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#1-11 締めの問答と新展開。エイルの決意と新たな障壁!!

「あたし達はこれから、もっと上に行くつもりでいるんだ」


高らかに目標を語る。


目指すべき場所を明確にする。


「10万人の証の盾を貰った時言われたんだ……今後はより深く関わることになるって。……ここで心を強く持たないと飲まれるんだろうなぁ……ってさ」


これはとても大事。


繋がりの量は信頼の証。


「だから、みんなにはちゃんと見ていて欲しい。あたし達が変わらないように、変わった時わかるように……10万の脳と繋がる瞳できっちりと」


〈ピヨラジャ!〉〈いやOh Yeah!じゃない?〉〈ずっと推してるよ!!〉


頼もしい声がいくつも上がる。


あたし達があたし達でいるために、彼らの強力な協力は不可欠だろう。


…………その裏で、情緒が追いついた様子のリーダは。


「ったく…………つまり? 結局、アンタは運が良かったってワケだ?」


「なんだと?」


「おっと一号さんには悪いがね」牽制し、じっとり眼のひび割れ口で突き詰めてくる。「二号、今日語られたアンタの物語を訳すとこうだ。『火力不足と言われ追放されたあたし、王子サマみたいなヒーローに拾われチート装備を貰って無双します!!』……と。

ふざけんなよ。命を捧げずに済んだ差は、そこの一号サマの有無だけだろう。ラッキーに任せたゴリ押しじゃんさね」


「そうだけど?」


「は?」


長話をあっさり肯定され。


ポカンと空く裂け口に向けて放つ。


「実際ハチャメチャのラッキーだったんだよ……あたしだけじゃなく、お互いにとってさ。どっちかがどっちかを庇うだけなら、きっとここまでこれなかった。ピシャドンの相性だったからこそ、足りないものを補って今日まで来れたんだ」


なにも取り繕うことはない。


ただの事実なんだ。


「だから。だからこそ、ずっと応えてるんだよ。あたしを頼ってくれた、ヒーローの期待にさ」


「…………」


数瞬の空白。


そこを逃さずきっちりと。


「改めて、新しく来た人も含めたみんなに聞いて欲しいんだ、あたし達が目指すのは……」


宣誓する。






「……………………………、 !!!!!」






〈………………〉〈………………〉〈………………〉


「……ったく、毎度ながら凄まじい夢なこった」


果てなき夢を。


叶えたい目標を。


一旦は止まったコメント欄も……やがてゆり戻す。


〈ムリっぽいのに……二人ならやれそうな気がする……!〉〈応援してるよ!〉〈フレーフレー!!!〉


「ありがとう……みんな、あたし達頑張るからねーっ!!」


「……っはァ…………夢物語を」


応援ムードでも、やはりリーダは呆れ顔でいそいそと。


「御伽噺には付き合いきれん。もうわたしは帰るよ」


「おい待て帰るんじゃあねェ、まだ配信の途中だろうが」


「知るかボケっ!!」


ぷいとそっぽ向き、配信中なのに去ろうとするリーダ。


とはいえここで手放すのは「もったいない」ワケで。


「あー、帰るのはいいけど」鎧からこぼれる笑顔で言ってやる。「ちなみに今後もちょくちょくネタにしていいか連絡するし、なんならコラボ配信も誘うからね?」


「はいッ!?」


「だーってさぁ……ホラここ見てよ」


ちょんと指さす先には、中々見れないモノが。




同時視聴者数…………27500↑




「…………ハイ?」


「普段は二万越すのも一苦労、神獣エゴイズムさまとのバトルでも三万越えたくらいだってのに……こんだけ伸びるのってケッコーなもんよ?」


それが価値、だと伝わるだろうか。


「まだまだ幾らでもリーダに関わるすべらない話あるし……しばらくイッショに配信しない? ワケマエもあるしさー」


「…………っ。誰がァァァッ!」


想いとはなんと難しいことか。


ばっと手を払い、配信部屋の端まで下がる。


そして配信中なのに、くしゃくしゃの形相で。


「誰が二度とやるもんかよォ! だいたいアンタのぶっ飛んだやり口に付き合う奴がいたらわたし以上に命がいくつあっても足りんだろうがよお!! ちょっと有名になったからって調子乗りやがってこのFラン打点の鳥女!! 二度と会ってたまるかバーーーーーーーーーーーーーーカ!!!」


「ひんっ!!!!!!!!」


暴言両断大騒音。


暴音と猛ダッシュで走り去り、バタンとドアを締めてしまう。


耳を塞いだあたしがくらくらしてる隙に……


〈折角の誘いを拒否りやがって……〉〈幼女にタヒねって言ったの忘れてないからな〉〈もういっぺんくらい痛い目見た方がいいんじゃ……〉


「うぉっと!? もうこんな時間!?」


なんだかみんながボーダー超えそうな雰囲気を察知し、ブレーカーを落とすようにまくし立て。


「それじゃ、リーダも帰っちゃったし……そろそろお開きってコトで。バイッピヨ♪」


〈バイッピヨー!!〉〈ばいばーい!!〉〈くぅ……体感が速い!!〉〈がんばえー!!〉


慌て顔でを鎧兜で隠し。


色とりどりのコメントの中、なんやかんや大盛況の記念配信は幕を下ろすのだった。







「……ふぃー……お疲れ様ー♪」


「よし、お疲れ様エイル」


配信を終えて。


鎧脱ぎさり汗もふきふき、まったりと振り返る。


「……いいのか、あの婆さん。あんな風に帰してさ」


「しゃーないでしょ? フツーに言っても聞かないし……道理もある。見てて貰うしかないっしょ」


問われても、あたしは深刻に思ってなかった。


「それにヘーキヘーキ♪ あんだけ言えりゃー本人の心配は要らないって♪」


「……俺はむしろ、反省ナシに次の被害者を出さなきゃいいが……流石にこの配信で学んだと思いたいなぁ」


まあそれは当然の関心だが……そればかり気にしても仕方ない。


今は未来へ話を進めよう。


「さぁーって。ぼちぼち下準備もじゅーぶんでしょ」


何も、先ほどの配信はただの懐古配信では無い。


「これでみんな、あたし達の『物語』を知った。流石にこっから軌道修正はムリでしょ」


「ああ。頭のお堅い自治政府サマも、まさかここから中身とっ変えようとは思うまいよ」


あたし達は警戒していた。


配信者の開祖…………いわゆる『旧世代』の原点サマは、色んな人に弄り回された挙句四つに引きちぎられ、最期は氷漬けにされたという。


あたし達も同じ目に合わないともかぎらない。まして『配信者』の重要度が上がった現代では。


ありうる。


中身の差し替えさえ。


「どうする? 例えば俺が、鎧だけ作る機械にされたらよ?」


「へーきへーき、そうなる前になんとかできるから」


しかしあたしは揺らがない。


手を打ったことだし、信頼度MAXの瞳で。


「あたし達なら、120%大丈夫でしょ♪」


フィクションなら伏線(フラグ)になりそうなセリフも、惜しげも無く言えてしまうのだ。







「見たか、先程の配信」


「所詮は素人の浅知恵」


「我々に泥を塗ろうなど百年早い」


……………………しかして現実は非情というもの。


暗がりでの会談。かの日より出し渋るしか脳のない彼らは、またも状況の脚を引く。


「やってくれるな? シマカゼ」


「当然です。明かされたのは二号の物語、我々の狙いには全く影響ございません」


その手の下で動くのは、対照的に命燃やす男。


幾つもの瞳に見下ろされ、しかし男は内に秘めた熱を絶やそうとしない。


「当然だ。何事も結果を出さねば意味は無い」


それをわかっていて、重鎮達は彼を使い倒す。


「我々の失われし30年に報いるため、必ずや世界を締め上げる報道の網を蘇らせねばならんのだ。……そのために必要なのは、あんな得体の知れん子供であってはならない」


「承知しております」


黒ずくめの衣装の中、短く切りそろえられた黒髪がギラリと視線を照り返す。


「このシマカゼ・ディーネ。あの憎き妖精騎兵一号を、必ずや我らの手の者へ差し替えて見せましょう」


サングラスの奥、男シマカゼの漲る決意が垣間見えた。






邂逅の果てに謀略は渦巻く。


獣舞う世界での配信家業は、いよいよ次のステージへと進もうとしていた。






エピソード5.1 運命と出会うサイショのハナシ…………了




NEXT…………エピソード6.2 続く一手に謀略の香辛料を

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