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第27話「想いの架け橋」【Hパート 紅に染まる森】

 【9】


 ももが変貌した巨大な蛇が、鎌首をもたげ大きな口を開く。

 その口内に浮かび上がった桃色に輝く魔法陣へと、光が収束。

 結衣は危険を感じ、更に高度を上げ口の向いている方向から離脱した。


 直後、極太の光線が緑地を貫く。

 光の帯が直撃した場所からは赤い球体のような爆発が起こり、そこまでの通過点は木々が黒焦げになっていた。


ももちゃん……またなっちゃったの……?」


 頬に冷や汗を垂らしながら、変貌した友人の所業に唖然とする結衣。

 以前にも結衣は二度、ももが大蛇になったところを見ていた。

 一度目は初めて出会った時、二度目は望月という少女の言葉に心を痛めていた時。

 彼女が変貌する直前の様子は、明らかに二度目と同じ。

 傷ついた心が魔法少女を怪物へと掻き立てている……と考えたところで、結衣の視線は半壊し燃えている人がいそうな小屋を捉えた。


「……ねえお姉さん。ヘレシーは、咲良お姉さんと一緒にあの子を抑えるよ」

「抑えるって……キャリーフレームで?」

「うん。でもあの子を助けたいなら、あの小屋に急いだほうがいい」

「どうして?」

「なんとなく。オンナノカンってやつ?」


 とぼけた顔でそう言い放つ腕の中のヘレシーが、結衣を振りほどいて飛び降りる。

 一瞬「あっ!」と言いかけたが、彼女は器用に木の枝へと着地。

 そのまま階段を降りるように木々を渡り継ぎつつ咲良のもとへ向かうヘレシーの姿に、心配は不要だと理解した。

 それよりも気になるのは、ビームの着弾点近くにある崩れかけた小屋。

 ヘレシーから言われなくても、誰かがいるなら助けないと、と結衣の中の正義感が彼女を突き動かしていた。


 程なくして、コロニーの中央シャフトから咲良の機体〈エルフィスサルファ〉が森へと着地する。

 この場は咲良たちに任せ、結衣は光の翼を羽ばたかせて小屋へと向かった。



 ※ ※ ※



『起動確認、及びヘレシーとFCSリンク成功』

「準備オッケーだよ、咲良お姉さん!」

「……よし、〈エルフィスサルファ〉飛翔!」


 咲良が力強く踏み込んだペダルに呼応して、勢いよく飛び立つ〈エルフィスサルファ〉。

 キャリーフレームの三倍以上の体躯を持つ白蛇の眼前へと、咲良たちは躍り出た。

 地上にはももからアンドロイドたちを離すように囮としてデッカー警部補とビットが残っている。

 二人には同乗を求めたのだが、あの軍勢が対象を失い街へ向かったら大事おおごとだと、彼はそう言って囮を買って出た。

 彼らを早く助けるためにも、大蛇へと変貌したももをなんとかしなければ。

 しかし……。


「ヘレシー、どうしてももちゃんはあんな姿になっちゃったの? ツクモロズのあなただったら、なにかわかる?」

「うん。あれはツクモロズが許容異常の強いストレス……それも精神面への深い傷が抉られるような思いをすることで起こる神獣化と呼ばれる現象だよ!」

「神獣化……? あの子、私達が知らないところで傷ついていたってこと?」

「おそらくね。数日前から、電波に乗せられて感情の渦のようなものが絶えず発信されてたの。アンドロイドたちを狂わせた悪意の感情が、偶然あの子を傷つけたんだと思う」

『咲良、正面から高熱源反応。来ます……!』

「これ以上コロニーを攻撃させられない! ビーム・フィールド展開!」


 白き大蛇の開いた口より放たれる、強大なビーム攻撃。

 翅のような翼を閉じてその表面にエネルギーを集中。

 展開したビームの障壁が、ビーム攻撃を受け止める。


「ぐぅぅぅっ……!!」


 ビームを正面から受け止め、激しく振動するコックピット内。

 直径がキャリーフレームに匹敵する光線を相殺することはできず、防ぎきれなかったビームがあふれるように周囲へと拡散する。

 上空へ散った分は射程圏外へと到達し消滅したが、問題は地上に落ちたビーム郡。

 緑地に突き刺さった光のシャワーは次々と爆発を起こし、森を赤い炎で染め上げていく。


『咲良、このままでは危険です。反撃を』

「ダメよEL(エル)……あれはももちゃんなのよ。傷つけることなく、なんとかできないかな……?」

「方法は無いことはないよ。心の傷を癒やすことができれば、元に戻る可能性はあるから」

「ヘレシー、それ本当? でもももちゃんの心の傷なんて、私には……」

「大丈夫。結衣お姉さんがなんとかしてくれるよ、きっと」


 咲良の側で楽観的な表情を浮かべるヘレシー。

 引くも押すもできない状態では、彼女の論拠のない言葉だけが頼りだった。




    ───Iパートへ続く

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