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第33話「変わりゆく“いつも”」【Iパート 狼狽】

 【9】


「あっ、テルナ先せ……」

「しっ……! 誰かいるぜ……!」


 遠くに見えた人影に声をかけようとしたももの口をふさぎながら、太い柱の陰に隠れるアスカ。

 ようやく見つけたテルナの姿ではあったが、その奥にもうひとつの気配を感じたアスカは警戒心を強める。


 しばらくじっとしていると、テルナと謎の人物の会話が聞こえてきた。


「やぁやぁ、僕の誘いを受けてくれて助かるよ。……どうした?」

「オリヴァー、貴様が転移してきた音だったか。なんでもない」

「……まぁいいか、君がここに来てくれたということは、取引に応じるということだよね?」


 オリヴァーとテルナに呼ばれた男が、その背後にいた一人の少女を前に出す。

 薄暗いので正確にはわからないが、テルナと似たような髪色をした短髪の少女。

 その身に纏う雰囲気は、テルナと瓜二つだった。


「君が華世の身柄を僕に預けてくれる代わりに、君が求めている僕のボディーガードを引き渡す。そういう取引を出したつもりだったんだけどね」

「……もうひとりはどうした?」

「近くを見回らせている。君が取引に応じてくれればすぐに呼び戻すよ」

「その必要はない。私は貴様に、ひとつの真実を伝えに来ただけだからな」

「真実だって?」

「……葉月華世は死んだ」

「なんだって……?」


 オリヴァーの顔が、その一言で歪み始めた。

 余裕の笑みは一瞬で消え失せ、浮かぶのは焦燥しょうそうと不安の色。


「嘘だ……彼女は、そんな簡単に死ぬはずがない!」

「嘘ではない。コロニー・サンライト周辺で起こったステーションの爆発。華世はあの中に居て、助からなかった」

「馬鹿なことを! 僕は知っているんだぞ、アーミィが華世を救い出したって、たしかに僕は……」

「それは別人だったんだ。そこにいるんだろう、アスカ」


 テルナに名前を呼ばれ、恐る恐る彼女の前へと姿を表すアスカ。

 歩いてきたアスカを見て、オリヴァーが悲鳴をあげる。


「そんな、姿かたちは華世そのものじゃないか……!」

「悪かったな。アタシは華世じゃなくてアスカってんだ。みんな勘違いしてたんだよ」

「か、感じられない……お前からは華世の気品が、理性が、精神が……まさか、本当に……?」

「……失礼なやつだな」


 ボロクソに言われて顰め面をするアスカ。

 そんな自分を放置して、テルナが一歩前に出た。


「これでわかっただろう。葉月華世は死んだ。だからお前との取引はできない」

「う、う……あうあうあ……お、お、お………!!?」


 声にならない声を発し、その場でもがくオリヴァー。

 その姿に、これまで無表情だった少女の顔にハッキリと焦りの感情が浮かんでいた。

 

「マスター、マスターしっかりしてください……!」

「うう……そんな、僕は、何のために……おお……!」

「スゥお姉ちゃん、スゥお姉ちゃん!! マスターが!」


 少女がそう叫んだ瞬間に、彼女とそっくり……だが髪の長い少女がどこからともなく姿を表した。

 下水の悪臭をプンプンさせる彼女であったが、慌てる妹とは対象的に冷静にオリヴァーを観察し、懐から瓶を取り出した。


「……跳躍」

「待て!」


 ヴン、という音とともに一瞬で消滅するオリヴァー一行。

 一方でテルナはしゃがみ込み、悔しそうに床に拳を打ち付けていた。


「お、おい……大丈夫か?」

「……私の妹なんだ、あの二人は。脳波越しに洗脳を解こうとしたが、できなかった。あの二人は、心からあの男に……!」


「テルナ先生ーーーっ!!」


 テルナの呟きは、肩で息をしながら走ってきたホノカの呼びかけにかき消された。

 妹を取り戻したい、という想いがこの女性にはある。

 それだけが、この一連の出来事でアスカが察せられたことだった。



──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.


【ハーコブネイン】

全長:510メートル

重量:不明


 宇宙戦艦のような姿をした超巨大ツクモロズ。

 アーミィからは戦艦級ツクモロズと呼ばれており、この名称はアスカの口から語られた。


 外見は仰向けに倒れた人のような形状をしており、側面に沿ってまっすぐに伸びた腕の先、人で言う指から光線を放って攻撃してくる。


 戦艦レベルの大きさを誇っているが、内部はほぼすべてがツクモロズの製造工場のような仕組みになっている。

 ここから無数のキャリーフレーム型ツクモロズを発進させ、アーミィの面々を物量で苦しめた。

 魔法陣にも見える強固なバリア・フィールドで生半可なビーム兵器ですら遮断する。


 アスカが魔法陣を分解し、核晶コアのある頭部を破壊したことで撃破された。

 生前にアスカが戦ったことあるツクモロズのようで、この敵を倒すために仲間の魔法少女たちに甚大な被害が出たようだ。

 


 【次回予告】


 束の間の平和を取り戻したコロニー・クーロン。

 この機会にと、内宮は咲良を鍛えるため、自身の師匠がいるという場所へと彼女を連れて行く。

 その場所は、人に作られし者たちが集う作られし者の楽園(ラウターズ・ヘヴン)だった。



 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第34話「作られし者の楽園」


 作られし者にも、永遠の命などは無い────。

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