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第11話「結成! 魔法少女隊 前編」【Fパート 駐車場の住居】

 【7】


「……これで終わり?」

「これで終わり」


 ホノカから出たオッケーサインを受けて、華世はその場にしゃがみこんだ。

 改めて、駐車場の一角に出来上がったテントを見上げる。

 華世は二人がかりでよく、人が寝泊まりできるものを組み上げることができたなと自分で感心していた。


「あとは内装。明日やるつもりだから」

「ちょっと中を見せてみなさいよ。おおー」


 カーテンのような入り口をくぐり、思わず感嘆の声を漏らす華世。

 中は広々……と言うには及ばないものの、しっかり人間ひとりが暮らせそうなくらいの空間が出来上がっていた。

 ここにカーペットを敷き、イスやテーブルを並べてベッドを組み立てれば、はれてホノカの城の完成である。


「……勝手に入らないで」

「ケチケチするんじゃないわよ。これから同じ釜の飯を食う仲間なんだから」

「仲間……」


「そう、仲間ミュよ! これでようやく魔法少女隊が結成だミュぴぎゃ!」


 甲高い小動物の声に一斉に振り返るふたり。

 華世は半ば反射的に手元にあった丸められたテーブルクロスを掴み、虫を叩くようにミュウを撃墜した。


「ひ、ひどいミュよ!」

「あんたねぇ、勝手に出てくるなって言ったでしょ。近所で噂になったらどうすんのよ」

「今は夜だから大丈夫ミュ!」

「そういう問題じゃないっての」


「華世……それは?」


 華世に両羽を掴まれ空中でもがく青いハムスターを指差し、ホノカは不思議そうな表情をしていた。

 魔法少女の身である彼女なら、妖精族は見た経験がありそうなものなのだが。


「これ、ミュウっていう妖精族らしいわよ。あたしを魔法少女なんかにしたヤツ」

「妖精族……こういうタイプのもいるんだ」

「あんたが出会ったのってどんなの?」

「最初は男の子の姿をしてて、私に力を与えたあとに白い小動物みたいな姿になった。そして、死んだ」

「死んだ?」


 華世に詰め寄られ、顔をそらし言葉に詰まるホノカ。

 辛うじて絞り出したように、彼女は言葉をつづる。


「妖精族を追ってたツクモロズに、殺された。私は……あの子の名前すら知れなかった」


 この言葉を聞いて、一番落胆していたのはミュウだった。

 同族と会えるかもと期待をしていたのかもしれない。

 彼も、華世の助けが遅ければ命を失っていた立場でもあるのだ。


「ま、落ち込んでてもしょうがないわよ。前向き前向き」

「金持ちは心が広いって本当なんだ」

「金だけの女だと思うとケガするわよ」

「もうした」

「……それもそうね」

「「ぷっ……あはは」」


 ふたりの小さな笑い声が、テントの中に響く。

笑いながら、華世はふと懸案事項を思い出して表情を真顔に戻した。


「そういやミュウ、あの…… ももだったわね。あの子もホノカと同じように妖精族から力をもらったのかしら」

「その可能性は少ないミュ。ミュたち妖精族にとってツクモロズは相容れない敵だミュ」

「でも、命惜しさにツクモロズの言いなりになってるやつがいる可能性もあるんじゃない?」

「それは……完全否定は難しいミュね……」


 華世の中の推論としては、ツクモロズに捕らえられた妖精族が ももに力を与えた。

 そう考えるのが自然であるが、論に穴がないわけではない。

 それが可能であるなら、すでに妖精族の世界を支配しているツクモロズ勢力が、ツクモロズ魔法少女軍団でもを作っているはずだ。

 人ひとりをキャリーフレーム1機分に相当する戦力にできる魔法少女というシステムは、敵にとっても魅力的なはず。

 できない理由があるのか、それとも……。


「ミュウくん、だっけ」

「ホノカちゃん、何ミュ?」

「今更かもしれないけど……魔法って何なの? この力はどこから来て、何によって強さが決まるの?」


 ホノカの投げかけた疑問。

 それは、人間には有り余るエネルギーの出どころを問うものだった。

 その質問に対し、少し意気消沈していたミュウが急に生き生きとしだした。

 

「魔法とは、魂の力だミュ!」

「魂……」

「魂の力はそれイコール魔法の力だミュ。華世はすごく強い魔力持ってるから、魂がすごく尊大なんだミュな痛たたたミューー!!」


 失言をした青ハム野郎の両頬を引っ張り、びろーんと伸ばす華世。

 一方ミュウの解説を聞いたホノカは、少し悲しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」

「いや、私の魂って弱いんだって思って……。魔法、あまり強くないから機械篭手ガントレットに頼ってて」

「強すぎても仕方ないわよ。あたしなんて魔法使った瞬間に宇宙ステーションが吹き飛ぶもの」

「ええっ」

「それに比べりゃ応用できるだけあんたのほうがマシよ。あたしなんて、負け戦も少なくないから」


 華世はそう言いながら、見せつけるように義手を外し、ぐったりした腕を見せる。

 手足を喪い義体に代えている。

 その事実の裏に潜むものを、華世は見せていた。


(あいつにも、魂あるのよね……)


 ホノカに義体を見せながら、華世の脳裏には ももの顔が浮かんでいた。




    ───Gパートへ続く

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― 新着の感想 ―
[良い点] ホノカちゃんが学校に通いたいって言うのが、凄く可愛くて親近感を感じました。 少しずつ人間味が出てきてるのがいいですね。 次回も楽しみです。
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