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第5話「二度目の喪失」【Gパート 空中戦】

「やった……やったぞ!」

「やるじゃない、ウィル。……待って、何かレーダーに反応!?」

「ええっ、うわぁっ!?」


 爆発音とともに激しい振動。

 そして遠くに見える2体の翼竜型ツクモロズ。


「あいつ……一週間も姿をくらましていたのは、仲間を作るためだったの!?」

「今のはかすり傷だけど……あの敵、腕を狙っている!? ビーム・ライフルしかないのにこれ以上腕にダメージが重なったら……マズい!」


 ウィルが操縦レバーとペダルを器用に捌き、回避を交えつつ攻撃をする。

 しかし相手も素早い身のこなしで回避をしつつ、反撃とばかりに熱線を放射。

 運動性・攻撃能力共に同等な状況で、数で劣っているこちらが不利なのは、火を見るよりも明らかである。


 激しい回避戦の中、いよいよ状況が動いた。

 敵のうち一体が熱線を吐き、その攻撃中動きが鈍っているところにウィルがビーム・ライフルを叩き込む。

 最初のツクモロズを仕留めたときと違ったのは、敵がまだもう一体いることと、反撃をまともに食らってしまったこと。


「しまったっ!!」


 目の前の風景を縦に横切る、ビーム・ライフル。

 コンソールに映る警告表示と照らし合わせると、どうやら右腕に被弾し武器を落としてしまったようだ。


 華世は右腕の剥げた装甲越しに見える内蔵した変身ステッキをチラと見る。

 変身に失敗すれば力が足りないのは明白だが、これをやらねば敗北は必至だ。

 義手の手首を外し、伸ばしたワイヤーをパイロットシートの支柱へと、素早く巻きつける。

 驚くウィルが声を掛ける前に、華世はワイヤーを伸ばしつつコックピットから飛び降りた。


「ドリーム・チェェェェンジッ!」


 狙い通り、空中で華世の身体が光に包まれた。

 変身完了と同時に、失った左脚に身につけられるはずのソックスと靴が、風に流され宙を舞いどこかへと飛んでいく。

 けれども華世は真っ直ぐに落ちていくビーム・ライフルを目指し、やがて追いついた。


「こんのぉぉぉっ!!」


 空いた左腕と右脚を巻きつけるように、華世はビーム・ライフルのグリップへとしがみついた。

 同時にワイヤーの巻取りを始め、徐々にライフルごと身体をコックピットに向けて持ち上げていく。


「華世、無茶だよ!!」

「無茶は上等! 早く……ライフルを!」


 ミシミシと、巻き取られるワイヤーが悲鳴を上げていた。

 いかに頑強で引っ張りに強いカーボンナノチューブのワイヤーと言えど、紐くらいの細さでは人間よりも遥かに重いライフルを長時間支えるほどの強度はない。

 キャリーフレームの手が届く位置までライフルを引き上げると、巨大な手がグリップへと手をかけ華世ごと持ち上げた。


「華世、コックピットに!」

「こんのぉぉぉっ!」


 しがみついていたグリップから、ワイヤーを巻き取りつつコックピットへ飛び移る。

 同時にワイヤーが手首の方からブチッとちぎれ、特大の冷や汗を華世の頬を伝う。


「これで、ラストだっ!」


 華世が体を張って回収してきたライフルの銃口から放たれた光が、翼竜型ツクモロズを捉えた。

 空中で四散し、火の粉となって海面へと落ち行く敵だった残骸を見下ろし、華世はふうと大きなため息をつく。


「なんとか……なったわね」

「うん。だけど……華世、君のその格好は」

「ああ……どう説明しようかしら。話すと長くなるのよねえ……って、レーダーにまだ何か写ってるけど!?」

「えっ、まだいるのかアイツら!?」


 レーダーに点灯した3つの敵性反応。

 すでにズタボロの状態で先程よりも厄介な状態。

 しかし、ここに来て三度目の危機的状態は、直後にレーダーへと写り込んだ反応によって解消されることとなった。


「新しい反応……!? 識別、コロニー・アーミィ?」


 コックピットハッチ越しに見える空に、映り込む見慣れた機影。

 それは、内宮のものと思しき〈ザンドール(エース)〉と、咲良の〈ジエル〉だった。


 空域に突入した2機はまたたく間に的確な射撃をツクモロズへと浴びせ、あっという間に3匹の翼竜人をビームの光弾で消滅させた。


「あれって……華世を迎えに来たのかな」

「ええ、そうだと思う」


 思わぬ助けとなった仲間を視界に捉えながら、ウィルが操縦する〈エルフィスニルファ〉は二人が過ごした小屋のある島へと、高度を落として着陸した。




    ───Hパートへ続く

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