表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/321

第6話「彗星の煌めき」【Jパート 不穏な予兆】

 【9】


「──というわけで、僕らは無事にステーションを脱出した。というわけさ、チャンチャン」


 コロニー「クーロン」へと戻る帰り道。

 宇宙駆逐艦〈コリデール〉の一室で、華世と楓真ふうまは事の顛末てんまつを内宮たちに説明していた。


「これで危機が去ったんはええんやけど……なんやスッキリせえへんなぁ」

「ツクモロズだったんでしょうか~? その機械たちって」

「何とも言えないわ。状況的にステーションが廃棄された時からすでに暴走状態になってたっぽいし」


 これまで、ツクモロズの出現は金星圏でしか発生していなかった。

 けれどもステーションが放棄されたのは、どう考えても地球圏である。

 これまで地球からそういった怪物が現れたという報告はないため、この件は謎として残ることとなった。


「それにしても、さすがは人間兵器サマだ。わずか1アクションでステーションを消し飛ばすなんて、君は生きた大量破壊兵器だね」

「そう言われても仕方がないわ。助かったとは言え、あの力は過剰すぎるもの」

「でも、華世ちゃんが使おうと思わなければ大丈夫なんでしょ~?」

「そりゃあそうだけど……」

「だったら良いじゃない~。ビーム兵器だって、使いようによってはコロニーを壊しちゃう威力持ってるんだし~」


 気休め程度の言葉であったが、咲良の言うことは華世の心を軽くしてくれた。

 元から使うつもりではなかった力といえど、使えるからと邪険にされてはかなわない。


「優しいチームだね、この小隊は。ま、僕が帰った後もその仲でやって……おや?」


 話をまとめようとした楓真ふうまが、唐突に携帯電話を取り出し通話を始めた。

 電話越しに何らかの話を聞いているのか、時折フンフンと軽い頷きをする。

 そして最後に「わかったよ」と一言だけ言って、彼は通話を止めた。


「何やったんや、常磐ときわはん?」

「……どうやら、僕はもう少し君たちの世話になりそうだね」

「え~っ!? 楓真ふうまくん、何があったの!?」


 両手を広げてやれやれといったポーズをする楓真ふうま

 一呼吸置いてから、割と涼しい顔で彼は言った。


「僕が務めていたコロニーのアーミィ基地、潰されちゃったんだって」

「潰された!? いったい誰にや!?」

「灰被りの魔女っていう傭兵の仕業、だそうだよ」



 ※ ※ ※



 自らの手で灰燼に帰したコロニー・アーミィの基地を、丘の上から見下ろす少女。

 携帯電話の画面に映る傭兵ポータルサイトへと、任務完了の通知を送る。


「アーミィ潰しちゃったら治安が心配だけど……まあ、過剰に防衛税を取っていた悪徳支部長が実権握ってたトコだったし、放ってはおけないよね?」


 個人的な恨みがあったわけではない。

 高額の報酬が支払える何者かから、彼女が所属する傭兵ポータルサイトへと依頼があっただけである。

 あくまでも傭兵として、この少女は破壊行為を行ったのだ。


 しかし、決して殺しをやったわけではない。

 重軽傷者こそ出はしただろうが、巧みな技術で人死にを出さず、拠点の機能だけを的確に焼き払ったのだ。


「さーて、次の任務は……金星? 久しぶりに行くことになるなぁ……どれどれ」


 自分宛てへと送られた仕事へと、少女は目を通す。

 報酬は破格、期限も長め。

 そして仕事の内容は……。


「……特定人物の無力化。相手は……ああ、あの葉月華世って女の子かぁ。確かに、私向けの仕事よねー。だって……」


 首から下げたロザリオの、その中心に埋め込んだ赤い球体を、少女は優しく握りしめた。


「私も、魔法少女だもん」


 ──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.6

【マジカル・カヨ 第二形態】

身長:1.56メートル

体重:85キログラム


 左脚を失った華世が、新しく戦闘用の義手義足を身に着けた姿。

 義体にはキャリーフレームとの戦闘を想定した高火力武装が多数盛り込まれているため、総重量が第一形態よりも20キロ以上増量している。

 背中には動力源として薄い大容量バッテリーを背負っており、宇宙活動のためのスラスター・ウィングもバッテリーのカバーから伸びている。

 このバッテリーは背中の動きを阻害しないように蛇腹状になっており、色は服装に合わせて目立たないピンク色となっている。

 スラスター・ウィングは未展開時には斜め下に向いており、使用する際は一度斜め上へと向きを変えてからサブスラスターを斜め下へと伸ばす構造をしている。


 義手の大きな変更点として、機関砲が2門の多機能ビーム・マシンガンへと換装されている。

 これは射撃兵装としての使用のほか、ビーム刃を形成しての格闘戦をも可能としている武装であり、1門ずつ取り外して一本ずつのビーム剣としての運用も可能である。

 義足には足裏からヒートナイフを飛び出させる機構が装備されている。

 このヒートナイフは義足の排熱で加熱され、赤熱した刃はキャリーフレームの装甲ですら溶断することが可能である。

 また、脛には厚めのシールド装甲が付いており、この内側には人対機マイクロミサイルが内蔵されている。


 なお、非変身時には日常用の義手義足を身に着けており、右腕こそ第一形態と同じ武装義手であるが、義足に関しては非武装のものとなっている。




【ビーライン】

全高:7.9メートル

重量:6.9トン


 数年前にクレッセント社が開発した軍用量産キャリーフレーム。

 イビルアイという怪物から名前をとっただけあり、頭部のカメラアイが巨大な眼球のような形状をしている。

 装備の特徴としては全身の前面に展開可能な大型ビーム・シールドを左腕に装備している。

 基本携行装備は命中性を考慮しビーム・ライフルではなくビーム・マシンガン。

 従来どおりの有人操縦型と無人機型の二機種が生産されており、施設警備などの任務には無人型が有難がられている。


 【次回予告】


 華世の前に、一人の少女が姿を表す。

 その少女は、灰被りの魔女という異名を持つ傭兵だった。

 深夜の町中で、変身の呪文が交差する。


 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第7話「灰被りの魔女」


 ────少女の殺意が、困難を超える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の『魔法少女』の登場が激熱すぎます…! 常盤さんも華世ちゃんたちの元に残る事となって個人的に咲良さんとの関係の進展が気になります! 次回予告・機体説明、今回も激熱で最高でした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ