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2-10 伏魔殿よりの旅立ち。混乱超えるゲームチェンジに挑め!!

「あー、うん、その…………聞いてくれ、皆」


それからどうにか落ち着いて。


気まずさMAXの空気感の中、登壇して話す事になる。


……………………どの面下げて。


俺含め皆が思っているだろうが、やれと言われたのだから仕方がない。どこか修道女のような眼差しで見てくるキャラットの意図が読めないのも怖い。


でもやるしかない。


もう事務的に処理しようと、コピー機で刷り出すみたいな声で語り出す。


「あー、上層部の説得は終わっている。今回の依頼の成果は、なんの憂いもなく君たちのものとなるだろう。くれぐれも気を引き締めて────」


「あーっと! あのあのー!」


「えっ?」


「もう堅苦しいのいいんで! もっと気楽に話しましょーよ!」


ここで前に出たのは、器用に鎧の目でやれやれ顔を作る二号。


「どーせ口でも拳でもボコりあった仲でしょーに。こっから長い付き合いになるんだし? みんなもホラ……いつまでも引きずっててもしゃーないっしょ? ……みんなはどう?」


「「「…………、」」」


少し固まるが、やがて


「まあ、うん……そりゃあな……」「上の指示だってのは知ってたし……」「正直俺らも今までロクなこと出来てなかったしな……」「強くなった今だからわかるけど、前のアタシら本気でザコだったものね……」


「ははは……まぁ……そう、なのか…………?」


二号の言葉に、少しだけ肩の力を抜いて。


チラリ、しれっと復帰した一号をみやり。


少しあの日々を思い出し……そして。


「正直言うとな…………今でもお前達を、力が強い集団とは思っていない」


「っ? おいおいシマカゼ……そりゃさすがに」


「だが、俺にはない輝きをオマエ達は今、手にしていると思う」


「…………っ」


制止を振り切り本音だけを吐く。


もう、取り繕うのも馬鹿らしい。


「俺はお前達を低く見積もっていた……いや、物の数にも入れてなかった。なんなら妖精達を縛り付けるための重石とさえ扱ってた…………それが今じゃどうだ。成し遂げた事もこれから成す未来も、俺なんかよりよっぽど広がってるじゃないか」


そういう建前ではあった。


無理難題を突きつけて、へし折って使い走りにするのが目的だった。


だが、そんなものクソだ。


「結果論、では済まされない。未来を閉ざすやり方をしてはいつか詰むと知っていたハズなんだ。なのに俺は、心からアンタ達を否定する事に躍起になっていた……」


それを必死で肯定しようとしてた。


失った旧時代に酔い、現実から目を逸らす事に全力を注いだ。


その結果は大惨事だ。


「なんて、くだらない……くだらないクソの流れだ。俺は詫びなきゃいけない。これから成すべき未来を潰しかけた事を…………」


膝をつく。


例えなんの価値もなくても、両手を地につけて頭を垂れる。






「済まなかった。本当に、済まなかった…………!!」






「「「……………………」」」


深々とした土下座だ。


しんみりとした空気を感じる感。


どうやらキャラットも黙りこける。元妻からどこまで聞いてるか知らないが、仕方がないにしろあれ以上の言葉が出ないか。


重すぎたか……そう思い、少しは取り繕う言葉を探しかけて。


「充分さ。顔を上げや、若いの」


老いた小人に拾われる。


あの日も罵倒した相手だ。


その顔は、少し前とは比べ物にならないほど穏やかだった。


「カルマ・ミヤシタ……さん……」


「あれからしばらく経ったが、あの場はああするしか無かったってのはみんな解っておるよ。…………まあ約一名、直接一体一詫びんといかん相手は居るようじゃが」


「ぐはッ……!?」


「そんなことで相手が壊れるまで詰めても仕方がない……やられてきた儂らが一番わかっていることじゃからの」


ぐっさり刺さる言葉だが妥当でしかない。


少し気になって問いかける。


「随分……大きい器で考えるようになったじゃないか」


「こんなもの。ただの開き直りじゃよ。ここで色々と『取り戻せた』結果かもしれん」


どこか満足げに、全てを手放す覚悟を決めたようにカルマは。


「言うて儂の未来も大して無いわけじゃしの。じゃからうっかり逝ったあとも、彼らを宜しく頼むよという訳さ」


「……………………」


軽く振り返り、懐かしむように青き日々に浸ったように。


「……ここにいる大半は、まだ無限の未来を持ってるようじゃからの。こちらに無い力で、あんたもこの班を守っておくれ」


「ああ…………心得た!!」


立ち上がる。


やるべき事を羅列する。


同調する妖精の群れへ向け、最後の詰めを。


「はっきり言うが、今の上役はクソの集まりだ!! 俺が言うんだから間違いない。だが! そんなクソでもこの街を復興させた才能も、この街を自在に統べる権力も持っている! お前達を丸ごと街から追放することさえ、決して不可能では無い!!」


酔っている者の勢いは強い。


目的地が崖先だろうと容赦なく突っ走る、危うい牽引力がある。


「だから敵だとは思わない事だ。彼らがこちらを利用するなら、こちらも彼らを利用する!! そうして持ちつ持たれつ、だましだましでやっていくのが唯一の道なのだ!!」


だから翼を授ける。


落ちそうになれば先に橋を作り、転びそうな石があったら先に払う。


やり過ぎると今回の俺のようになる。


だからバランスが大切なのだ。やり過ぎないバランスを、一生考えながら過ごす事となる。


「故に!! 俺は人への敵意ではなく、結果への嫌悪を込めて、お前達にこの言葉を贈る!!」


滅ぼすのでは無い。


取り戻すのでもない。


この場に、最も相応しい文言は。


「────────抗うんだ。『楽園よりの追放に抗え!』 フェアリーライダーズ…………武運を祈る!!」


「「「「「応ッ!!!!!!!!!」」」」」


気合い一声。


切り出された羽の妖精達が今一度放たれる。






あるいは、この世界の定説を変える戦い。


信頼を配る配信が、今始まる。





【MISSION!!】グリルゼロスを討伐し、自治政府の上役から信頼を勝ち取れ!!




episode6.2……了


NEXT……episode7.3 ああ、久しき愛しき迷宮よ。





















「…………さあ、始めましょうフィー・ヴィタール」


少女は()()()()()()()()()()()()()()


「わたしとあなた……二人きりの物語を」


新緑の衣装に溶け混む髪色……そして輝く一対の羽。


妖精のごとき少女は、自治政府のあらゆる事情を無視して我を通す。


待ちくたびれた彼女の背後、硝子の拳が二つ。

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