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第24話「愛が為に」【Fパート 内外の戦い】

 【6】


 乱れ飛ぶ追尾レーザーの嵐。

 ウィルはその隙間を戦闘機形態の〈ニルファ・リンネ〉ですり抜けつつ、ミサイルを発射して反撃をする。


「反応速度が違う……! これが最新機なのか!」

『キャハハッ! 良いわよウィリアム、私はこういうのを望んでいたの!』


 ミサイル群を撃ち落とし、一気に突っ込んできた〈ニルヴァーナ〉。

 人型形態に変形しメタル・クローを振りかぶる敵機へと、ウィルも〈ニルファ・リンネ〉を変形させ爪で攻撃を受け止める。


「フルーレ・フルーラ、なぜ俺に執着をする!」

『知れたこと! 私たちは同じ時に生まれ、同じ訓練を受け、同じ場所で生きてきた! それなのにあなたは私の上を常に行っていた!』

「俺の能力を妬んでいたのか!?」

『負けていても私は、あなたと共に宇宙そらを飛べるなら良かった! だけどウィリアム、あなたは私の前から姿を消した!』

「フルーレ……君は!?」


 爪同士の鍔迫り合いから離れ、チェイス・レーザーを放ちながら後退。

 高速機動で光線を回避する〈ニルヴァーナ〉に対し、射撃戦は不毛と判断。

 戦闘機形態へと変形し、付近の小惑星帯へと逃げ込むウィル。


 浮かぶ無数の岩塊、その隙間を上下左右へと機体を揺らして疾走する。

 追うフルーレの〈ニルヴァーナ〉も負けじと飛び込み、動きをトレースするかの様にピッタリと後方をキープ。


『迷路に逃げ込めば勝てると思った? おバカさんなんだから! ノーズ・ブラスター、シュートぉ!』


 コンソールから響く高エネルギー反応への警告。

 後方カメラに映る敵機の先端。

 機首の砲身に光が収縮していく。


「くっ!」


 咄嗟に変形しつつのベクトル変更。

 直後に走るビームの奔流。

 巻き込まれた岩石が砕け散り、周囲へと拡散する。

 散弾のように浴びせられる小惑星の破片へと、ウィルはミサイルを放った。


 弾頭へと突き刺さる岩片。

 起こる爆発、その衝撃で〈ニルファ・リンネ〉へと襲いかかる破片たちは勢いを外側へと押さえつけられる。

 危機を脱したウィルへと襲い来る、鋭い一閃。

 迫る光沢を放つ爪へと爪を合わせ、宇宙に火花の光が散った。


『キャハハハっ! 楽しいね、楽しいよねぇっ! ウィリアムぅ!』

「俺は……戦いを楽しんでるつもりはないっ!!」



 ※ ※ ※



 斬機刀と槍の刃《穂》が激しく打ち合い、廊下に火花が散る。

 相手の側面から投げナイフが飛んで来るが、義手のVフィールドを発動してキャッチ。

 投げ返すようにベクトルを変更して発射するも、素早いナイフ捌きで弾かれる。


「葉月、下がれっ!」


 テルナの声に後へと飛び退き、同時に彼女が握る機関銃が火を吹く。

 浴びせられる銃弾の嵐であったが、素早く回転させた槍のつかがそのすべてを受け止め、打ち返した。


「……ナンバーズってのは、あんな化け物揃いなわけ? 先生?」

「恐らく更に強化されているのだろう。足止めくらいはと思ったが、これでは埒が明かないな……よし」


 そう言って懐から筒状の物体を取り出したテルナは、ピンを抜いて投擲とうてき

 カン、と床で跳ねる音とともに爆音と閃光が廊下を包み込む。

 その隙に、華世とテルナは双子とは反対方向に駆け出した。


「やるわね、先生」

「潜入工作員検定2級は伊達じゃないぞ」

「検定は置いといて……でも良かったの? 先生はあの双子のためにここに潜り込んでたんでしょ?」

「ああ……」


 テルナ先生、もといナイン・ガエテルネンは元々この金星宙域に攫われたあの姉妹を連れ戻すためにやってきた。

 そして、とある情報筋からこの基地に二人が居ることを突き止めたテルナは、数日前から密かに潜り込んでいたのだという。


「二人のことは大切だが、内宮千秋から頼まれた君たち少女らの護衛も大切だからな。拷問を受けていると聞けば、優先順位を変えることも必要だろう」

「おかげで助かったけど……どうやって逃げるの? キーが放置されたキャリーフレームなんて、そうそうないでしょ」

「いや、欠陥機として放置されているのが一機ある。奴らとしても持て余していたようで、起動キーをくすねるのは簡単だった」

「相手の適当さに感謝ね……待って」


 廊下を曲がろうとしたところで、一度足を止める。

 義眼の音声センサーが、複数人の兵士の移動を前後から検知。

 このままでは挟まれてしまうという状況で、そばにあった扉の中へと華世たちは飛び込んだ。

 扉を締め、ドタドタと大勢が駆ける音を壁越しに聞く。


「いたか?」

「いや。反対側に行ったのかもしれん」

「あの双子は?」

「御曹司の所らしい。肝心なときに役に立たない連中だ」


 会話の後に遠のいていく足音に、ふぅと胸を撫で下ろす。

 出るタイミングをはかろうとして部屋の中を見渡した華世。

 誰かの個室のような室内の机、その上に置かれた写真に目を惹かれた。


「これ……もしかしてホノカ?」


 写真に写っていたのは雪景色の中で撮られた集合写真。

 教会のような建物の前で、一人の大人のシスターを中心に子供が20人ほど。

 その中のひとりの顔が、ホノカそっくり……いや、本人だろう。

 ぎこちない笑顔はまさしく、見慣れたホノカの顔だった。


「確か……クレイアは修道院へと仕送りをしていたと言ったか」

「じゃあここに写っているのが、あいつの家と家族ってことね……でも」


 どうしてレッド・ジャケットの基地、その個室に修道院の写真があるのか。

 その答えは、扉の鍵が解錠される音と共に姿を表した。





    ───Gパートへ続く

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