表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/321

第31話「復讐の結末」【Dパート 蒼い炎】

 【4】


 氷の狼が連続で放つ氷柱つららの嵐。

 それを機械篭手ガントレットの薙ぎ払いと同時に生じた蒼い爆炎が飲み込み、かき消していく。

 直後にホノカの喉元目掛けて噛みつこうと飛び込んでくる敵。

 それを軽いステップで後方へと回避しつつ、カウンター気味に金属の拳で真っすぐにパンチ。

 そして機械篭手ガントレットから巻き起こる爆発が、相手を大きく吹き飛ばした。


(この吹雪の中でも、ガスを動かせる……!)


 先程までは吹雪の勢いに負けてロクにできなかった、魔法の風による可燃ガスの操作。

 服が白くなり身体に力がみなぎってから、それを難なく……いや、前よりも感覚的にこなせるようになっていた。

 それだけではなく、赤から蒼へと変わった炎の色。

 炎色の変化が表すのは、可燃ガスの燃焼効率が上がったことにほかならない。


(気体の組成が理想的な時にだけ見られる完全燃焼……ガスの構造が魔法で変わってる?)


 ホノカ自身が意識しているわけではない。

 より強い炎を、爆発を起こそうという気持ちが、自然に周りの気体を変異させているようだ。

 これが、使いこなした魔法の力なのかと少し畏怖しながらも、ホノカは構える。

 この場を生き残り、やらなければならないことを成すために。


 狼の遠吠えと共に雪面から伸びる氷のトゲ。

 ホノカは光の翼を羽ばたかせ、飛び退くことでその攻撃を回避。

 追うように放たれる対空砲のような氷柱つららの連射を、そのまま空中で身体を翻しながらかわしつつ、吹雪の中に敵の姿を確認する。


(二度と立ち上がれないくらいの、大きな一撃を……!)

 

 そう心の中で決意したホノカは、自分の背後へとガスを固め点火。

 爆風の勢いにのって、氷の狼へと急降下した。


「はあああぁぁぁっ!!」


 空中で何度も爆発を重ね、更に加速。

 流石に接近に気づいた敵が、その場を飛び退いた。

 ホノカはそれに合わせるように、地表スレスレで落下速度を殺すように爆発を起こし静止。

 直後に自分を敵へと押し出すように、特大の爆発を背後で生み出した。


「イグナイト・ブレイカァァァッ!!」


 爆風を背に受けた速度から放たれる、蒼い炎を纏った機械篭手ガントレットによるパンチ。

 速度と重量に熱エネルギーが乗った渾身の一撃は、まるでガラス細工を破壊するように氷の狼を粉々に吹き飛ばした。


 雪の上に着地し、機械篭手ガントレットが放熱のために蒸気を吹き出す。

 同時に起こし主を失った吹雪が止み、晴れ渡った人工の空。

 その青々とした輝きは、まるでホノカの勝利を祝っているようだった。


「……そうだ、リンさん!」


 勝利の余韻に浸りたい気持ちを抑え、リンの亡きがらへと駆け寄るホノカ。

 胴体を氷柱で貫かれ、血を流している彼女をどうしたらよいか考えていると……不意にリンの目が見開かれた。


「痛っっったいですわぁぁぁっ!!」

「リンさん!? 大丈夫だったんですか!?」

「レス、レス! どうしたらいいかわかりませんので、部分的に任せますわぁぁっ!!」


 血で染まった雪の上をのたうち回り叫ぶリン。

 彼女の頭頂部から生えた目玉が「しょうがねぇなー」とやる気のない声を出してから数秒。

 刺さっていた氷柱が排出され、胴体の穴がふさがったところでリンがゆっくりと起き上がった。


「ぜぇ、ぜぇ……人間を辞めてませんでしたら……死んでましたわ」

「そういえば、レスと一体化してたんでしたね……」


 リンがホノカを庇ってから意識を失うまで、あまりにも劇的すぎて意識から外れていた。

 彼女はコロニー・サマーでレスに乗っ取られたときから、人間に擬態した液体生物となっていたのだ。


「とにかく、これで敵は倒せましたわね。吹雪も晴れましたし、修道院へと戻り……」

「戻るにはまだ早いよリン。あの狼ヤローの気配、まだ消えてねえぜ……!」

「え……!?」


 レスに言われて振り向くと、雪の中からツクモロズの核晶コアが浮かび上がっていた。

 それは周囲に積もった雪を次々と取り込んでいき、徐々に巨大化していく。

 ホノカは咄嗟にガスで導火線を引き、特大の爆発をあびせるが雪の巨大化は止まらない。


「キシャァァァオオォォォッッ!!」


 空気ごと震わせるような甲高い咆哮をあげる巨体。

 それはまるで、二本足で立ったキャリーフレームサイズの巨大な氷の狼。

 狼男のような前傾姿勢で鋭い氷の爪を光らせた巨大ツクモロズが、上からホノカを見下ろしていた。


「ホノカさん……どうしますの? 逃げますか?」

「いえ、ここで迎え撃ちます」

「冗談きついぜ、さっきの攻撃だって全っ然きかなかったってのによ!」

「勝つ算段なら……ありますから!」




    ───Eパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ