レイドバトル:ドラゴン 終わりまして
レイドバトルもそろそろ大詰め。討伐までの道筋が見えてきた。
ドラゴンの残り体力は2割。プレイヤーは多数死んではいるが、リスポーンして再び舞い戻ってきている人も多い。
「くそー、一回死んじった」
シュカさんがいつの間にか隣に立っていた。
「残り2割! やったるでぇ!」
「どんなキャラしてるんです?」
「うおおおおお!」
単騎で向かっていくシュカさん。ドラゴンの前足にはじかれる。
「ひでぶっ」
死んだ。
シュカさんにもマンダラ先生と似たようなものを感じる。人生がギャグというか……。そういうのは私は大好きだ。
「なんだあの人……。すぐやられた……」
ガッツさんたちもドン引きしていた。
あれで子役時代から活躍している超有名女優だとは思うまいて。顔はがっつり変えておらず、よく見れば女優のシュカさんだということにはわかるぐらい残してあるのだが、ああいう風に刹那的に死ぬと顔の確認とかはまず無理だ。
「とりあえずやりましょう。緊張が今のでほぐれました」
「それフォローしてるつもりなのか? 面白い死に方ですって言ってるようなもんじゃないかそれ」
「まぁ、いいじゃないですか」
ドラゴンの体力が削れていく。
HPゲージも、見えないくらいにはすでに削れていた。あと数回、攻撃を叩きこめばこちらの勝利である。
最後の一撃、誰が決めるのだろう。
(願わくば私が最後の一撃を……!)
私は思い切り飛び上がり、ダガーをドラゴンの顔に突き刺した。
その瞬間、ドラゴンが動かなくなる。そして、そのままドラゴンは倒れ、塵となり消えていく。
「や、やりました……」
ドラゴンが倒れたことを目撃し、一瞬の間ができた後、周囲には歓声の声が響き渡る。
「やったな!」
「ラス1羨ましいな」
ガッツさんとユラッツさんが私の肩を叩いてきた。
ドラゴンを倒した経験値ががっぽり入って、私のレベルが30付近まで上昇。そして、ドラゴンの鱗などの素材が全員に配られたようだった。
これでワールドクエストはクリアだ。アナウンスが直後に流れる。
クリアしたことよりも、ドラゴンを倒したという達成感のほうが大きい。あの巨大なドラゴンを、プレイヤーが協力して倒した。それが何よりの報酬。
(強大な敵をみんなが一丸となって協力して倒した。いいですね。少年漫画っぽいです)
周囲の喜びを見ていると、突如として私の脳内に衝撃が走る。
次回作の構想、思いついた。私はログアウトしますとシュカさんにメッセージを送り、ログアウトした後自分のデスクの前に座る。
題材は決まった。ファンタジーなのだから世界を見せたいという願望もあり、主人公は旅人にしようと。ファンタジーといえばドラゴンとかなのだが、ドラゴンが主人公を目的に襲ってくることはほとんどなさそうなので、こちらから出向く理由がいる。
だから旅人。記憶喪失の旅人が立ち寄った町の依頼をクリアしていくというもの。ドラゴン討伐からなにからなにまでやるようにしよう。
細かい設定は後回し。喜谷さんに見せ、連載会議に回してもらえるよう3話分の原稿を作り上げてしまおうか。
「私は天才ですねぇ! これは連載間違いなし! あと細かい設定は描きながら考えましょう!」




