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第6話「彗星の煌めき」【Iパート 魔法炸裂】

 【8】


 華世は両足を床につけ、義足へと前に進むイメージを送る。

 すると足の裏に付いていたローラーが回転を始め、火花を上げ駆動音を唸らせながら華世の身体ごと床を滑走し始めた。


「まったく、機械人形オートマトンの暴走かい!? そりゃあステーションに人がいないわけだ!」


 後を走る楓真ふうまは腰にぶら下げていた手榴弾を手に取り、ピンを抜いて後方へとぶん投げる。

 炸裂音と共に天井が崩れ、機関室へつながる通路が瓦礫に塞がった。


「これで後方は良いが……前からも続々とお客さんだね!」

「こっちは、あたしの仕事よっ!!」


 前方から進路を塞ぐように立ちはだかった機械人形オートマトンが、立方体のボディの底部から機関銃を唸らせる。

 華世はVフィールドを展開し飛来してきた実弾をキャッチ、投げ返して怯んだ所へ手首のビーム・マシンガンを叩き込んだ。

 赤熱した風穴を開けられた機械人形オートマトンは沈黙。

 壊れたボディを勢いよく蹴っ飛ばし、後方の別機体へと衝突させる。


 同型機とぶつかったことで互いの装甲が破損し、中身を露出させる機械人形オートマトン

 通路の端を通り残骸の横を通り抜ける華世であったが、その内部に見えた正八面体に目を疑った。


「……なぜツクモロズのコアが? もしかしてこいつら全部に?」

「どうしたんだい、スピードが落ちてるぞ!」

「なんでもないわ。……また来たっ!」


 通路脇の個室から現れた機械人形オートマトンへと、華世は鞘に入ったままの斬機刀を握りしめた。

 床をかすめるように高速で振り上げ、放たれた電撃波が正面の機械群を貫くように走っていく。

 電撃を受けた機械人形オートマトンたちは次々とスパークしながら地に伏し、華世と楓真ふうまはその脇を走り抜けていった。


「あとちょっとで出口よ!」

「こいつらも、さすがに宇宙までは追っては来れないだろう!」

「って、ああっ!?」


 格納庫を目前にして、正面に立ちはだかった機械人形オートマトン

 それが突然赤く輝きだし、大爆発。

 元から壊れていたのか自爆なのかは定かではないが、崩れてきた天井で通路は完全に塞がってしまった。


「出ていけって言う割に、逃さないように立ち回るんじゃないわよ!」

「……こりゃあ参ったねえ。僕ら、詰んだんじゃないかい?」


 ガシャガシャという足音に振り向くと、数え切れない数の機械人形オートマトンが通路を埋め尽くしていた。

 華世はとっさに楓真ふうまを守るように前へ飛び出し、Vフィールドを展開する。

 瓦礫を撤去しようと背を向ければ機銃で蜂の巣。このまま守りに徹すればエネルギー切れで打つ手なし。


「流石にこの瓦礫を手榴弾では吹っ飛ばせないだろうねえ。距離も取ろうにもこの状況だ」

「Vフィールドは……もってあと1分ってところかしら」

「どうする、マジカル・ガール? おとなしく白旗でも振るかい? 連中がそれで降伏を受け入れてくれるとは思えないけどね」

「どうすりゃいいのよ……考えろ、考えるのよ……」


 そう言いながらも、頭の中には一つだけ方法が浮かんでいた。

 問題はその方法はこれまで行ったことがなく、けれどもどのような結果になるかが予想がついていること。

 これまでも度々あった、知らなかったことを知っている状態だ。


 まもなくエネルギーが切れるという警告音が、義手から鳴り始める。

 そんな中であっても、機関銃を放ちながらも近づいてくる機械人形オートマトン

 

 華世は、決断をした。

 義手の右腕を前に突き出したまま、ステッキが収められている鋼鉄の二の腕へと左手をかざす。

 そこからひねり出されたように現れた白い球体を、左手で浅く握った。


「……何をするつもりだい?」

「あんたが見たがってた魔法を……使ってあげるわ!」


 Vフィールドで握っていた実弾を間近の機械人形オートマトンへと投げつける。

 同時に華世は、左手に握った魔法の球体を、やけくそ半分に床へと叩きつけた。


 瞬時に巻き起こる凄まじい閃光。

 エネルギーの本流が唸る轟音の中に、硬いものが砕ける音が絶え間なく鳴り続ける。

 十秒ほどの時間が経ち、光が収まった。


「こんなことになるから……あたしは、魔法を使いたくなかったのよね」


 機械人形オートマトンで埋め尽くされた通路だった場所。

 その方向に今見えるのは、星の光で埋め尽くされた真っ黒な宇宙。


 華世たちのいるステーションは、今立っている通路と後方の発着場を残し……えぐり取られたように跡形もなくなっていた。



    ───Jパートへ続く

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