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第29話「向かい合う者たち」【Cパート 奇襲】

 【3】


 陣形を切り裂くように放たれた巨大ビーム。

 間一髪で回避した部隊の面々であったが、直後に合流を阻むかのように激しい対空砲火が飛び始める。

 これによって突撃隊の全員が光弾の飛び交う状態を脱するために、無理やり要塞に張り付くことを余儀なくされた。

 要塞表面のハッチのような空間に飛び込んだ〈ニルファ・リンネ〉の中で、一息つくウィル。

 そして数秒の後、味方機から通信が入った。


『こちらラドクリフ! 各機、現状報告!』

『ホノカ機、要塞内に突入しました! えっと……レーダーによると隊長と近い場所です!』

『こちらレオン機、近くにいるのは……〈ニルファ・リンネ〉か』

『えーん、こちらクリス機……周りに誰もいませーん! 一人ぼっちですー!!』

「こちらウィル機、レオンさんと合流すれば良さそうですね」


 散り散りにはなったものの、クリス以外はペアを組める形で味方機の近くに到着したようだ。

 外は激しい対空砲火の嵐ゆえ、外を通って全員合流……という手は使えそうもない。


『全員無事なら話が早い。これからそれぞれのチームで要塞内を探索。目標であるコアの破壊に務めろ!』

『ちょっと、私一人なんですけどー! ウィルきゅんと一緒に居たーい!』

『屋内で機敏に動けるその機体なら、逃げるくらいはできるだろ。接敵しても戦闘を避けて味方機との合流を目指せ。敵に聞かれる恐れがあるから、目標達成まで遠距離通信は控えろよ、以上!』

『はーい……!』


 不服そうなクリスの声で閉じられる回線。

 レーダーのレオン機を表す光点がこちらに向けて動き出したのを見て、要塞内部へと目を向ける。

 無機質なタイル張りの白い通路。

 その先には、キャリーフレームが激しく動いても問題なさそうな広大な空間。

 ツクモロズによって人型に変異したとはいえ、要塞としては妙な構造に思わず華世は首を傾げた。


「華世、どうしたんだい?」

「このツクモロズ要塞……元となった建造物は何なのかしら。何かしらの宇宙施設があったとしたら、艦長が攻撃を受けるまでなんの注意も払ってなかったのはおかしいわ」

「確かに……それに、要塞にしては綺麗すぎるというか、何だろう。違和感があるよね」


 綺麗すぎる、というウィルの言葉で少し腑に落ちる華世。

 ここには、あまりにも中に何もなさすぎるのだ。

 通常であれば要塞を動かす人の為の設備、例えば人間用の通用口や空調のためのダクトなどがあるはずだ。

 けれどもこの要塞内にはそれらしいものは一切なく、言うなれば利用することが考えられていないハコ。

 外面だけを作って中身のない空箱のような印象を受けた。


「中身のないハコ……確かに。華世の言葉を聞くと、ここって最低限の構造を維持するための通路と柱だけで構成されてるって感じるね」

『なんでそうかまではわからんがな。ウィルの坊っちゃんよ』

「レオンさん!」


 無機質な廊下のわかれ道から姿を表すレオンの〈レオベロス〉。

 胸にライオンの頭にも見える意匠をもつキャリーフレームが、手招きをしながら先導するように〈ニルファ・リンネ〉へと背を見せる。


 レオン機と共に、巨大な空洞を通り抜け別の通路へと入るウィル機。

 その通路の先にも、先程のような縦にも横にも広いだけの空間が広がっていた。


『不気味だな……要塞の中って感じが全然しないぜ』

「華世……何かピンときたりはしてないかい?」

「あたし? 別に……ただ突入地点から考えると、目的のコアを目指すには上に行けばいいと思うわ」

『そりゃあ、どうしてだ? 魔法少女の勘ってやつか?』

「これまでのツクモロズって、キャリーフレーム以外は人間で言う心臓の位置にコアがあったから。あたしたちが突入したのが右脚の付け根あたりだから上じゃないかって」

「回避に夢中でどこから入ったかなんて覚えてなかったよ」

『同じく。とにかく上を目指すか……うん!? かわせっ!』


 上方を向いたレオン機の声に従い、咄嗟に回避運動をとるウィル。

 直後に元いた場所を通り過ぎるビームの弾丸。

 同時に、レーダーに敵機体を表す光点が3つ灯った。


『ふふっ、流石はウィリアムね。不意打ちくらいじゃ落ちてくれないわよねぇ……!』

「フルーレ・フルーラか!?」

『私だけじゃなくてよ? 行きなさい、双子ちゃんたち!』


 フルーラが放った掛け声の直後、華世の中で耳鳴りが生じる。

 同時に、左右から挟み撃ちをするように2機のキャリーフレームが飛びかかってきた。

 片方は空色で実体の槍を握っており、もう片方は橙色で短剣状の武器を振りかぶる。

 不意打ちに近い攻撃に、ウィル機は変形を交えた不規則な回避運動で離脱したが、レオン機は回避が遅れた。

 獅子のタテガミを模したユニットのいくつかが先端を刈り取られ、反撃にと放ったビーム・セイバーの斬撃は素早い離脱に空を切らされる。


『お見事、〈ボルクス〉と〈カストール〉の攻撃をかわせるなんて。それでこそウィリアムね……!』

「ウィル、この耳鳴り……どうやらあの2機に乗ってるのはテルナ先生の妹たちみたいよ……!」

「ということは……!」


 体勢を立て直しつつビーム・ライフルを威嚇気味に放つウィルの〈ニルファ・リンネ〉。

 けれどその攻撃を巧みな左右運動で回避しながら、フルーラの〈ニルヴァーナ〉が戦闘機形態で突っ込んでくる。

 その攻撃を支援するように、素早い動きでヒット・アンド・アウェイの容量で〈ボルクス〉〈カストール〉が斬撃と刺突を打ち込む。

 三位一体の動きを体現するように攻め立てる敵機体に、ウィルとレオンはすでに劣勢だった。





    ───Dパートへ続く

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