#1-5 絆の語らい、そして動乱へ!
「うっぷ……あー、調子乗りすぎた…………」
「なーに、やってんのさ王子サマ」
「全くだ……なんかいつもより体が軽くてなぁ……」
お昼過ぎの戦闘後。
せっせと桜肉を捌く片手間で語らう。
三半規管でも回ったか、気合いで解体包丁を作って割とすぐダウンした。
「だいじょーぶ? 肩でも揉む?」
「コレが必要なツラに見えるか? このプリップリの幼な顔がヨー?」
「まあ見えないけど……さぁ?」
童顔を指す指ににゃははと笑い、それでもと詰める。
「でも、キラキラ粉の自打球とか浴びてるんじゃない? ピヨちゃんだけじゃ足んない所もあるハズだし……ほら塗り薬もあるよー?」
「ったく……わーったよ、お手柔らかにな」
しかたなく、と背を出すフィーに薬をぬりぬりマッサージしながら、二人して先の戦いを振り返る。
主な議題は、あたしの戦闘能力についてだ。
「…………にしても、飛び回りながら挑発弾撃って囮役、オマケにそこそこの常時回復か。まあまあの働きだと思うが……いやお前なんで追放になったんだ?」
「まーその……ジャマだってさー」ぽりぽり頭をかきながら答える。「きょうび火薬やら合体技? でワンパンするのばっかりだし。わざわざ囮役がどうのとか言ってる時代は終わったんだってさー」
「あー…………」
「元から火属性ってわりと不遇気味だったし。その上無い火力を出せって言われるようになったらもう……ネ」
結局は、時代の流れに飲まれたカタチ。
簡単に倒せるならそれに越したことはない。毎日の事なら尚更だ。
魔獣からボロボロ火薬が取れるようになった以上、それを使えば理論上は誰でも一撃必殺が可能。細かいコト考えて戦うの自体が否定されつつある。
時代を変えるほどの目標も自我も無かったあたしは、あっさりと世界の端っこに押し流されてしまったのだ。
いっそそれでもいいか……とどこかで思っていたのもあるが。
そんなあたしを庇うように。
「悲観するなよ……お前には、数字や序列に出にくい才能があるんじゃないか?」
「へ?」
分からない顔ゼンカイであろうあたしへ、続ける。
「世間じゃSランクだのFランだのと、無理して序列つけてるが……お前はそういうのじゃー攻守にF判定が下るタイプだろ」
「ウッ……!? まあそれは、否定できないかも……」
防御はもうちょいあると言いたいけど、攻撃力なんてゼロ同然だ。多少早く飛び回れるからって、お呼びがかかる事なんて稀だった。
だけども、フィーは見透かすように。
「だがそこに出ない、人としての能力に恵まれてるように見える。例えば、場を明るくする才能とかな」
「え…………あ、あはは、照れるって……」
捌いた肉を焚き火にかけながら、照れくさく返す。
「……最近、頑張れる理由を掴んだから……そのおかげだよ、たぶん」
「なら、それを持って何をしたい?」
「えっ……」
「灯った炎の使い方は自由だ。お前は、エイル・クロースはここからどこへ行きたい?」
獣肉が香ばしい音を立てて焼けていく……
が、一部焦げくさくなって、慌てて場所を治す。
……別に追放への復讐とか、世界に迷惑かけたりとかは望んでない。
ならなにをしたい?
何を目指したい?
「あたし、は……」
と、ブォンと起動音が。
「へ?」
『さて追放解除選手権、今回紹介しますのは『神性』アポルン。彼女は約半年間の眠りを越え無事追放解除となるのですが、果たして元パーティーとの復縁はあるのか! 早速評価値を見ていきまっしょう! はいドン! 攻撃F、防御F! もう、ゼンゼンダメ!! 彼女を作った神サマでも居るなら文句言いたい! どう足掻いてもネタにするしかない弱さがそこには────』
「…………なんだ誤タップか」
やかましい男性の声が響き、フィーはタップ一発で黙らせてしまう。
「あー……最近増えたよねー、配信者。ダンジョンに潜らないのも結構居るし」
「ああ。まさか自治政府サマが推してくるとはな……」
配信者。
その存在は今や、ぶっ潰れた旧時代マスメディアに取って代わり人々を繋いでいる。このおかしな花の存在も大きいが、単純に娯楽不足だったのだ。
人々に熱を取り戻す希望。
爆速で情報を伝え合う快感。
色とりどりの輝きに酔う欲求が、星の数ほどの配信者を産んだのだ。
「…………」
「興味あるのか?」
「えへへ……わかっちゃう?」
とろり、溶けかけた顔で。
「なーんか引き寄せられるっていうか。参戦してもないのに、生まれ前からここに居たような……性に合ってる気もするしサ」
実家のような安心感というか、なんというか。
あるいはご先祖サマかなにかが、あたしの背中を押しているのか?
「きっと、遺伝子にでも刻まれてるんだと思う」しんみりと語らう。「あの騒がしさが。おとーさんおかーさんの代ら辺でどっぷりとさー」
「なら、やってみるか?」
「ウッ……」
いざやるとなると浮かばない。
たまらず巻き込む方に向かってしまうワケで。
「いやま……ね? あ、いーっそ二人でやっちゃう? ホラ正体バレがマズイなら鎧つけたままでさー!」
「ばーか、顔出しなしの配信でもする気か?」
「それが前はあったみたいよ? おじさんが美少女のガワで話したりとかー♪」
「マジか……何でもアリかよオイ……」
フィーが旧時代の闇に引き気味のモードに入った、
その時だ。
────ヴーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!
「なんだ? 何が…………」
「緊急発信音……!? どこのどちらサマ?」
けたたましい音が鳴り渡る。
配信花の画面には、非常事態を判断したらしい配信者が映っていた。
『こちら実況系配信者のキャラメイルです! 大変です! 要塞市街西部地区に巨大な魔獣が現れ……いやぁああああ!!!』
女のヒトを割り込んで画面に映るのはとんでもない化け物の姿。
一瞬だけ酷い場面が映り……すぐ砂嵐の画面に。
「どうやら、ただ目立ちたくて非常ボタン押したってワケじゃ無さそうだな……」
「何さアレ…………街が!?」
「アイツはドリモールス…………死ぬほど強くて厄介な魔獣だ!」
旧知の仲でもあったのか、これまでにないくらいの冷や汗をかくフィー。
だけどもあたしはしっくり来なかった。見た事ない魔獣というのもあるけど……
「言うて街のど真ん中でしょ? だったら逆に大丈夫なんじゃ……?」
向こうには腕利きの戦士や配信者、自治政府サマ子飼いの火薬部隊だって居るんだし……
そう思っていたら、見透かしたような返答が来る。
「馬鹿言え……お前が今思い浮かべた、そのどっかに混ざってるバカがやらかす前に対処しなきゃいけないんだよ!」
「はい?」
きょとんと。
獣はただ狩ればいいと学び、倒すことの疑問も乏しかったあたしは、なんの理解もできていなかった。
「アイツは倒したらマズイんだ…………今より大変な事になる!!」
言ってることは大して分からないけれども。
フィーの深刻な顔だけが、何もわかってないあたしにも深刻さを伝えていた。
◆
「なんだよおい…………なんだってんだよぉ!!??」
そしてハリボテの要塞の中。
戦塵が舞う中、ひび割れた顔で惑うのは…………エイルを追放した張本人、リーダだった。
〈二号ちゃん別に博愛主義とかじゃなかったんですね……??〉「いやま、今でもフツーに狩る時は狩るんだよねー?」




