#1-4 絆の一時、されど牝馬は水を差す
「うっま!! お前、なんでこんな料理上手いんだ……?」
「にゃはは……リーダにはずいぶん叩き込まれたからね」
ぱちぱち焚き火と、とろっとろに煮込んだ獣のスープを囲み談笑。香草とスパイスがたっぷり効いた自慢の品だ、濃いめの味付けで食もお酒もよく進む。
料理の腕には裏打ちされた自信がある。
リーダのパーティーに入る者は、最初に食料調達と料理を学ぶ。
単騎での生還能力を上げることが自信に繋がり、平時でも無駄な緊張が消え戦闘力の底上げに繋がるのだとか。
「……しっかしいいのか? 書類上はフリーなんだろう。俺なんかに付き合ってて、自分の立場をさらに悪くしちゃあいないか?」
「心配ご無用♪ 付き添うついでにいい感じの薬草ポイント巡れるからもうガッポリよ♪」
「……………………なるほど。ちゃっかりしているんだな」
冷や汗かかせる程のことはしてない……と思うのは傲慢なのだろう。
野草を採るにも才能が要る。
ヨモギやフキはそこらで採れる立派なごはんだけど、それを生かす人は少ない。手間が面倒だったり、場所や時期によっては質が悪かったりするからだ。夏のヨモギとか食えたもんじゃない。
薬草だってそうだ。地下茎でわらわら繁殖するけど、だからと考えナシに根こそぎ採って、薬やジュースにしてもあまり上手くない。あまり手が入らず、かつ程よく成長した葉はあるところにしか無かったりするのだ。
今ぐびぐびしてるのはその成果のひとつ、薬酒だったりする。心も体も生き返る逸品で────
「あー、自慢話にふけるのはいいが……そろそろお客さんがお待ちかねのようだ」
「……?」
アレ声に出てた? と思いながら振り返る。
と。
『クケケケケ エエエエエエ !!』
そこには……………………馬の胴体に、イルカの顔がヒレごと生えたバケモンがいた。
「…………………………うーん……生理的にムリかな?」
「『魔獣』ルドルフイーン。通称馬イルカ。進化をミスった結果、陸地を水びたしにするばかりになった厄介者。生かしていたら百害あって一利なしってヤツだ」
「まあその……害獣ってコトね? 遠慮容赦なく全力でぶっ倒した方が良いってヤツね?」
「そうだな。 あ、コイツ全体的に肉質良いが接合部が溶けそうなほど美味いんだってよ」
「なにソレ楽しみすぎるじゃん! 狩ろ狩ろー♪」
なーんて失礼すぎる会話を知ってか知らずか怒り心頭かのように。
ルドルフイーンの暴力が来る。
『クケ………… クケエエエ エエエエエ!!』
「ちょ……やっば!?」
ばしゅしゅ!! と横殴りの暴風雨。
狂ったように水鉄砲を飛ばしてくる。
こんな見た目でも魔獣カウント。その水量は小さな身体の体積を遥かに超え、確かなチカラとなっている。
状況から見て、料理の匂いにでもつられたのかもしれないけど……
「ごめんね……あげないよ。飛べぇピヨちゃんッ!!!」
こっそりごはんを食べてたピヨちゃんが目覚める。
どくんと脈打ち脱皮みたいにおっきく進化。
チカラが味方するのは魔獣だけじゃない。
一気に成体になり、あたしを乗せて飛び立つ。
そして上空より発砲。
「うららららららららららららららーーーー!!」
────すぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱんっ!!
『クケーーーー!! …………クケ? クッケッケッケ!!』
「わかってたけど!! 効かないの知ってたけど笑うのはカンベン!!」
悲しみに怒り混じりに急降下。
からの怒りの翼うち。
しかしもう、ルドルフイーンは揺らぎもしない。
『ク…………ケェッ!!』
「むぅ!?」
水流をあえて、正面から当てず横薙ぎに。
完全に学習され、バランスを崩し。
「……ずげぶっ!!!」
ずがんがっしゃんと頭から墜落……なんとみっともないのか。
ま、コレでいいんだけど。
────ざくっ。
『グ ゲッ!?』
「いい目立ちっぷりだ。輝いてるよオマエ!!」
フィーのチカラ。光る剣が突き刺さり、ざっくり背中から土手っ腹までを貫通していた。
それでも倒れないあたりはさすが魔獣……頭もマシな方なのかすぐに剣を抜いた。刺さったままなら侵食攻撃にやられてたろう。
でもあたし達はまるで雲らない。
「問題ない。あと二回も打ち込みゃ狩り取れる。エイル、まだ飛べるか!?」
「トーゼンッ!! 任されたよフィー!!!」
鎧を纏った王子サマが全力を出せるように、空高くへ。
意識を吸い取る。
『クケ……クッケエエエエ エエエエ!!』
「おーにさーんこーちらー! てーのなーるほーうへー!!!!」
もう覚えた。
もうしくじらない。
そう心に誓い、パーティーに居た頃を思い出しながら…………あたしはルドルフイーンの水鉄砲を避けて避けて避けまくるのだった。




