表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/321

第1話「女神の居る街」【Gパート 少女の戦い】

 【7】


「おらおらおらーー! この娘の頭がふっ飛ばされたくなけりゃ道を開けなさぁぁい!!」


 華世はそう叫びながら左脇に抱えたリリアンに義手の銃口を押し付け廊下を爆走する。

 当然、マリアの命令を受けたであろう警備員達が立ちはだかるように現れる。


「止ま──リリアンお嬢様っ!?」

「邪魔ァッ!!」

「ごふっ!?」


 人質を見て狼狽えた警備員の顔面に飛び蹴りを食らわせて排除する華世。

 抱えられたままのリリアンが、抗議をするようにポカポカと華世の体を叩く。


「離してよ華世お姉ちゃん! ママをどうしたの!?」

「勘の悪いお子様ねえ。あいつは、あんたの母親なんかじゃないの」

「どういうこと……!?」

「あいつはツクモロズっていう……バケモノなのよ」

「つくもろずって何!?」

「モノに意志を宿らせて生まれる存在……そして魔法少女の敵よ」

「魔法少女の敵……?」


 空想の産物だと思っていた魔法少女という存在が、実在したことに驚いているのだろうか。

 それとも、母だと思っていた存在が怪物にすり替わっていたということを聞かされ困惑しているのだろうか。

 心の奥底で少女の戸惑いを感じ取っている華世ではあったが、彼女を励ましている時間など無い。

 廊下の曲がり角を1,2個ほど曲がったところで正面に、銃を構えた警備員の列が現れた。


「リリアンお嬢様がいるが、どうする!?」

「マリア様の命令だ。気にせずに撃て!」


「しょうがない連中ねぇ……」


 今にも発砲しそうな連中を前に、華世は右腕の義手に目を向ける。

 さきほど銃弾を受け止めたV・フィールドは短時間に無理しすぎたのでエネルギー不足。

 であるならば、今とれる手段はひとつ。


「そおいっ!!」

「きゃああっ!?」

「お嬢様っ!?」


 警備員の集団に向けて、おもむろにリリアンを投擲とうてき

 彼女が宙を舞い、警備員達があっけにとられている僅かな隙に華世は右腕の義手の、手の部分を射出。

 放たれた鋼鉄の手は天井の電飾を掴み、手首と繋がったワイヤーを巻き取ることで華世の身体を飛翔させる。

 ミシリ、と天井が音を立てたところで手を離し、空中でリリアンを受け止め警備員達の後方へと着地。

 同時に天井が崩れ、男たちは悲鳴を上げながら瓦礫に埋もれていった。


「あー! お家壊した!」

「狙われてたのにそっち? 呑気ねぇ……」


 再びリリアンを抱えて走り出した華世は、窓越しに裏庭に立つマリアの姿を確認する。

 見た感じ、庭は周囲を高い塀で囲まれた行き止まり。

 仕留めるならここしか無い、と華世は走る足を早めた。



 【8】


 裏庭の入り口に差し掛かった華世は、廊下の床にリリアンを下ろす。

 何故降ろされたかわかってなさそうな彼女に、華世は屈んで目線を合わせてからまっすぐに顔を見つめた。


「今から、あたしはあんたの母親と……同じ姿をした敵を倒すわ。それは、あんたにとって親を殺されるような光景。見てはダメよ」

「あの人がママじゃないなら……私のママはどこにいるの?」

「……さあね。覚悟だけはしておきなさい」

「それって────」

 

 リリアンの言葉を最後まで聞かず、華世は裏庭へと足を踏み入れる。

 奥に屋敷の2階ほどの高さの巨大な戦士像がそびえ立つ、若草色の芝生に包まれた美しい庭園。

 その像の前で立ち尽くす敵へと、華世はゆっくりと歩を進めた。


「逃げ損なったか、諦めた? 素直に降伏すればサクッと楽にしてやるわよ?」

「諦めた、だって? 誘い出されたとも知らずにさぁ」

「へぇ? 何に誘われたのかしら?」


 不敵な笑みを浮かべるマリアが、石像の台座へと手をかざす。

 台座を通して、黒い稲光が戦士像を取り巻くように走り、バチバチと激しい音を唸らせた。

 地響きとともに動き出す戦士像。

 台座から巨大な片足を上げた巨像は、周囲を揺らしながら芝生の床を踏みしめた。



    ───Hパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ