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第20話「ふたつの再会」【Hパート ふたりの奮戦】

 【8】


「美月さん、私は……やってみます! だめかもしれないけど、諦めないでやってみる! あなたを助けるために! ドリーム・チェェェンジッッ!!」


 変身の光のまゆを飛び出し、輝く翼を羽ばたかせて美月を受け止める結衣。

 今は戦うことは二の次で、とにかく彼女を安全な場所へ。

 その一心で空を駆けていた。恐怖にあらがっていた。


「結衣ちゃん、その姿……」

「怖いけど、怖いままじゃ駄目だって思って。とにかく美月さんを、安全な場所まで運びます!」


 初めて会ったときにももがしてくれたように、ひときわ高いビルの屋上へと降り立つ結衣。

 美月をそこに降ろして、すぐに後ろを振り返る。


「私は華世ちゃんのようにうまく戦えないし、勇気もない。でも、少しでも友達の力になる……自分のできることを、諦めずに精一杯やってみます!」

「頑張って、結衣ちゃん! 私、ここから応援してる! ランニングをやりきったあなたのガッツは、あなたの持ってる良いところだから!」

「はい!」


 ビルの屋上から飛び立つ結衣。

 すぐさま空中で撃ち合うもものもとへと合流しようと、天使の翼を輝かせる。


「き、来たっ……!」


 正面から来る〈クアットロ〉。

 けれども結衣は戦わず、向かってくるその巨体の脇をすり抜けるようにして交錯。

 無事にもものもとへと合流した。


ももちゃん!」

「結衣先輩!」


 合流したももと背中合わせの格好で、斧のような形状をしたステッキを構え直す結衣。

 さきほどすれ違った〈クアットロ〉が再び襲いかかってくるところへ、結衣は思いっきり叫んだ。


「マジカル・ミサァァイル!!」


 ステッキの側面から放たれる無数の弾頭。

 その一つ一つが敵機の装甲で炸裂。

 決して効いているわけではないが、次々と叩き込まれるその衝撃に敵機の動きがわずかに鈍る。

 その隙をついて前進するもも


「マジカル・セイヴァー!」


 光の刃で切り裂かれ、空中でバラバラになりながら落下する〈クアットロ〉。

 結衣は急いでその破片のもとへ急ぎ、ひときわ大きいものをステッキで打ち放った。


「えーいっ! マジカル・ホームランッ!」


 弾丸となった巨大な残骸が、別の〈クアットロ〉の胴体へとぶつかる。

 よろめいたそのキャリーフレームを、またももが光の剣で薙ぎ払った。



 ※ ※ ※



『正面に敵3。地上1に空中2、距離30です!』

「地上が近いからビーム射撃は控えて……ビーム・クロー展開!」


 咲良がレバーをひねると、〈アーク・ジエル〉右肩から伸びるユニット、その先端が展開し爪状のビーム刃を形成した。

 そのまま速度を上げて突進。すれ違いざまに〈クアットロ〉の胴体へとビーム・クローを突き刺す。

 挟み切るようにして核晶コアごとコックピットを溶断しつつ上昇。

 空中からマシンガンの銃口を向ける2機の〈クアットロ〉を正面に見据える。


『敵の射撃、来ます!』

「ビーム・フィールド展開! そのまま突撃よ!」


 操作に呼応し、〈アーク・ジエル〉の正面に形成される光の膜。

 放たれた弾丸はビームの障壁によって蒸発し、逆に弾丸となった〈アーク・ジエル〉のフィールドが〈クアットロ〉を飲み込んだ。


『沈黙を確認! ですが、敵が6機が集結中、囲まれます!』

「こっちに来すぎじゃない!?」

「大きいから目立つんだろうね。でも、いっぺんにやっつけちゃえば問題ないない♪」

「いっぺんにって……マルチロック?」


 コンソールに表示された武器をセレクトし、周囲を移すモニターに目を移す。

 次々とターゲット・カーソルが四方から接近する敵を捉え、ピピピとロックオン完了の音を鳴らした。


『ターゲット、ロック!』

「メドゥーサ・ビーム・スラスター、一斉発射!!」


 巨大な〈アーク・ジエル〉の高速飛行を支えていた幾つものビーム・スラスター。

 それらが神話の怪物メドゥーサの髪の蛇が如く蛇腹の管を伸ばし、その身を砲身へと変える。

 ロックオンしたターゲットへと同時に放たれる光線。

 接近しようとしていた全ての〈クアットロ〉を捉えたビームは、敵意のある巨体を瞬時に薙ぎ払い打ち倒した。


「残存兵力は!」

『レーダーの反応ゼロ』

「地上の被害!」

『墜落した敵機、すべて道路上に落下。確認できる死傷者……ありません。お見事です』

「……よかったぁ~~!!」


 一時は諦めかけた戦いの勝利。

 自分を信じてくれる二人に見守られながら、咲良は生き残った充足感に四肢をうんと伸ばして感動に震えていた。




    ───Iパートへ続く


 

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