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第3話「地球から来た女」【Hパート 土産を片手に】

 【7】


「──とまあ、こうして試験を無事にパスしたあたしは、めでたく人間兵器の称号を手にしたのでしたー。っと」

「懐かしいね~。あれからもう2週間も経ったんだ~」


 数分後に宇宙港へと到着するというアナウンスを聞き流しながら、咲良との思い出話を終える華世。


 ツクモロズによるトラブルはあったが、キャリーフレームを単身で倒すというノルマは達成したので、あの試験は無事にパスできた。

 そうして平和のために力を振るう大義名分と、中学生の身には有り余りすぎる給金を手に入れられるようになった華世。

 幼いながらも軍属のため、現在はアーミィとともに様々な事件の解決へと駆り出される身である。


 そもそも、女神像をベースとしたツクモロズと戦う羽目になったのも、第8番コロニー「サマー」で子供の連続誘拐事件が発生しているという報を聞いたのが始まりだった。

 持ち前の鋭い勘で、事件からきな臭さを感じ取った華世は、警戒されにくいアーミィの隊員として先行して現場へ急行。

 調査の結果、案の定ツクモロズによって発生する事件だったというオチである。


「ま、あの頃から比べるとすっかり慣れたものよね。あたしも、あんたも」

「まあね~。あれから毎日というほどでもないけれど、ツクモロズと頻繁に戦ってるからね~」

「試験の時は助かったけど、あれ以来あんた、あんまり役に立ってないけどね」

「うぐぅっ」


 降りる準備のために、前座席の後方から伸びるテーブルを畳み荷物をまとめる華世。

 隣の咲良も、図星を指されてうめき声を上げつつも、食べ終わった菓子の空袋をそそくさとビニール袋にまとめている。


「だってさ~、華世ちゃんと一緒に戦ってると、キャリーフレームでやること少ないんだもん~」

「それに関してはあたしも同意するけどね。でも、試験の時みたいなキャリーフレームのツクモロズが発生しないとも限らないし」

「願っちゃいけないんだろうけど~、出番があることを願いたいね~」


 ポーン、という音とともに宇宙船がクーロンへ到着した旨がアナウンスされる。

 座席上の荷物置き場から大きなカバンを下ろす他の乗客を尻目に、カバンひとつで済む華世たちは船を降りる人の流れが出来上がるまで椅子に座ったままのんびりとしていた。


「ところで~、いくつか質問していいかな?」

「どうぞ?」

「さっきの話に出てた凶悪犯って、どうなったんだっけ?」

「ああ……重症だったけど生きてたから、病院送りの後に再収監だったはずよ」


 華世としては、脱獄するほどの極悪人をわざわざ生かすことに意味があるのかと思っているのだが、始末するチャンスは失ってしまったので後の祭りである。

 まあ、あの名も知らぬ凶悪犯のおかげで割とスムーズに試験を突破できたところもあるため、そこまで悪感情は湧いていないのだが。


「んで、次の質問は?」

「ミュウっていうハムちゃんは~、今どうしてるの?」

「あー……あいつなら、普段はあたしの部屋でハムスターのカゴの中よ」


 華世へと力を分けたことで、なぜかハムスターのような姿へと変わった妖精族の少年・ミュウ。

 彼は心までハムスターになったのか、毎日ヒマワリの種を好んで食べ、回し車で汗を流す小動物ライフを満喫している。

 世話に関してはミイナに一任しているため、華世としては手間がかからなくて良い。


「そっか~。一度その子と喋ってみたかったんだけど」

「こんどうちくる? 手料理をごちそうするわよ?」

「ホント~? やった~楽しみ!」


 年甲斐もなくはしゃぐ咲良とともに、船を降りる人の動きに乗る華世。

 コロニーをまたぐ出動の場合は移動が億劫だな、と思いながら土産の入った袋を握りしめる。

 土産に喜ぶ内宮とミイナの顔を思い浮かべながら、平穏な帰路へと華世は着いたのだった。


──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.3

【クロドーベルⅡ】

全高:8.0メートル

重量:5.9トン


 コロニー・アーミィ傘下の警ら組織コロニー・ポリスが制式採用しているキャリーフレーム。

 10年以上前に地球の日本で採用されていた機体を、改良しつつコロニー仕様へと換えたもの。

 全体的に細目のシルエットだが、肩や脚部などは大型になっている特徴的な体型をしている。

 設計こそ10年以上前の流用だが、駆動系などに用いられているパーツは最新のものとなっているため、性能は無印クロドーベルとは比較にならない。

 また、コロニー内外での運用を想定しているため、無重力下や宇宙空間での運用も可能となっており、背部に空間飛行用のウィングを展開するギミックが存在する。

 とはいえ、軍用キャリーフレームが出るほどではないキャリーフレーム事件へと投入される機体のため、運動性能・火力ともに控えめ。

 標準装備として放電で相手機体を停止させる電磁警棒と、75ミリ弾を放つリボルバーガンを所持している。



 【次回予告】


 遠征任務を終え、日常に帰ってきた華世。

 そんな彼女に、リン・クーロンの誕生日パーティへの誘いが来る。

 コロニー領主の令嬢を祝う場に、悪い笑みを浮かべる華世が乗り込んだ。


 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第4話「パーティ・ブレイク」


 ────少女の勇気が、悪を射抜いた。



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