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第5話 カブリオレ初陣

 カブリオレが出航してから一日が経過した。

 現在、一行がいる地帯はかつて大規模で長期に渡る戦闘が起こった場所で下の荒野には兵器の残骸などがガラクタのように散らかっていた。中にはまだ内部エネルギーが生きている物もあるので注意して進まなければならないし、この地帯を進むにはある程度のリスクを覚悟しなければならない。

 とはいえ、ここに配属された操舵士はそんなヘマはしないし、そのリスクさえも跳ね除けるほどの性能をこの艦は有していた。

 だが全ての艦がそういうわけでもなく、だからこそこの地帯を進むことはこの艦の存在をガロンまで極力伏せなければならないということに関しては有効的と言えた。

 ここから更に一週間ほどの旅が続く。アイリスは何度目かの艦の装備関連の項目をチェックし終えた時だった。ブリッジに警報が鳴り響く。このアラートは敵の接近を知らせる物だ。実戦でこの音を聞くのは初めてだ。

 クルーが告げる。

「センサーに反応、戦闘レベルの魔力を感知!」

「敵WS接近! 数、七!」

 大型モニターが空中投影され、アップで映し出される。そこに映し出されていたのは深緑色のWS。データに無い新型だ。

 -―来た。

 アイリスは敵の姿をその目で確認し、心臓の鼓動が僅かに跳ねる。

 自分が試される時がついに訪れたのだ。

「総員、第一種戦闘配備。各Xシリーズ、発進してください」

 目を開く。

 集中する。

 今この瞬間から、この艦の命は自分の手に委ねられたのだから。


 □□□


 トタス・ジェイスルーは新型WS『ヴァラ』頭部センサーで捉えた敵の姿を視認していた。

 この世界の艦では一般的な大車輪の付いたタイプの陸上戦艦。見た目こそ普通の陸上戦艦となんら変わらない。だが、あの艦が新型の実験艦であるということと、搭載されているWSは驚異の戦闘力を誇っているという事を彼は忘れてはいなかった。

「獲物はもうすぐそこだ。各機、油断するなよ」

 部下たちからの返事を耳に入れると、彼自身は機体を先行させた。


 □□□


 メインハッチが開いてゆくその光景をハルトが見たのは約十ヶ月ぶりだった。この艦に乗り込むまでは戦艦から発進することに関しては無縁だった。デスゲーム時代には幾度も見たこの光景も久々に視界に収めると新鮮でもあるし、懐かしくもある。

 WSは走るにしても飛ぶにしても魔力と言う唯一のエネルギーを消費する。よって、最初の出撃はカタパルトで機体を射出することで戦闘区域までの移動時に発生する魔力の消費を極力抑えるのだ。

 カタパルトが足に固定される。

 システムオールグリーン。

 進路クリア。

「ハルト・アマギ。『タケミカヅチ』、アクセラレーション!」

 カブリオレから射出された『タケミカヅチ』は漆黒の弾丸と化して七機のWSたちへと突き進む。確かあのWSの名称は『ヴァラ』。ゲーム時代に幾度かやりあったことがある。

 とはいえ、相手の――パイロットの実力は未知数。油断はしない。

 空中で対艦刀『夜桜弐式・・・・』を抜きながら敵に斬りかかる――が、流石にそのまま斬りこませてはくれず、背中のバックパックに搭載されたミサイルを打ち出してくる。

 爆発。

 ミサイルが直撃したそのすぐ後に、『タケミカヅチ』は煙を切り裂いて飛び出してきた。敵は視認出来なかったが、ミサイルが直撃する瞬間に『A.I.P.F.』を発動させ、攻撃を防いだ。エネルギー消費を最小限に抑える為に発動は最小限だ。

 漆黒の刃が襲い掛かる。

 それを見越していたかのように『ヴァラ』は腕に搭載された刃、『アームブレード』で受け止める。火花が散り、両機が飛び退く。

 だが直後に『ヴァラ』が飛び出してきた。今度は腕のブレードではなく、手に搭載されたメリケンサック型のブレードである『PRB』による右ストレート。

 どうやら腕には動きを加速させるための小型バーニアが幾つか搭載されているらしく、それが碧い炎をふかしながら右ストレートの動きを加速させていた。

 だが、見えないほどではない。

 デスゲーム時代、『W』と呼ばれる過去最強最悪の敵との経験を積んだハルトにとって、早いと思える程ではなかった。

 頭部を少し横にずらすだけで回避。

 そしてバックステップで後退しながら通信回線を開く。『ヴァラ』の性能がゲーム時代と変化していないことを確認してから腕のバーニアによる加速攻撃などの情報を他の三人にも伝えていく。

「りょーかいっ!」

 空中で変形し、戦闘機状の飛翔形態となった『アマテラス』が空を裂く。同タイプの『キオネード』が可変能力に加えて近接能力を伸ばした機体であるならば、モネの駆る『アマテラス』は射撃能力を伸ばした機体であるといえる。

 機体両サイドに装備されている『コンヴァージェンスライフル』はショートライフルに比べて威力も高いし、モードを切り替えることによってショートライフル並みの威力のものを連射することも可能だ。

 そんな『アマテラス』が空中から一機の『ヴァラ』に狙いを定める。

 撃つ。

 夕焼け色の機体から放たれた閃光は見事に敵の胸部――コクピット部分を撃ちぬくことに成功した。

 深緑色の巨人が爆発の渦の中に呑み込まれるや否や、今度はモネの機体の背後から更にもう一機、飛翔形態の『キオネード』が飛び出してきた。この純白の機体が持つのは『コンヴァージェンスライフル』ではなくショートライフルの方である。

 これは『タケミカヅチ』にも言える事ではあるが、通常の『コンヴァージェンスライフル』とショートライフルの違いはライフルの銃身の長さとライフルそのものの威力である。

 ショートライフルは通常のライフルと比べると威力も劣る代わりに銃身が短いので近接戦闘時においてとりまわしが良いという点だ。

 相手との距離が近くなると銃身の長いライフルは使えない。だが逆に銃身が短いショートライフルは近接距離であってもその性能を存分に発揮することが出来る。

 そして可変能力における利点も『アマテラス』と『キオネード』とでは違う。

 というのも、『アマテラス』が空中からの一撃離脱という点で、『キオネード』の場合は敵に接近することである。飛翔形態の高機動力を活かして接近し、瞬時に人型形態へと変形。その後、一気に近接ブレードで敵を斬り伏せる。

 そのコンセプトを実行すべく、飛翔形態のまま敵の銃撃を掻い潜り距離を詰めていく『キオネード』。当然のことながら『コンヴァージェンスショートライフル』による牽制も忘れない。

 一瞬にして敵との距離を詰めた可変機は変形して純白の巨人が大地を踏みしめる。だがその瞬間にはもう白いWSは剣を構えていた。刃が純白の光を放つ。

 刃の形をした魔力の粒の一つ一つが音速の速さで振動し、切断力を高めているこの現象、『マナ・ソニック』。

 この振動時におけるメリットは敵の魔力構成を崩壊させることにある。

 WSは起動時に機体表面防御術式が張り巡らされている。言うなればそれは魔力の鎧で、『マナ・ソニック』は振動によってその鎧を構成している魔力の粒の塊を崩壊させ、崩れさせやすくし、結果的に切断力を向上させているのだ。

 その結果として。

 深緑色のWSは次の瞬間にはもう、鉄塊と化していた。

 これで、二機目。

 残り五機。

 突如として襲撃をされたものの、戦闘そのものは順調と言えた。そのおかげか、ブリッジのクルーたちも落ち着いて仕事をこなしている。だがそんな中アイリスは一人、眉間に皺をよせていた。

 順調なのに、だ。

 そう。順調なのだ。

 だから、彼女は不安になるし、疑問に思う。

(おかしい……順調すぎる……)

 戦闘そのものが順調であることは喜ばしいことだ。だが相手の行動を見る限り、どうやらこちらのルートは読まれていたらしい。もしくは、この街を出た時から見張られていたかだ。

 どちらにせよ、相手はこちらを襲撃することは既に以前から考えられていたのだが――だとすれば敵の登場の仕方そのものがおかしい。襲撃といっても敵は真正面から突っ込んできただけだ。

 もし自分が相手の側なら、敵の戦力を把握した上で(街での一件もあるので敵はこちらの戦力を大方、把握できていたと考えてもいいだろう)このような愚作はとらない。真正面でぶつかれば『A.I.P.F.』や『飛行能力』を有したWSには勝てないからだ。いや、敵の新型にはそれらの性能を有した新型実験機と真正面からパワーゲームをしても勝てるという自信があったのだろうか。

(……いや。ありえない、とはいかないまでももっと別のケースを想定しておいた方が良いのは確か。なら、私ならどうする?)

 まず一番に視るべきはこの荒野。地形。

 考える。

 思案する。

 思考を重ねる。

 そして。

「……! 『A.I.P.F.』をフルパワーで発動!」

「は?」

「急いでください!」

 と、クルーの一人がアイリスの唐突な指示に対して疑問をもつが、アイリスの剣幕に大慌てで艦に防御フィールドを展開する為の操作を行う。

(遅い……!)

 アイリスが心の中で呟くと同時に、『カブリオレ』の周辺の地面が突如として爆発した。ワンテンポ遅れて、『カブリオレ』全体に『A.I.P.F.』が展開される。

 展開が少し遅れた為に爆発の衝撃を横っ腹にくらう形となったが、幸いにも損害は軽微で済んだ。いくら『カブリオレ』といえどもこれだけの爆発――ただの爆発ではない。術式と魔力をしっかりと練り込んだ大規模爆発魔法の一種である――を全てまともに浴びればタダではすまなかったであろう。

 だが、安心はできない。

 何故なら彼女は知っていたからだ。いや、知っていた、とはいえないが、言うならば予測していた。

「次が来ます! 『A.I.P.F.』を維持しつつ『MA2』の加速率を83%にし前進!」

 加速率――つまり、魔力を生み出す速度を上昇させると共に膨大なエネルギーを得た『カブリオレ』は加速していく。だがそれをさせまいと、次の爆発が襲う。中から出てきたのは、

「新たにWSの反応を確認! 数は十五!」

 カブリオレを中心とした右、左、後ろの三方向の地中から出現したのはWS、『アンバー』だ。それぞれの方向に一機ずつ『ヴァラ』も混じっている。

(地中に潜ませていた? 魔力反応は残骸に残っているWSの内部エネルギーを隠れ蓑にして……!)

 この辺りの地中には戦争で破棄されたWSの残骸が埋もれている。中には内部エネルギー、つまり使われることのないまま放置された魔力バッテリーが生きている物もあり、その周辺に隠れることで魔力を感知するセンサーに引っかからなかったのだ。

 仮に引っかかったとしても残骸だと思うだろう。

「『A.I.P.F.』は展開を継続! Xシリーズの援護を要請してください!」

「駄目です! それぞれの機体が足止めされてて……!」

 どうやら敵はXシリーズ四機を引きつけて無防備な艦を突こうという作戦らしい。闘い方と装備を切り替え、敵は逃げつつ、拡散性の高い装備でXシリーズを逃がすまいといった戦法をとっているせいで足止めされていた。

(援護はしばらく望めませんか……となると、)

 ここは自分たちで何とかするしかない。

 簡潔に言うと、アイリス達は窮地に陥ったのだ。


 □□□


 トタス・ジェイスルーは一人ほくそえんでいた。

 こうも綺麗に敵が待ち伏せに嵌ってくれると爽快な気分になる。その相手がこれまでドミナントを散々くるしめてきた『黒騎士』の母艦ともなればなおさらだ。

 ここら一帯にはまだまだ爆弾はしかけてある。準備に大量の時間と人員を要したのだ。これで終わるのは割にあわない。飛んで逃げるにしてもエネルギー消費のデメリットはついてまわる。そう何時間も飛べはしまい。

 かといって、地上の自分たちを放置してもこのまま奴らの作戦前に奇襲を仕掛けることも出来る。

 あの実験機たちに関しては逃げる事は不可能ではない。

 飛ぶにしても防御壁を使うにしても大量のエネルギーを消費する。

 自分たちを見逃せば大規模な作戦を妨害されるだけでなく詳しい集合位置をリークされ。

 かといってこのまま飛んでもフィールドを張り続けても大量のエネルギーを消費していずれ落ちる。

 戦うにしても周囲は十機以上のWS。

 一度に十五機のWSをなんとかなければ突破口はない。

「チェックメイトだ」

 トタスは一人、モニターの片隅に映っている艦に詰みだと告げた。


 □□□


 決断は一瞬だった。

「この辺り一帯の地中のスキャンを開始してください」

「え、スキャン? 地中の?」

「早く!」

「は、はいっ!」

 すぐさま行動に移せないのはやはりまだ心の底からアイリスを信用しきっていないのと、アイリスを舐めているからだろう。いくら時間が無いとはいえ、もう少し艦のクルーたちと打ち解ける努力をしておけばよかったと後悔するがそれも後の祭りで、それよりも今、目の前に立ちはだかる現実の方だ。

(この辺りは確か十数年前の戦闘時の影響で大規模な地震が起こったはず……)

 この辺り一帯で行われた大規模な戦闘は長期間続いた。終盤ともなるとWSだけでなく大規模魔法の発動が頻繁に行われており、その影響からか大規模な地震が起こり、大地は割れて、裂けて、大量のWSや施設が沈没していたはずだ。

「スキャン完了しました!」

 そのデータを手元の端末に送信させて、アイリスはじっとホロモニターを見つめる。戦闘時に速度重視で行われたスキャンだ。せいぜい熱反応ぐらいしか解らなかったものの――――アイリスにとってはそれで十分だった。

 艦が大きく揺れる。

 どうやら大量に爆弾は仕掛けてあったらしく、それを車輪が引っかけたようだ。幸い、大車輪は破壊されなかったものの、このままだと『A.I.P.F.』展開範囲外からやられる。

 この次の手のメリットとデメリットを素早く揃え、アイリスは毅然とした表情のまま告げる。

「フライトシステム起動! カブリオレ、緊急上昇してください!」

「ふ、フライトシステム起動! 緊急上昇!」

 クルーが半ば悲鳴のように叫ぶと、『カブリオレ』の収納されていた上から見るとW字に見える巨大なウイングが展開した。そして車輪が艦底へとスライドし、飛行魔法によって浮力を生み出す。

 初めからこのシステムを使っていれば、上空を飛んでいればこんなことにはならなかっただろう。

 しかし、『フライトシステム』は大量の魔力を消費する。

 その問題が未だ完全に解決できていないとなればそう常から使ってはいられない。

 艦が飛んだことによって『A.I.P.F.』が艦底にも張り巡らされる。

 だが。

「AからまでFの『A.I.P.F.』展開部分を解除。同時に『タキオンミサイル』、主砲、発射用意」

 いくら飛んでいるとはいえ、警戒しているWS相手にそう簡単にミサイルが当たるわけではない。それはアイリスも承知していた。

 だが狙いはそこではない。

「私が合図したら指定ポイントに主砲発射後、今から送る術式を埋め込んだ『タキオンミサイル』を撃ちつけてください。いいですね?」

「は、はい……いや、でもここは……」

「反論は認めません。撃ちなさい」

「……は、はいっ」

 クルーが疑問を口に出すのも無理はない。何しろそこは何もない、敵もいないただの荒野だった。

「推力最大! 一時的にでもいいので敵のWS部隊を振り切ってください!」

 各Xシリーズを放置するわけにもいかないので完全に振り切ることは出来ないだろう。それに、敵をこのまま活かしてガロンまで連れて行くわけにもいかない。ここで完全に仕留めておかなければならない。『カブリオレ』が加速する。そしてややあって、

「艦を百八十度回頭、主砲、発射!」

「主砲、発射!」

 青白い光の尾をひいて、『カブリオレ』から主砲による一撃が放たれる。そしてそれはこちらを追いかける十五機のWSの三方向のフォーメーションの中央の地面に直撃。敵は各方向ごとに戦艦一隻分の距離を開けていたので意味はない。せいぜい、近くをミサイルが着弾したぐらいだ。

 その後、間髪入れずに主砲が放たれる。

 同じように、その後を追うようにして『タキオンミサイル』が降り注ぎ、地面に直撃したその直後――――地面が、爆ぜた。

 次々と放たれた攻撃によるものではない。地下にある何かが爆ぜたのだ。

 その爆発はかなりの規模のもので、十五機のWSたちをいとも簡単に呑み込んでいった。

 唖然とするクルーたちの中、アイリスはさも当然のように言う。

「フライトユニットの出力を低下。地面ギリギリで低空飛行してください。『MA2』の加速率も40%にまで落としてください。『A.I.P.F.』の出力はフルパワーから58%にして全面展開。戦闘はまだ継続しています。気を抜かないでください」


 □□□


「なん、だ⁉」

 何が起こった。

 トタスは自分が戦闘中だということも一瞬忘れて唖然としていた。

 実験艦が変な方向に、三方向に配置していたWSたちの中央、何もないところに攻撃を放った。直後に自分たちの部隊のWSが爆発に呑み込まれていった。

 何をした? 何かのマジックか? 魔法? 何の?

 この待ち伏せには時間もかけた。だが、ほんの僅かな時間でその大部分を破壊してしまった。

 考える。考えて、考えて、そして、思いついた。

「……中継補給施設?」

 現代でも存在する魔力の中継補給施設。『大地の恵みガイアギフト』のように無限に溢れ出てくるような補給施設ではなく、別の街の『大地の恵みガイアギフト』から魔力を運び、遠く離れた街と街の間にある補給施設に運んだ魔力をチャージする。そしてその補給施設から遠出してそこにたどり着いた部隊が魔力の補給を済ませる。

 それが、中継補給施設だ。

 ようはチャージが必要な出張補給施設で、それは大昔にこの戦争が始まった時からあった。

 十数年前にはここらにあったのだろう。だがそれも大規模な魔力的な大地震で沈没してしまったのだろう。内部にエネルギーを残したまま。

 ピンポイントで中継補給施設が眠っている位置に攻撃を放ち、大規模な爆発を引き起こす。

 爆発を引き起こすには簡単だ。まずは主砲で大地に穴を空けてさっき撃ちつけたミサイルに特殊な爆発術式を埋め込み、補給施設に眠る魔力という起爆源にして起爆剤に任せればいいだけだ。

「なんだ……いったいどんな指揮官があの船を動かしているんだ⁉」

 この作戦を思いついた大胆な発想と補給施設をすぐさま見つけ出した手際。

 ピンポイントでの座標攻撃と完璧なタイミング。

 どれもただの指揮官にできはしない。

 恐らく魔力コントロールも完璧だと見て間違いない。

 と、トタスが驚く間もなく。

 周辺の『ヴァラ』が一機、巨大な光の中に呑み込まれて爆ぜているのが見えた。

 見てみると紅蓮のWSが、腰横から顔を覗かせているランチャーを放っていた。慌ててそれを回避すると、今度は黒いWSが襲い掛かってくる。

「黒騎士……!」

 唸ると、トタスの駆る『ヴァラ』は『PRB』で殴りかかる――が、『タケミカヅチ』はそれを易々とかわすと対艦刀を振り下ろす。

 それを腕の『アームブレード』で受け、刃と刃が激突する。

 だがそれも一瞬の間の事で、トタスはキラリと黒い刃が黒色に輝くのが見えた。

 それが何なのか理解する前に、『ヴァラ』の右腕は切り落とされていた。

 トタスは知る由も無かったが、『夜桜弐式』へとアップグレードしていた『タケミカヅチ』の持つ対艦刀にも、『キオネード』の近接ブレードと同じように『マナ・ソニック』を使える。

 その結果として魔力構造を崩されて、脆くなった『アームブレード』ごと腕が切り飛ばされたのだ。

 バックステップで後退すると共に、味方に援護を申し出る。

「援護を……!」

 だが。

 バチィッ! と紫色の落雷がほんの一瞬、視界を濡らした。かと思うと、次の瞬間にはもう既に、四機のWSが全滅していた。

 一瞬で、全滅していた。

「なっ……あぁっ⁉」

 この『ヴァラ』には脱出機能が搭載されてはいるが、それすれも許さない神速の、否、雷速の一撃は自分を除く残存する全てのWSを叩き潰したのだ。

 ――――来る。

 そう思った直後、体は頭で理解するよりも早く機体を動かしていた。無様でもいいからとにかく動かす。

 そして。

 雷速の一撃は、残る一機の『ヴァラ』の腰を両断し、上半身と下半身を分断していた。



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