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不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。  作者: ちょすニキ


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54話 マイホームを買いました

それから一週間。


俺は商業ギルド、そしてそれ伝いの不動産業者を巡った。

⋯⋯理由は一つしかない。


俺を含めて8人もいるのに、クソほど狭ぇ家で過ごすのがだるかったからだ。


トラシバの街は田舎の中じゃ都会寄りらしく、少し値が張る金額ではあったがマッチの売上で難なく買えた。


 いくら外でやるっつっても、税金とかその他費用が街に行かないのは俺としても困る。

 そんな街がどうなるかなんて想像しなくてもわかるから。


 商業ギルドに行ったときは大層喜ばれたよ。

ミーシャと久しぶりの再会もあったし、「定住していただけるんですね!?」と前のめりだった。


そんであの顔は中々傑作だったな。

「またぼったくるのか?」なんて、笑いながら冗談で聞いたら、顔面蒼白で平謝り。


まぁ、手数料は多めに取りたかったらとってもいいとは伝えたがな。


あれは俺も『言霊契約魔法』が何処まで使えるのかを実験的に使いたかったからあえてやったまであったわけだし。


 そんで買った土地なんだが、広さは100坪と少しくらいだったはずだ。

 まぁ持っている資産を考えればまぁ貴族くらいの家は全財産ないくらいで買えたと思う。


しかし当たり前だが数十人が活動できれば良い訳だからこれくらいでも構わない。


それに⋯⋯今の俺には渚と魔法の併用技がある。

アルから貰ったゴーグルゴーで基本となる属性魔法はすべて回収した。


この間も使ったとおり、土魔法と渚の併用をする事で、一瞬でデカイ城を一つ建てることに成功した。


とにかく部屋を20以上用意し、地下室には何かと必要な鍛冶や素材の保管庫用に作ったり、応接間やその他商売に必要なモノなんかも含めて全て揃え、今の所できる自分の最高の状態。


これなら少しは変えられるだろう。


そんでーー家も買ったし、あれ程あった金も⋯⋯まぁすっからかんに近い状態だ。俺からすればな。



""⋯⋯じゃあどうやって金を稼ぐのかって?""



エリクサーを裏ルートで出す?


それとも武器やポーションを作ってギルドに納品するか?


はたまた冒険者としてダンジョン攻略でもして短期的に常人以上の金を稼ぐ?



"お前らならどれをやる?"



ちなみに───俺は迷わない。

そしてこう答える。


⋯⋯と、言いたいところだが、それを言ってしまったら何も面白くない。


近い内に大金を回収する。

とんでもなく大きい金を。



           ***



「ご主人様〜」

「うーん」

「起きてください〜」


セレーヌがガゼルの身体を揺らす。中々起きないガゼルだったが、2分ほど揺らしたら流石に起きた。


「おはよう、眠っ」

「おはようございます、ご主人様」

「あぁ、おはよう」


そのまま下へと降りると、この間と同じように壁沿いに並ぶ奴隷たちの姿。

しかしアリスとミウだけは食事の配膳をしていて並んではいなかった。


「おはようございます!ご主人様!」


男性の張った声に次いで女性3人も続く。


そんな光景を見たガゼルは、「朝からなんだ?」と豆鉄砲でも食らった表情で階段から眺めている。


並ぶ奴隷たちの先頭にいるのは唯一の男性奴隷あるガルという男。


年齢は23歳。

元冒険者として活動していたが、仲間達とのトラブルや金銭的な理由から奴隷に落ちるしか選択肢がなくなんとかそれで凌いだという。


性格はドが付くほど真面目で、何事も一生懸命という言葉が似合うような男だ。


明るいブラウンに短髪。

誠実さも感じる見た目は営業なんかをさせたらいい線行きそうな見た目だ。


次に18歳組で名前をミカエラとリズという。

⋯⋯まずミカエラから。


セレーヌと似た感じではあるが、年齢も加算されてかなり大人びた雰囲気がある。


ロングヘアーのクール女性かと最初は予想していたが、恐らく奴隷として長いのか、その日の夜に寝室まで「役目を果たしに」と来た最初の女性だった。


次にリズ。

桃色で肩に付くくらい長さで、日本にいたらちょっとギャルっぽい雰囲気があるかな?


リズも少し遅れて初日に部屋へやって来た。


そして最後に15歳組のミーズ。


水色のロングヘアーだが、ツインテールが気に入ったらしく、常に同じ髪型になった。


買ってすぐにでも元気な発言や行動があってツインテールと元気っ子はかなりの相性の良さだ。


これら四人が新入りの情報だ。



「はいはい、そんな準備しなくていいから」


ガゼルは脱力している片腕を上げながら止めるように勧める。


しかし、ガルは全く直そうとしない。

他の三人はガゼルの対応にどうするべき迷っている。


「いえ!恩人でもありご主人様です!そんな不遜な態度でいる訳にはいきません!」


全く引く様子を見せないガルとその横で迷う三人。


'頼む、迷ってくれお前ら。⋯⋯俺も困る'


「まぁ仲良くやっていこうぜ〜?ウチはそんな畏まった対応されても困るよなぁ?ミウ?」


近くにいたミウがガゼルの足元へてくてく向かい、頭を出しては撫でるガゼル。


「ご主人様!?」


「あり得ない」と口から漏れ出そうなほど驚愕しているガル。


そんな光景に信じられないと疑う三人と、キッチンから完全に呆れてながらもガゼルをチラチラ見ているセレーヌ。


しかし何処か笑っている素振りを見せていた。

そのままガゼルは椅子に座り、目の前にある朝食を食べ始める。


「そうそう」


食べ始めてしばらく経ったあとにガゼルが気付いてフォークを置いた。


「今日は全員にお知らせがあります」


笑いながらそう言うガゼルの言葉に、全員の顔が思わず強張った。


やっと来たか。

この一週間、本当に何もなかった。

やっと本題だ、これか、何をされるのだろうかと。


そんな事を考えていそうなのを感じ取ったガゼルは軽いノリで「違う違う」と誤解を解く。


「売るとかそういう話じゃない。てか、いつまで立ってんだ?早く座れよ」


そんなガゼルの言葉に、更に全員が困惑する。


「今度は何を言ってるんだ?」と。

奴隷が普通に主と同じ目線で飲食をとる?


彼らの頭の中は、


"控え目に言って頭がイカれている"──。


ガゼルに対して初めて抱いた印象がそれだった。


「ご、ご主人様?」

「ん?」


ガゼルが顔を上げる。


その表情は自分達が聞いた言葉を間違えたのかと奴隷たち一同は錯覚した。


「失礼ではありますが、もう一度仰って頂いても?」

「あァ?なんだよ。早くお前らも座って飯を食えよ。何いつまでも突っ立ってんだよ」


今度は面倒くさそうにガゼルがそう言い放ってから、フォークを手にとって肉に刺して口に放り込む。


対して新入り奴隷たちは時が止まったように微動だにしなかった。


「おい?死んだのか?」

「いっ、いえ⋯⋯我々は奴隷でーー」


聞いていた中でも、一番リアクションが大きかったのはガルだった。


ガルは思っている事を口にした。しかし途中で割って入られる。


「んなことどうでもいいからさっさと飯を食え。

なんだ?人は飯を食わなきゃ死ぬ。

水を飲まなきゃ死ぬ。

よく寝ないと死ぬ。

主人の為を思うんだっ たら体調管理は大切だ。「自分達は後?」いつ飯食うんだよ。この後すぐ仕事だぞ?そんなんで体調終わらせて働けない方が問題だろ。

ウチはこういう所だから、遠慮なんてするな。ウチは決まりさえ守れば基本平民と同じ扱いだ」


絶句だった。

ガルは一言たりとも言葉を返せなかった。


言われた通り並べられている席に座る奴隷たち。


「あ、そうそう。今日か明日か、多分明日だな。家を買ったので引っ越します」


「え?」とその場にいた奴隷たちが固まる。


「何驚いてんだ。人増えたんだから新しく買うのは当然だろ」

「いえ、そこまで気を遣っていただく必要はーー」

「ガルくん、ベッドで寝ないと疲労は取れません」

「それは!」


席を立ち上がるガルだったが、いいタイミングでガゼルはご飯を食べ終わり、手を合わせた。


「ごちそうさまでした。いやぁ〜食った食った」


そう言うガゼルだったが、頭の中は全く別のことを考えていた。



'今後俺の名前と商店はすぐにこの大陸全土に響き渡ることになるだろう'


しかし、俺はこの大陸の事について⋯⋯子供よりも知らない。


コイツらの言う通り、奴隷の価値やダンジョン、魔法、職業、スキル、まだまだある。


だが一番は──"情報"だ。


 俺はかつて日本で⋯⋯いや、世界中で知らない事はないほどの情報力を有していた。

 頭の中にあるのではなく、いつでも得る事のできるという意味だ。


数え切れないほどのジャンルの店を経営し、俺の代わりを立てて何百もの店を広げた。


ITから飲食、介護までも。


今のように平和な時代じゃない頃から情報戦はあった。


現代であれば⋯⋯特殊部隊による情報収集。

そして昔であれば⋯⋯忍者や変装した平民のフリをした者とかな。


 俺は海外で情報を集める時、あえて貧困者を集め、酒場や人がリラックスする場所に人を導入して日常的に些細な情報を全て記録させた。


勿論、貧困に苦しむ人だけではないが。


 そして俺はこの異世界でもーー大陸全土の情報をリアルタイムでなんでも得る為の軍隊を作る。


情戦部隊──。


かつて俺が作り上げた情報のプロフェッショナルを集めた部隊の名前だ。


だが今は大陸全土じゃなくていい。

この国だけでも⋯⋯情報が得れればいい。


その為には、人材が必要だ。


「少し俺は買い物に行ってくる」

「ご主人様、護衛が必要です!」


ガルが立ち上がって抗議するが、ガゼルはガン無視。そのまま家の扉に手を掛けた時にやっと口を開いた。


「ガルちゃんはご飯を食べて用心棒のお仕事ね」


ガルの寂しそうな顔に少し笑いながらも、そう言ってガゼルは外に出掛けた。

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