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第2話「誕生、鉄腕魔法少女」【Gパート 大元帥】

 【7】


「これはこれは、アーダルベルト・キルンベルガー大元帥閣下ではありませんか。このような汚らしい尋問室においでとは、どういった気まぐれでありましょうか?」

「ウルク・ラーゼ大佐、気まぐれなどではない。視察に赴いたところで亡き妹の忘れ形見が逮捕されたと聞けば、話の一つでも聞かざるをえんだろう」

「亡き妹の忘れ形見? まさか、この娘が?」


 軽い驚きを見せるウルク・ラーゼをよそに、華世のもとへと歩み寄るアーダルベルト。

 アーダルベルト・キルンベルガー大元帥は、金星コロニー・アーミィの最高階級者にして、華世の伯父である。

 亡き華世の母はドイツ系の金髪美人であったが、外見にその血を色濃く受け継いだ華世に日本的な名前をつけた理由は、日本人である華世の父とその故郷を尊敬したのが理由だと聞いている。


 華世はそんな母の兄であるアーダルベルトを前に、机に肘を置いたまま、ひとつため息をついた。


「……久しぶりね、伯父さん。前に会ったのは、半年ほど前だったかしら?」

「普段であれば大元帥と呼べ、と躾けるところであるが、この場では伯父として問おう。なぜ市街地で発砲を行ったのか、そしてその魔法少女モノのような衣装の説明を、聞かせてもらえぬか?」

「ええ。信じられないかもしれないでしょうけど」


 華世は裏路地で起こった出来事を、包み隠さずに説明した。


 怪人を連れた老紳士。

 襲われていた少年から受け取った力で行った変身。

 そして戦いの過程と逮捕されるまでの流れ……その全てを。


 話の最中、内宮やウルク・ラーゼなどは唖然としたり顔を歪めたり、はたまた何度か苦笑したりしていた。

 しかし、アーダルベルト大元帥だけは何度も頷きながら、最後まで真剣に華世の話を聞いていた。


「……以上よ。これが、あたしが発砲に至った経緯いきさつ

「大元帥閣下、よもやこのような子供の世迷い言、信じるわけではありませんな?」

「ウルク・ラーゼ大佐、たとえ信じがたい出来事でも……いや、信じがたい出来事であればこそ多角的視野をもって公正に判断する必要がある。話に出ていた小動物はどうしている?」

「はっ。証拠のひとつとして隣室にて保管していますが」

「連れてきたまえ。それと、現場を映していた防犯カメラの映像データと……ファンタジックなステッキ状のような物もだ」

「はっ……ただちに」


 アーミィの最高階級者たる大元帥に命令され、早足で尋問室を出ていくウルク・ラーゼ。

 椅子に座ったまま居心地悪そうに縮こまっていた内宮の肩へと、アーダルベルトが手を優しく置いた。


「内宮千秋少尉、家で不自由は無いかね?」

「え、ええ……なんも困ってません。閣下が与えてくれはったメイドロボと、華世お嬢はんのおかげで楽させてもろうてます」

「それはよかった。私が多忙でなければ、自ら面倒を見るのが道理なのはわかっているのだが……君に華世を任せきりですまないな」

「そないなことありません! うちみたいなのに任せてくれはって、えらい光栄ですわ」


 階級差と大人の忖度が入り交じるふたりの会話。

 双方の意見に嘘偽りが無いのは主題となっている華世にとってわかっているのであるが、どうも内宮のこのかしこまり方には馴染めない。

 会話が途切れたタイミングで、ウルク・ラーゼが虫かごのような物とメモリースティックを持って再び尋問室に入ってきた。


「大元帥閣下。これがその小動物の入ったカゴと、映像データ。それから玩具でございます」

「よろしい。そこのモニターで映像を流したまえ。その間にこの者から話を聞こう」

了解ラーサ


 金星式の了承言葉を発し、壁際に置かれたコンピューターへと向かい始めるウルク・ラーゼ。

 その間にアーダルベルトは虫かごの蓋を開け、中にはいっていた青毛のハムスター・ミュウを解放した。

 華世はミュウを、鋭い目つきでギロリと睨みつける。


「ねえミュウ。そろそろ、この格好もこっ恥ずかしくなってきたのよね。戻り方教えなさいよ」

「わ、わかったミュ……」


「喋った!?」


 テンプレートをなぞるかの様な百点満点の反応をする内宮を無視し、華世はミュウが話す変身の解除方法に耳を傾ける。

 その方法はステッキを持って、呪文をひとつ唱えること。


「……これで変身解除して、裸になるなんてオチはないわよね?」

「大丈夫だミュ。もとの服装に戻るはずだミュよ」

「そう。じゃあ……“ドリーム・エンド”!」


 ミュウから聞いた呪文を唱えると同時に、変身したときと同じように華世の身体が光に包まれた。

 着ていたフリフリの衣装が輝きながら消えていき、代わりに元着ていた学生服が彼女の身を包んでいく。

 ついでのように、むき出しになっていた義手の右腕にも人工皮膚が戻っていき、パッと見で義手とはわからない外見となった。

 しかし、ブッタギリーと呼ばれていた怪人の初撃を受けたときの、人工皮膚の傷はそのまま痛々しく残っている。


「よし……と。これで、少しは信じてくれる気になった?」

「そらぁ……こないなモン見せられたらなぁ……」



    ───Hパートへ続く

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