第6話「彗星の煌めき」【Bパート 謎の男】
「……誰?」
「おっと失礼。僕は────」
「わかりますか!? 人対機ミサイルの良さがわかるんですね!?」
男の自己紹介を潰すように、結衣が食い気味に前のめりになる。
彼女の目は同好の士を得た事による喜びかキラキラに輝いており、気がつけば男の両手を包み込むように握っていた。
「人間でキャリーフレームと戦うのは無謀だが、ロマンの果てだからね。しかもよく見たらプラズマ粒子弾頭じゃないか」
「はい! 着弾点から直線的にピンポイントで破砕するから、貫通力も高いし二次被害も出にくいんですよ! それにプラズマ弾頭が炸裂したときの青白い爆炎が大好きで、私……!!」
「ストップ、ストーーーップ!! 結衣、あんた話が進まないから止めなさいよ! そこの人も困ってるわよ。で、あなた誰なの?」
「やっと名乗らせてくれるのか。僕は常磐楓真。地球圏から出向してきたキャリーフレームパイロットで、階級は少尉だ。よろしく、ドクター」
いつの間にか頬杖をついてあくびをしていたドクター・マッドへと、楓真が軽い会釈をする。
ドクターはドクターで、片手を上げて「よろしく」と言いながら気だるそうに立ち上がった。
「まあとりあえず少尉クン、意気投合したその娘っ子でも連れ出して、一緒にあいさつ回りして来なよ。ほれ散った散った」
「あーっ、ひどいです博士ぇ! その義体の基礎設計したの私なんですよぉ!」
「君の才能は認めるケドね。説明の邪魔をするなって言いたいだけ。少尉クンも、手足の一本でも取れたらまたおいで」
「……できればお世話にならないように頑張るよ。では」
眉を引くつかせながらそう言った楓真は、後ろ手を振りながら去っていった。
後ろ髪を引かれるように数度、振り返ってからポニーテールを揺らしながらその背中を追う結衣。
ようやく静かになった研究室で、華世はへぇと一つ乾いたため息を吐いた。
※ ※ ※
「へぇ、義肢装具調整士か。若いのに立派だね」
「えへぇ~そうですか? まあまだ見習いなんですけどねー!」
薄暗い廊下を歩きながら、結衣の心は身体ごと跳ね回っていた。
この14年弱の人生の中、初めてかもしれない話の合う人間。
それが若くて年上の青年ともなれば、思春期の少女にとっては運命を感じる出会いであった。
ポチりとエレベーターの呼び出しボタンを押し、二人で足を止める。
「常磐さんって、地球から出向って言ってましたけど……」
「今度の作戦に僕の専門知識が必要みたいでね、わざわざ呼ばれたわけさ。地球出身者を見るのは初めてかい?」
「いえ、この基地にもひとりいるんですよ。華世ちゃんとコンビをよく組んでる────」
「ええっ~!? ど、どうして楓真くんがここにいるの~~~っ!?」
開いた扉の先に現れたのは、レディーススーツに結った髪。
エレベーターの中から、咲良が廊下中に響く絶叫を放った。
───Cパートへ続く




