第34話「作られし者の楽園」【Kパート 思いもよらぬ相手】
【11】
格納庫へと戻った咲良たちを待っていたのは、ボディを取り戻したELの抱擁だった。
痛いくらいに強く抱きしめられ、顔を歪めながらも笑みを返す咲良。
「い、痛いよEL……」
「あっごめんなさい。咲良の成長が嬉しくてつい……」
そんなに伸びたかなと思いつつ、笑顔で駆け寄ってきた内宮たちへと笑顔を向ける咲良。
後から歩いてきたヒロコが、ペコリと丁寧に礼をした。
「勝利おめでとうございます。これにて修行も終わりでございますね」
「ありがとうございます。ムロレ先生は何と?」
「それが、彼の話を聞いてやれって」
「彼って……?」
咲良が首を傾げていると、ヒロコの後ろから先程戦った相手である男が姿を表した。
彼は包帯でぐるぐる巻きのままの腕で、咲良に握手を求める。
「いい勝負でした、咲良さん。間違いなく、あなたは強くなりましたよ」
「そうかな……それで、話って?」
「あーーーっ!!」
急に男を指さして叫ぶフルーラ。
腕と声を震わせる彼女の様子は、明らかにただ事ではなかった。
「どうしたんや、フルーラ!?」
「こ、こ、この人……もしかしてって思ってたけど……やっぱり!」
「……やっぱ、わかるよね。フルーラなら」
おもむろに、ゆっくりと目元を隠していたヘルメットを脱ぐ男。
その下からは、咲良にとっても見覚えのある顔が現れた。
「えっ……!?」
「やっぱり、ウィ……ウィリアムだったのね!」
さっきELが咲良にしたときのような動きで、涙を流しながらウィルに抱きつくフルーラ。
ウィルは彼女の頭を包帯が巻かれた腕で優しく撫でながら抱き寄せる。
「ウィル……生きとったんか!」
「ええ。あのステーションの爆発でかなり遠くまでふっとばされたところを、ムロレ先生に拾ってもらったんです」
「だったら連絡してくれればよかったのに!」
「ゴメン、フルーラ。つい最近まで怪我が酷くて動けなかったんだ。今回の最終試練は、俺のリハビリも兼ねていたんです」
「リハビリであの強さだったんだ……」
ある意味手負いの相手に苦戦していたのかと、少し落ち込む咲良。
しかし次に話したウィルの言葉で、その意気消沈は完全に吹き飛んだ。
「それに……俺は調べていたんです。華世の行方を」
「華世のて……もしかして、華世も生きとるんか!?」
「はい。詳しい話は後でしますが────」
そう言って、背負っていた箱から何かを取り出すウィル。
それは折れていながらも力強く銀色に輝く、大きな鋭い刃だった。
「────華世は間違いなく、今も生きています」
──────────────────────────────────────
登場戦士・マシン紹介No.34
【ウィングネオ】
全高:8.8メートル
重量:7.1トン
10年前に開発された、可変キャリーフレーム。
元々は青緑色の装甲をしていたが、ムロレの部隊が運用しているものはグレーの装甲にオレンジ色のアクセントが加えられている。
更に、外観は色以外に変わりはないものの駆動系は最新のものに置き換えられており、最新機と比較しても見劣りしない性能となっている。
戦闘機形態への変形が可能であり、セイバー、ライフル以外にも小型ミサイルの発射機能がある。
【次回予告】
師匠であり仇であった米倉を打ち倒した直後、爆発に消えた華世。
気がつくと彼女は色を失い灰色に染まった世界に横たわっていた。
そこで華世は、桃色の髪をした未知の魔法少女と出会うのだった。
次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第35話「色無き世界に咲く花は」
────たとえ世界が終わろうとも、花は咲き続ける。




