トイレの花子さん
まずは2階女子トイレ。
トイレの手前から三番目の個室の前に私たちは立っていた。
女子トイレでの怪談はトイレの花子さん。設定としては、空襲で学校に避難していた際、母親から遊ぼうと言われてトイレに来たはいいものの、母親がトイレで花子さんをトイレに突っ込ませて殺したという設定である。
タイタンさんがドアをノックする。
「は〜なこさん、あっそびーましょ」
「は〜なこさん、あっそびーましょ」
「は〜なこさん、あっそびーましょ」
私たちは呪文を3回唱える。
すると、トイレの個室から声が聞こえてくる。
「い〜い〜よ〜……。赤い紙、青い紙。どっちで遊ぼっかぁ〜」
「「「「青い紙」」」」
「ケケケケ!」
花子さんの怪異がトイレの個室のドアを突き破りでてきた。
白い服に赤いスカート、顔は人間とは思えない化け物の顔。花子さんの手には錆びついた包丁が握られている。
「間近で見ると不気味……」
「ホラーですからね。シュカさん、戸惑ってる暇はないですよ。戦闘は私たちの役割です」
「そ、そうね!」
シュカさんは拳を構える。
トイレの花子さんが初遭遇の怪異というわけではない、が、主人公が異能の力に目覚めた初めての怪異である。
トイレの個室に追い詰められた主人公は、必死に逃げようとしていた。その時、力が目覚める。こういうシナリオだった。
3人には異能があったが卜伝先輩にはない。彼女はもともと除霊体質で怪異に対しての攻撃手段があった。
主人公が善戦していると、横から卜伝が花子さんを殴り飛ばし倒したというお話。
シュカさんは卜伝先輩そっくりだなぁ、なんて思ってしまった。
「原作っぽい! 私トデン先輩じゃね!?」
「そうですね。同じことを思っていました」
「実写化があるなら私にオファー来るかなぁ。喜んで受けるのに〜」
「そういう話あるのかわかりませんが、早いところ片付けましょう。一応タイムアタックですので」
「そうでした」
シュカさんは花子さんの懐に潜り、腹部にアッパーカット。
よろけた花子さんに私は追撃。ダガーを突き刺した。ゲームだから都市伝説パワーと呼ばれる異能がなくても攻撃は通る。
「ナンデナンデナンデナンデ! オマエラウザイ!」
「耳につんざく喚き……! うるっさ……」
「私ト遊ベヨ! ミンナ死ンジマエ!」
うるさい喚き声。
原作再現である。殴り飛ばされた花子さんは卜伝先輩に喚き攻撃しようとするが卜伝先輩のフィジカルが化け物なのでぶん殴られた。
「うるせぇえええええ!」
シュカさんが花子さんの顔面を思い切りぶん殴る。
花子さんは窓を突き破り外まで飛ばされていったのだった。
そして、シュウウウと体が黒ずんで消えていく。それは都市伝説の解決を意味していた。
(ここまでリアル卜伝先輩を再現できるとは。これ狙ってやってたんですかね? こわ……)
「いよっし! まずは一体目! トイレの花子さん撃破ー!」
「流石だな」
「ふははははは! 次はなんだ? 次はどこへいく」
「次は理科室の人体模型が近いですね」
「……あれ見ただけで嫌なんだけど」
「次の人体模型は俺らも参加出来そうだしやるか」
人体模型か……。たしかバトルはバトルでも異色なバトルにしたはず。
女子トイレを出て、3階理科準備室へ向かうことになった。実は私が新たに設計したモンスター……もとい怪異の方が近いのだが、それは秘密である。




