんならド派手にな! うおおおおお!」
人体模型はなぜか置いてあった火薬をパクパク食べ始める。そして、マッチを手に窓から飛び出し、マッチで自分の身体に火をつけた。
その瞬間、夜空に輝くどでかい爆発が起きたのだった。美しい芸術、人体模型は人を襲うことはなかったのだが、不気味であることには違いなかった。そんな不気味が最後に巻き起こした綺麗な爆発。
「これ以上美しいものは存在しないでしょう」
「マジで言ってる?」
「納得感がないな……。勝った気がしない」
「原作の設定だから仕方ないがな」
さて、次である。
「次は1階音楽室ですね。行きましょう」
「うーーーーーん……」
この設定は余計だったか?




