#1-8 決着のフルバースト!! vsドリモールス後編!
「よっし……コツ掴んできた」
苦しみ膝をつくドリモールスを見て、確かな手応えを感じる。
戦局は確実にいい方に向かっていた。
「……でも」
しかし相手の闘志は折れてない。
まだまだ先を目指す。
爪ひとつかけたドリモールスが迫るのを見て、そう決意する。
『ゴギャアア アアアアアア!!』
「まだまだ……まだまだ足りないッ!!」
言って、予備にと渡してくれていた剣を取り出す。
片手で持つには余る形状だが、フィーのチカラは軽いので問題ない。
それに動揺するのは感染者達だ。
『えっ……二刀流!?』『妖精騎兵は盾と剣のハズだろ!?』『二刀で何する気だ?』
「……偶像って割とメンドーなのね……」
『グギャッ!!』
ガキンと両受け。オーディエンスにどよめきが走るが、ここでのあたしは気にしない。
ドリモールスの対応と……思いつきを試すのでいっぱいだ。
「まだまだ……」
ぐっと、刃に力を込める。
「もっとだ……もっと自由にッ!!!」
『グ……グギャ……!?』
ガシャンと噛み合わせて押し込む。
背中の羽から炎を燃やし、崩れゆく粉を薪にして推力に。
刹那、巨獣に力で勝つ。
「いい子……だから……ね……?」
『ギギ……!?』
刃の向きを変えつつ上を取り、鋏の要領で挟み込む。
時間限定の力勝負。
長く持つものでは無いが、今だけはドリモールスの爪を完全にロックしている。
後は簡単だ。
ひたすら蹴る。
「ちょっとだけ……痛いの我慢出来る、かな?」
────ゲシゲシズガガングシャグシャゾガズパアアアアアアアアアン!!!
「うらうらうらうらあああああああああああああああ!!!」
『ゴギャアアア アアアアアア アアアアア!!!!??』
技も何も無いめった蹴り。
自慢の美脚を振り上げて下ろすの繰り返し。
下腹部の通気が良くなる連撃がドリモールスの爪を襲う。
『み、見えた!』『いや丸見えじゃねぇか!!』『この時代に縞パンとは中々やるなぁ……』『俺も蹴られてぇ……』
スカート部が大変な事になってるっぽいけど今は気にしない。
羞恥を情熱の炎と変えた連撃が輝ける爪を追い込む。
「ははは……あたしはなんか楽しくなってきたけどアンタどーよ!」
『グ……ギャ……』
「そらそーか……じゃあ終わらせましょーかねぇッ!!」
首を振るドリモールスへ、気合いと共に渾身の一撃。
ついにエイルの蹴り下ろしが、片腕の爪全てを切り落とす。
しかしそこで時間が切れた。
『ゴギャアア……』
「やっば」
『ゴギャアア アアアアアア!!』
ぷすん、と炎が止んだのを土竜さんは見逃してくれない。
一転、組み敷かれながらも。
あたしは余裕を崩さない。
『……ゴギャ?』
「やっぱダメかぁ……仕上げはあなたじゃないと」
わかってないモグラさんに、しっかりと教えてあげる。
「そうでしょ……妖精騎兵サマ♪」
「ああ。全くだ」
ゴ ッッ !!
今再び、金色の戦士が舞い降りる。
『!?!?!?!?!ゴ!?!?!?!?!?!』
『えっなに今の』『すごい横にすっ飛んでっったけど』『バケモン来た!?』
パンチ一発で転げ飛ばされる。
そこまでの攻防がなんだったのかと思うくらい。
圧倒的に。
君臨するのは本家の妖精騎兵サマだ。
あたしは照れくさく頭をかきながら対応する。
「よくやった。十分だ」
「ごっめ…………やりきれなかったわ」
「いいや、片方だけでも大したもんだろ」
そのやり取りに黙ってないのは観戦者達だ。
『妖精騎兵は『二人』居たッ!?』『なんだこの展開はぁ!?』『双子!? いや三つ子とかもありうる!?』
たっぷり反応が帰ってくるも妖精騎兵サマは揺らがない。
これほどのオーディエンスの前に出るのは初めてのハズだが、妖精騎兵サマは全く緊張してない。
まるで慣れっこかのように、目配せのファンサービスまでやってのける。
「せっかくだから見ていきな! こんな乱舞はそうそう見れるもんじゃないぞ!」
企むように微笑み、バッチリポーズを決めての宣誓。
「────虚構が喰らう。空想に墜ちろドリモールス!!」
決めゼリフっぽい声と共に作り出すのは、あたしに渡したのの数倍はある巨大剣。
『…………………………………………ゴ……』
「辛いだろ。今……楽にしてやるよッ!!」
『ゴ!? ゴ!?? ゴ!?!?』
見るからに動揺し、残る爪で守りを固めたつもりだろうが。
脆い。
ぐっと振りかぶって。
必殺が舞う。
「…………ぬぅうううううううううううんッ!!!!」
『 ゴ ギャ』
一閃。
盾の爪ごと吹っ飛ばす。
粉々に粉砕された爪ともども、ドリモールスは軽々と吹っ飛んでいく。
テントを突き破り、旧家屋に突き刺さり……ようやく止まる。
沈黙が満たす世界は、もう既に安全地帯だった。
圧倒的。
完全無敵。
『……………………』『……………………』『……………………』
「……さっすが本家サマ、一味もふた味も違うわ……♪」
余韻と、一人の賞賛が流れる中。
勝利の煌めきが、あたりを柔らかく照らし出した。
「やったか!?」やりきってません。もうちょっとだけ続くんじゃ。




