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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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162・半世紀前の真相

「アルタミナさ~ん!」


「アル……っ!」


「さすがだわ、よくやったわね!」


「わっ!? あはは、みんな、痛い、痛いよ」


 僕らに飛びつかれ、肩や背中を叩かれて、大蛇殺しの黒髪の英雄さんは照れた笑いを浮かべた。


 でも、構うもんか。


(本当、凄いよ……!)


 たった1度のチャンス。


 みんなで作り出した好機を、彼女は逃さず、期待に応えて成し遂げてみせたんだ。


 うん、これぞ、黒獅子公。


 これぞ、僕らのクラン長、アルタミナ・ローゼンだ!


 僕らはしばらく歓喜の輪を作る。


 やがて、


「そう言えば……シンイチ君は、腕、大丈夫?」


 と、聞かれた。


 クレフィーンさん、レイアさんもハッとする。


(あ、うん)


 2人も、僕の腕がヒュドラに嚙み千切られたの、見てたんだね。


 僕は笑い、


 グルグル


 新しく生えた右手を回す。


「うん、全然、大丈夫です」


「そっか」


 アルタミナさんも安心した表情だ。


 一応、大丈夫だと思うけど、ヒュドラに噛まれたということで、心配性のお母様が解毒魔法をかけてくれる。


 右腕を触られ、魔法発動。


 パァァ


 彼女の手に淡い光が灯る。


 うん、これで一安心。


 やがて魔法が終わり、すると、クレフィーンさんの白い両手が今度は僕の右手を包むように握った。


 ギュッ


(ふぇ……!?)


 突然の触れ合いに、僕はドキッとする。


 彼女は僕を見つめ、


「あまり……無茶をしないでくださいね?」


「あ……う、うん」


「ですが、シンイチ君のがんばりでヒュドラを倒せたのも事実ですものね……ええ、本当にありがとう。よくがんばりましたね」


 チュッ


(ひゃっ?)


 右手に、唇を押し当てられちゃった。


 や、柔らかい。


 照れる僕に、彼女は少しだけ女の表情で微笑んでいた。


 一方、アルタミナさん、レイアさんの2人は唖然とし、苦笑をこぼしている。


(あ、あはは……)


 嬉しいけど、恥ずかしい。


 でも、やっぱり幸せ。


 無事、目標の『高濃度汚染体』である難敵ヒュドラを倒せたんだし、少しぐらい、こんな役得があってもいいよね?


 えへへ……。


 そのあと、僕らはヒュドラの死体を確認する。


(本当、でっかいな)


 体長約50メートルだもん。


 地面に倒れる姿は、まさに小山のようで。


 死んでいるんだけど、この巨体ゆえか、妙に迫力を感じてしまう。


 一応、討伐証明のため、体内の魔力結晶石を探す。


(ええと……)


 ヒィン


 巨体のどこにあるか、真眼でチェック。


 こういう時、本当、便利だよね?


 で、文字が視えて、




【ここ】


・心臓の内部にある。


・ただし、高濃度の呪詛に汚染されているため、直接の接触は非推奨。


・布1枚を挟み、取り出すべし。




(へぇ……?)


 触るの、駄目か。


 僕は3人にも伝え、タオルを用意する。


 黒獅子公が斬り裂いた胴体部分、その奥にある裂けた心臓の更に奥へ、肉を押し分けながらタオルで包んだ手を入れる。


 ヌチョ……


(うひ……まだ暖かいや)


 死体の体温を感じながら、探す。


 あ、これか。


 グチュッ


 取り出したのは、巨体に反し、20センチほどの石だ。


 形状は、歪な球体。


 本来、半透明の結晶の中は、完全な紫の濁りに汚染されている。


(……?)


 何だろう?


 よくわからないけど、生理的な拒否感というか、妙な禍々しさを感じる。


 見ているのも、何か嫌だ。


 3人も、


「へぇ、これが……」


「何とも、不気味な結晶石ですね」


「このサイズの小ささは……多分、魔素と呪詛が混ざり合い、高密度に圧縮されているのね」


 なんて言う。


 そうして全員、確認し、


(ん、よし)


 グルグル


 僕は、その石をタオルで丸める。


 それを布袋にしまうと、厳重に口元を紐で縛っておく。


 ギュ~ッ


 ふぅ、力一杯、やったぞ。


 大事な討伐証明となるこの石は、リーダーのアルタミナさんが責任を持って預かることになり、彼女のリュックにしまわれた。


 これにて、クエスト目標は達成。


 だけど、


「呪詛の根源は、まだ残っているのよね」


 と、レイアさん。


 うん、と、僕は頷く。



 ――邪竜の腐肉。



 500年前、女神マトゥとの戦いで四散した邪竜の肉片、呪詛を発する腐肉の1つが、この『暗黒大洞窟』の更に奥に存在するのである。


 僕は言う。


「それも、処分しないと」


「…………」


「じゃないと、また、新しい『高濃度汚染体』が生まれるかもしれないですし」


「ええ、そうね」


 レイアさんも頷く。


 と、黒髪のクラン長が息を吐く。


(ん?)


 その表情には、少し疲れが見える。


 でも、その金色の目には強い力を宿して、ゆっくりと顔を上げた。


 僕らを見回して、


「よし、1時間休憩。そのあと、奥に向かうよ。――もう一踏ん張りだ」


「うん」


「はい、そうですね」


「ええ、最後までやり切りましょう」


 僕と2人の美女も答えた。


 携帯食料での食事と水分補給、ポーションでの魔力回復、各種魔法のかけ直しをしながら休憩する。


(ん……)


 僕は鍾乳石を背もたれに、座り込む。


 隣には、


 ムギュッ


 僕の腕を抱えながら、密着して座る未亡人の美女さんがいらっしゃる。


 美しく長い金髪が、僕の身体に触れている。


 何か、いい匂い……。


 疲れているのか、僕の肩に頭を預け、目を閉じている。


(……うん)


 その重さが心地好いや。


 僕も何となく、彼女の頭に自分の頬を押し当て、重さを預ける。


 危険な洞窟内。


 だけど、不思議と安心する。


 アルタミナさんは見張りに立ち、レイアさんは別の鍾乳石の前に座っている。


 足元の地面には、ランタンが置かれている。


 炎が揺れる。


 綺麗で、穏やかな輝き。


 休憩は1時間……僕も、少し仮眠を取るとしようかな?


 お母様に寄りかかったまま、まぶたを閉じる。


 ふぅ……。


 …………。


 …………。


 時間はあっという間に流れる。


 やがて、1時間後、僕らは休憩を終える。


 全員、立ち上がり、


「よし、じゃあ、最後まで気を引き締めて行こうか!」


「うん」


「はい」


「ええ、行きましょう」


 アルタミナさんの号令で、僕らは洞窟の更なる深部を目指したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 洞窟内を進んでいく。


 50メートルの怪物が暴れられる空間は本当に広く、それが延々と奥まで続く。


(本当、大洞窟だよ)


 と、内心、呆れと感心が同居する。


 途中、何度かの分岐を選びながら歩を進めるけど、幸か不幸か、昆虫型の魔物が数匹いるだけで、それ以外の魔物は皆無だった。


 クレフィーン先生曰く、


「ヒュドラがこちらに来たことで、他の魔物は皆、この付近から逃げてしまったのかもしれませんね」


 との推測だ。


 なるほど。


(確かに僕が魔物なら、あんな大物が来たら逃げちゃうよ)


 と、納得である。


 おかげで実に平和に探索は進む。


 やがて、真眼の表示する『100キロ地点』を越える。


 と、その時、


 ヒィン




【呪詛を感知】


・呪詛の濃度が高くなっている。


・72時間以上、この場所に滞在していると汚染が始まる。要注意。




(お……)


 そうなの?


 驚きつつ、3人に報告。


 彼女たちも少し驚いた様子で、周囲を見回したりする。


「特に変化は感じないけど……」


「ええ。ですが、シンイチ君の『秘術の目』で視えたのならば間違いはないのでしょう」


「そうね。でも、だからこそ怖いわね」


「はい……」


 真眼がなければ、わからない。


 本人の知らぬ間に『邪竜の呪詛』に、徐々に、徐々に蝕まれてしまうんだ。


(本当、怖い話だよ)


 ブルブル


 でも、72時間――つまり3日の猶予がある。


 まぁ、さすがに3日以内には、この高濃度の場所から移動してると思うけど……。


 そうして、更に奥へ。


 やがて、


 ヒィン




【103キロ地点】




 に到達。


 前に『邪竜の腐肉』があると真眼に表示された地点だ。


(ついに来た)


 3人にも伝え、僕らは前進する。


 そして、気づく。


「……なんか、荒れてません?」


 と、僕は言う。


 アルタミナさんも「うん」と頷く。


「周囲の鍾乳石が、ほとんど壊れているね」


「あちらの壁面は大きく陥没しています。瓦礫も散乱しているようですよ」


「本当ね。何かあったのかしら?」


「全員、警戒を。――シンイチ君?」


 名前を呼ばれ、


(あ)


 僕は「はい」と答え、即、真眼を発動する。


 ヒィン




【危険なし】


・現在、周囲3キロ圏内に魔物などはいない。


・現状、安全である。




(うん)


 文字を確認し、


「えと、秘術の目では、特に周囲に危険はないようです」


 と、報告した。


 3人は「そう」と少し安心した様子。


 でも、完全に警戒は解かないで、周囲を気にしながら奥へと進む。


 やがて、40~50メートルほど歩いただろうか?



 ――それは、突然、目の前に現れた。




(……!?)


 魔法とランタンの光の照らす範囲に、急に巨大な物体が出現したのである。


 え……あ……?


 僕は唖然。


 熟練冒険者の3人の美女たちは、反射的にガシャッと武器を構えていた。


 無理もない。



 ――それは、先程僕らが戦ったのと同じ多頭の怪物、巨大なヒュドラだった。



 いや、より正確には、


(その死骸だ……)


 洞窟の影響により石化し、灰色の硬質な物体として、僕らの眼前に古い小城のように立ち塞がっている。


 ただ、その大きさ……。


 多分、70メートル以上ある。


 僕らが戦った多頭牙龍ヒュドラより、サイズが一回り……いや、二回りは大きい。


(何じゃこりゃ……?)


 僕は、声も出ない。


 3人の美女も武器を下ろすけど、茫然とした表情だ。


 蛇の頭部も、5つある。


 もしかして、さっきのヒュドラの親とか?


 いや、まさか……僕らが命懸けでようやく倒したヒュドラが、実はまだ子供サイズの幼生体だったっていうの?


(嘘でしょ)


 僕は困惑を隠せない。


 と、その時、


 ヒィン




【ヒュドラの石化死骸】


・多頭牙龍ヒュドラの石化した死骸である。


・約50年前、ジオ・クレイアードと仲間のクラン員約70名が戦い、辛うじて倒した相手である。


・その戦闘で、クラン員は全滅している。


・唯一の生存者ジオ・クレイアードも瀕死の重傷を負って動けなくなり、その後、7日間ほど生き延びたが、最終的には絶命した。


・その生存している間に、ジオ・クレイアードの肉体と魂は呪詛の影響を受けてしまい、死後、半死人状態の『高濃度汚染体』として甦ることとなった。


・尚、倒されたヒュドラも、当時、『高濃度汚染体』だった模様。




(お、おお……)


 真眼情報に、僕は目を瞠る。


 こ、この化け物を、50年前、ジオ・クレイアードは仲間と共に、ほぼ相打ちとはいえ倒したのか。


 す、凄ぇ……!


 敵だった彼を、今だけは素直に尊敬しちゃう。


 この事実を、3人にもすぐ報告。


 彼女たちも目を丸くし、驚愕していた。


「50年前のヒュドラ!?」


「まぁ」


「……こんな怪物を、ジオ・クレイアードはよく倒せたわね。そして、その彼に私たちもよく勝てたわね」


「……ですね」


 僕も若干、遠い目で頷く。


(本当、何で勝てたんだろうね?)


 目の前にある巨大な怪物の死骸を見上げる。


 少なくとも今、生きてるこれに勝てるイメージは全く湧いてきません……はい。


 誰も知らなかった50年前の真実。


 かつての英雄が消息不明になった理由を、僕らはこんな形で知ったんだ。

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― 新着の感想 ―
ジオ・クレイアードも50年前に仲間と自身を引き換えに高濃度汚染体のヒュドラを討伐し、自身も高濃度汚染体になってしまったと……これは貴重な情報であるけれど、これで腐肉の1つを処分すればジオ・クレイアード…
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