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不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。  作者: ちょすニキ


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人騒がせな男

 「では報告を⋯⋯⋯⋯」


 会議室での出来事。

 コの字型テーブル着席している数人が順番に成果報告をしていた。


 それぞれの店舗重役責任者が話している中、現在は最後の総括であるガスパルが締め括ろうとしていた所だった。


 片肘をつき、ガゼルは指で机をトントン退屈そうに重役数人が話す報告を黙って聞いていた。


 「と、現在の懐はこのような⋯⋯⋯⋯」


 「退屈だ」


 「⋯⋯は、はい?」


 「ガスパル。俺は言ったはずだぞ?帳簿を見れば分かることを一々俺に伝える必要はない。ウチの情報担当に言えばどうにかなる事だからな。

 俺がわざわざ報告会を作ってまで開いたのは、トラシバ、そしてカルデアで比較した時の客層の違いや商品、傾向、数字だけでは表しきれない現場にいる者の情報と結果だ。お披露目会がしたいならここまでしなかった」


 「も、申し訳ありませ⋯⋯⋯⋯」


 「何度言ったらわかる?謝罪は俺の前では一切いらない。行動で示す⋯⋯。 俺が上でいる限りはそれを頭のすべてに叩き込め」


 「も、は、はい!!」


 「⋯⋯それで続きは?」


 

***



 裏で進めていたトラシバ、カルデア担当の飲食店⋯⋯"居酒屋ラクテン"


 子どもたちに叩き込んだ接客、現場判断能力、記憶力、コミュニケーション力、人身掌握術。


 まだまだあるが、ガゼルを始めとした情報と基本接客となる基礎を埋め込んだ少年少女たちのレベルはこの異世界という枠組みでは最強と言っても過言ではない。


 「全店舗での評価、SSでございます」


 「よくやった!結果を一番残している場所へは他のところとは別に追加報酬と新たらしい教材を送ろう」


 "ありがとうございます"と、重役の一人が席を立って綺麗なお辞儀をする。


 「情報はどうだ?上手いこと運んでいるか?」


 「全店舗の総集した報告書は既に情報担当のあの方に提出済みです」


 「そうか。変わったことなどあるか?俺が一番知りたいのはそこだ」


 「注意を張って取り組んでいることですが、今のところ目立った情報はありません。ただ⋯⋯」


 「ただ?遠慮する必要はない。細かな情報が必要だ」


 「最近どうやらガゼル様の噂、奴隷の方々がC級ダンジョンを踏破した事での話が至る所から出ている形です」


 「何だ、重要な話だ。前向きな方なのか?」


 「はい、しかし一部勢力があまりよく思っていないようです」


 「だろうな。何処だ?」


 「カルデア領主の息子、オリアン・フゥン・カルデアです」


 「ほう⋯⋯」


 ガゼルは煙草に火をつけてまたも指で机をトントン叩く。


 「最近ストレス値がとても高まってしまってな」


 「⋯⋯はっ?」


 「決めた。ソイツ破滅させるぞ」


 ピクニックに行こうと言わんばかりの軽口である。全員の目付きは本気かと言いたげに下を向いた。


 「よし、事を急げ。詳細は追ってアイツから行かせる」


 その場にいる全員が大きな声で返事を返し、会議は締め括られた。

 

 「ガゼル様!」


 誰もいなくなった会議室に残ったガゼルにガスパルは尋ねた。


 「実は折行ってご相談が⋯⋯」


 「おー、どうした?」


 「先程は報告でしたので別件なのですが、店舗を増やす事はお考えでしょうか?」


 「今の所は全く無いが、増やしたいのか?」


 「いえ!ガゼル様の意向をただ私どもは付いて行かせていただくのですが、従業員がかなり優秀な者が多く、大半の従業員が余ってしまっている状態なのです」


 「おぉ、それは考えていなかったな」


 子供の習得レベルの早さを侮ったか。


 「確かにそれは早急にどうにかしないといけない問題だな」


 「もし可能でしたら、ウィーレェンの方に置かせてはいただけませんか?」


 「理由は?」


 「大陸でもウィーレェンは珍しい人脈、海の街ならではの物品や食物があります。早い段階で手を打つ必要があるのではないかと弟と考えておりまして⋯⋯」


 少し外を見ながら考えているであろうガゼルは小刻みに頷く。


 「準備や市場調査は終わっているのか?」


 「はい!すぐに本腰を入れる事は可能でございます」


 「追加の話も追って連絡させるから、決定のつもりで進めろ」


 「はっ!有り難きお言葉でございます!」


 バタン、とガスパルが会議室から出ていくと、ガゼルは煙草に火をつけた。



 さて、教えてやる異世界人ども。


 一吸いして机に足を交差させて乗せ、上に向かって細く煙を吐く。


 「魔法なんて無くても、幾らでも手があるぞ?」


 悪魔の笑みを浮かべガゼルはこれから訪れる災害の被害者の事を思い浮かべて心の底から嘲笑っていたのだ。

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