表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/321

第29話「向かい合う者たち」【Hパート それぞれの衝撃】

 【8】


「それじゃあ、内宮さん達はアーミィによる大反攻作戦のために宇宙に出てきたんですね?」


 ツクモロズ要塞攻略戦が終わり、ホノカたちは内宮らが乗ってきた宇宙駆逐艦〈コリデール〉へと一時的に回収された。

 ボロボロになった機体をある程度まで修復してから、傭兵団の戦艦〈アルテミス〉へと戻る予定だ。

 修理を待つ間、援軍として駆けつけてくれた内宮たちと、ホノカたちは情報を交換していたのだった。


「いよいよ12番コロニー・サンライトを奪還するんやて。これで戦いも一段落すればええんやけど……」

「そう、ですよね……」


 コロニー・サンライトはホノカにとっては生まれ育った修道院のある故郷。

 そこを取り戻すために激しい戦いが起こると想像すれば、決して明るい気分では居られなかった。


「きっと大丈夫よ~。戦いの大部分は宇宙空間で決して、コロニー内の戦闘はほとんど起こらないはずだって。ね、EL(エル)?」

『咲良、それは希望的観測が過ぎますよ。とはいえ、コロニー内での戦闘はV.O.軍側も望まないはずですし、88.7%の確率で咲良の言う通りになるかと』

「そうだといいですけど……そういえば、どうして私達が要塞を攻略しているってわかったんですか?」

「それはな、ホノカ。なんや知らへんけど匿名でメッセージが送られてきたんや」

「匿名……?」


 内宮いわく、差出人不明のそのメッセージはアーミィの機密通信チャンネルを通じて送られてきたという。

 本来であれば関係者だけが使えるその回線を伝って送られてきた情報。

 それが、華世およびホノカたちがツクモロズ要塞の攻略に苦戦しているといったものだった。


「不思議なんが、誰がどこから入ったとかどこで戦闘しているとか細かい情報まで網羅されとったんや。せやからかなりはよう到着することができたんやで?」

「へぇ……」


 謎は深まるばかりであるが、そのメッセージのおかげで助かったのも事実。

 ホノカは謎を解き明かすのはアーミィに任せ、ふと今気づいた違和感にあたりを見回した。


「ホノカ、どしたんや?」

「さっきから華世の姿が見えませんが……」

「華世やったら、一人になりたい言うてたで。なんでもトラウマほじくられてナーバスなんやと」

「トラウマ……そうですか」


 おそらく戦いの中で、再び回転ノコギリを持った敵と遭遇したのだろう。

 無事に救出されたらしいので無事ではあるだろうが、ホノカは彼女が心の傷を引きずらないかが少し心配だった。


「おうおうおう! お前らがクーロンのアーミィ隊員か!」


 やぶから棒に、唐突に話の輪に割り込んできたのはレオンだった。

 彼は今こそ傭兵団の手伝いをしているが、もともと2番コロニー・ウィンターのアーミィ隊員。

 内宮たち9番コロニー・クーロンの隊員に対して、なにか話でもあるのだろうか。

 そう思いながらレオンを流し目で見ていたホノカであったが、キョロキョロとあたりを見回す彼の様子はどこか変だった。


「なんやなんや。あんさんもアーミィ隊員か?」

「そうだ。俺はなく子も驚く無敗の獅子王レオン少尉! クーロンの連中が来たと聞いたんだが……どうやら内宮のヤツは居ねえみたいだな」

「は? 内宮やったら、うちやけど……」


 自分を指さしながらキョトンとする内宮。

 一方のレオンは、驚いた表情のまま内宮の身体を上から下に何度も首ごと眺めていた。


「う、内宮って……」

「な、なんや?」

「内宮千秋って、女だったのかぁぁぁっ!!?」

「はぁぁぁぁぁっ!!?」


 格納庫の中で、レオンと内宮の放った大声が何度も反響し響き渡った。



 ※ ※ ※



「そんな、まさか……」


 格納庫から少し離れた、誰もいない廊下の奥。

 華世はひとりで、ナノハから送られてきたデータを見て驚愕していた。


 その内容は、華世の復讐相手の居場所。

 すなわち、故郷のコロニー・スプリングを滅ぼした殺人兵器を動かした犯人の居所である。


「冗談にしては、たちが悪いわよ……」


 確かに、その情報は喉から手が出るほど求めていた。

 華世が魔法少女として戦いに身を置く最大の目的……それが、あの事件を起こした元凶への復讐だったから。


 からかうための偽情報とも、最初は考えた。

 しかし、送ってきた相手は華世を助けた魔法少女。

 あの場所に姿を表したということは、コアへと向かうための地図も彼女がテルナ先生に渡したのだろう。


 それらが示すのは、情報の信憑性。

 思わぬタイミングで輪郭を帯びてくる、華世の復讐の達成。

 こみ上げてくる抑えられない衝動に、思わず握った拳が震えてくる。


「12番コロニー・サンライト……その中に、あたしの仇が……!!」


 静かに怨敵のいる場所をつぶやきながら、華世は無意識に歯ぎしりをした。


──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.29

【要塞級ツクモロズ】

全高:375メートル

重量:不明


 使われないまま廃棄されていた宇宙要塞が、ジャヴ・エリンが与えたツクモロズ核晶コアによってツクモロズ化した存在。

 もともとは17年前のベスパー事変の折、当時のV.O.軍が敵をおびき寄せる作戦のために作ったハリボテの要塞だった。

 それ故に外観にそれらしい要塞兵器を搭載こそすれ、内部は運用することを考えておらず空っぽ。

 要塞自体は建設途中でベスパー事変が終結したことで放棄され、そのまま巨大なデブリとして金星圏内に放置されていた。

 


【ボルクス】

全高:7.8メートル

重量:8.2トン


 双子座を形成する一等星のひとつ、ポルックスを語源とするリゥシー・スゥ専用機。

 空色のカラーリングをした装甲色と手に持っている武器が槍系のビーム・ランサーであることを除けば対となるカストールと全く同じ形状をしている。

 双子のナンバーズ専用機として設計されただけあり、それぞれのパイロットが対となる機体をガンドローン操作の要領で動かすことができるジェミニ・トレース・システムを搭載している。

 本来このシステムは二人が同じ場所で戦っている際に、片方が気づいてもう片方が気づいていない攻撃が来た際に回避させることを目的としている。

 

【カストール】

全高:7.8メートル

重量:8.2トン


 双子座を形成する一等星のひとつ、カストルを語源とするリゥシー・リウ専用機。

 橙色のカラーリングをした装甲色と手に持っている武器が二本の実体剣であることを除けば対となるボルクスと全く同じ形状をしている。



【マジカル・ナノハ】

挿絵(By みてみん)

身長:1.52メートル

体重:44.1キログラム


 カヨ、ホノカ、モモ、ユイに続く5人目の魔法少女。

 司る魔法の特性は「電撃」であり、その魔力を動力とした対キャリーフレームレールガンを武器としている。

 レールガンは自身の身長を超える巨大さであり、本来は地面に固定して使用するものである。

 しかし、魔法少女に変身することで得られる怪力によって、手持ちの重火器として運用されている。

 獣の耳のような飾りの付いた、緑色の特徴的なフードを被っている。

 履いているブーツも魔法の電気を動力源として脚力を強化できる優れもの。

 これによって、ジャンプすることで高所へ登ったり、素早く移動したりできる。

 

 【次回予告】

 ついに巡礼の終着点、コロニー・オータムへと到着する華世たち。

 けれども華世、ホノカ、リンの三人は隣のコロニー・サンライトが近いことで落ち着きを失う。

 レスの導きでサンライトへ向かうことにした一行は、その地でそれぞれの運命と対峙することとなった。


 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第30話「運命の地、サンライト」


 ────若者たちに課せられた試練は、あまりにも重い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ