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第33話「変わりゆく“いつも”」【Hパート 暗闇に迫る刃】

 【8】


 水滴が落ちる音が静寂の中に響き渡る。

 その中に交じるのは、自分たちが奏でる靴で石床を踏み鳴らす音。

 アーマー・スペースに向かっているとすれば……と歩を進めるホノカを先頭に、アスカたちは地下下水道を進んでいた。


「それにしたってヒデェ匂いだな……みんな大丈夫か?」

「私は平気だけど、桃色ちゃんは辛そうね」

ももにはお構いなく……うぇっ」


 定期的にえずくももの苦しそうな声に心を痛めつつ、歩みを進める。

 しばらく進んでいると、ホノカが扉の前で足を止めた。


「鍵が外されてる……やっぱりテルナ先生、このさきに行ったんだ」


 そっと扉を押し開けるホノカ。

 錆びついた金属のこすれる音がなる中、隙間から奥の景色が見える。

 薄暗い無機質な空間、という言葉が似合う風景にアスカはゴクリと息を呑む。

 先に進むか……と一歩踏み出した瞬間、何かが風を切る音がした。


「アスカ、危ないっ!!」


 そう叫びながら飛び出し、片足を振り上げて何かを蹴ったフルーラ。

 回転しながら宙を舞うのは、一振りの槍。

 暗闇の向こうから現れた何者かが、素早くその槍を拾い上げる。


「……みんな、先へ行ってください! ドリーム・チェンジ!!」


 再び変身し、ナイフを放った何者かのもとへと向かうホノカ。

 その姿を見て、アスカの脳裏に傷つき倒れた生前の仲間の姿が浮かぶ。


(でも、信じてやらなきゃだよな……!)


 後ろ髪を引かれる思いを抱きながら、アスカは扉の奥へと飛び込んだ。



 ※ ※ ※


 

 姿を表したのは、いつか見た赤い長髪の少女。

 両手で握った槍を構え、無表情な目でこちらを見る姿はあの日の記憶と同じだった。


「やめてください、と言っても聞かないでしょうね……」


 人を傷つけたくない、というポリシーは守りたい。

 だが、前の戦いでホノカはこの少女相手に激しい手傷を負う羽目になった。

 その痛い経験が、自分を臆病にする。

 けれど、今は背後に自分を信じる仲間がいる。

 そして、自分もあの時から成長をしている。

 自分の能力を、信じなければ。


 槍を振り上げ飛びかかってくる少女。

 着地際の斬撃をかわし、後方へ飛び退きつつ機械篭手ガントレットの金属部分で2撃目を受け止める。

 装甲で刃が止まり、生まれた一瞬の隙。

 その瞬間に、ホノカは機械篭手ガントレットの手のひらを相手へと押し付けつつ、イメージを浮かべる。


ッ!!」


 圧縮した空気の塊が、手のひらから爆風を生む。

 突如発生した風圧に、少女の軽い身体は持ち上がり数メートル後方へと勢いよく吹っ飛ぶ。

 そのまま彼女の身体が石床に叩きつけられそうになるところへと、風のクッションを精製。

 空中でボヨンと横に弾かれた少女は、そのまま流れる下水へと落下した。


「ハァ、ハァ……風の魔法も、少しは扱えるようになってきたみたい……」


 コロニー・サンライトで魔法のコツを掴んでから、ホノカは密かに魔法の練習を重ねていた。

 可燃ガスを任意の場所に流す以外への技術。

 それは、敵を倒すためではなく人を助けられたらと思って身につけたものだった。


「……あの少女のことですから、これで死にはしないでしょう。今は、テルナ先生を追いかけないと!」




    ───Iパートへ続く

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