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2-9 伏魔殿抜ける、他愛ないアンサー。

「うん? 娘さんが二人とも火薬部隊に居るんだって?」


「ああ。さっき元嫁から連絡が入ったんだ。一人は元からB格(どうりょう)と知ってたが……まさか下の娘も、とはな」


数日後、涼しげな朝方。


そこそこに話すようになったフィーと共に、準備の済んだFー2班に会いにいく。


これより成果を見せる戦いへ出向く。


討つべき敵は神獣・グリルゼロス。


うざったるいほど長い石畳の先、既に二号……エイル・クロースが準備運動を済ませているらしい。


「ん? てかアンタ今の娘さんの顔知ってんの? 別れて随分経つんっしょ?」


「わからん。自分で探せとさ。……まあ、同じディーネ姓を名乗り続けてるらしいしそのうち見つかるだろう」


今日はとてもいい天気だ。


花も咲いている。鳥も囀っている。


こんな日にも、燃え盛るように問題は迫るものだ。


「だがおかしんだよな……ソイツが言うには、配信で見たって言うんだ。妙じゃないか?」


「おいおいそりゃ無いだろ。だって配信なんかしてる部隊はFー2だけなんだぜ??? それじゃアンタはあの日、実の娘を罵倒しまくった事に……」


「だよなだよなそうだよなぁ? なにかの間違えかもしれんし、気長に探そうかと……」


正直、自分も上の娘もBなのに下がFなのも極端だ……と。


思い語らいながら、集会所に続くドアを開け────









「────あの……もっかい言ってくれる? あなたの名前って……」


「はい! キャラット・()()()()です!!」


((ッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!??????))


空きかけの隙間から、二人揃って声にならない叫びを上げる。


二号が相手する、ふっわふわの少女……俺の娘、キャラット・ディーネを前に戦慄する。


よりにもよって、あの日俺が骨から砕くと宣言した相手だ。


「あの、もしかしてその名前って……」


「ハイ…………お母さんが名乗って損は無い名前だって。……あっ、さっきも話してたら『もしグラサンのゴリラに会ったら慰謝料でも求めればいいよ』って!」


((あばば!! あばばばばばっばばばっばあ!?))


吹っ切れたような笑顔を前に二人して泡を吹き、亜光速で作戦会議。


(言われてるけどオッサン大丈夫? ホントに損無かったって言えるねえ!?)


(言えない! 言える訳がないだろこんなドブカスの父親が!!)


(自覚あるんならアンタももうちょいマトモに父親してくんない!? 会うなって言われてるわけでもあるまいし!)


(上の娘と上手くやるので精一杯だったんだ! てか普通に前線出てたからな俺も!!)


扉の裏でどったんばったん大騒ぎ。


さすがに二号もドン引き加減で、恐る恐る訊き進める。


「あのうん…………大丈夫? 色々とさ、無理してなーい?」


「大丈夫です! 前のパーティーでも自爆技強いられましたし、もう死ぬことを求められるのにもなれてしまったので」


「あ…………その節はウチのリーダがごめんね…………? てかホント、生きてね…………」


(ああああ慣れないで~~~~!! 体で慣れても心で痛い事を怖がって~~~~!!)


掘り下げるほど火薬が出てくる、爆弾庫を前にぐっしゃぐしゃ加減の心境。


泣き言加減に遥か年下の少年へ縋ってしまう。


(オイオイオイオイどうすればいい? 俺が悪いよな? もう詫びた方がいいかな? ライフルでも咥えて逝った方がいいかなぁ????)


(バカよせオッサン! 余計にあのねーちゃんの顔を曇らせるだけだろうが!! てかくっつくな獣くせえ!)


(クソッそうかお前アイツより年下なのかよ! なんでそんな冷静なんだその鎧のおかげか!? 寄越せこの!)


(ざけんなゴラァ!! そんなことやってる場合じゃ……)


わちゃわちゃ取っ組み合いになり、ガツンガツンと扉にぶつかってしまう。


とくれば流石に、扉の向こうにも何らかの異変は伝わるわけで。


「……あれ? 向こうからなにか聞こえる気がします?」


「あーうん……気のせいかなにかじゃないかなぁ……??」


(合わせる顔がないんだよ! せめて仮面だけでもいいから出してくれヴィタえもん!)


(えもん……なんじゃそりゃ!? てか落ち着けバカ!! この体格差で組み合ったら足がもつれて…………)






グラッ────────バッタアアアアアアアアン!!!!






「「「「…………………………………………は?」」」」


全員凍結。


世界一レベルでダサい入場をしてしまうが…………隣の妖精騎兵はいつの間にか、文字通りの石になってる。獣に喰われたつもりでやり過ごす気か。


結果、俺だけに視線の全てが突き刺さる。…………特に娘のキャラットの無垢な瞳が。


「あ…………いや………………その……」


「あの、えっと…………」


コミュ障みたいなどもり加減。


互いに困惑するも……宙を数回仰いだ後にきっぱりと言ったのは。


「…………3億…………3億で許します!!!!」


「いや案外図太いなオイイイイイ!?」


非常識を叩きつける瞳は、折り重ねて打ち上げたような刃の輝き。


心配事の大半はやはり、話してみるとあっさり解決するというのか。


相手に恵まれていたおかげで、どうやら大惨事にはならなそうだ…………。


(いやー良かったなグラサンゴリラ。なっさけねーのは確定だが。プークスクス……)


「ふんっ!!」


(ごベっ!!?)


煽る大岩をドアの奥に蹴り戻し再入場を促す。


しばしの別れまで、間もなくだ。

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